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April 05, 2006

GDC2006のまとめ

GDC2006の1日め、2日めについては書いたのだが、3日めについては書いてなかった。時間がなかったというほかに、実はあんまり面白いのがなかったので意欲がわかなかったという事情もあるのだが、初めて参加したことでもあるし、3日間全体を通しての感想みたいなものも記録しておいたほうが自分にとっていいだろうというわけで、書いてみる。

実は、ああいう業界コンベンションにくっついたカンファレンスは初めてだったのだが、何しろ規模が大きいのにはびっくりした。東京ゲームショウの比じゃない、という感じ。コンベンションのほうはほぼ同程度の規模、という印象だったがどうだろう。差が大きかったのはカンファレンスのほうだ。東京のほうにもちょっとしたセミナーみたいなのがくっついたりしてはいるわけだが、GDCのほうは、こちらが主、という感じ。この差は何だろう。アメリカのゲーム業界の人のほう学んだり議論したりすることに対して熱心、ということだろうか。うろ覚えだが、アメリカのゲーム業界はもともとサイエンスとの関連が強く、日本のほうはおもちゃとかエンタテインメント系とかとの関係が強い、といった話を聞いたことがある。そのへんが影響しているのかもしれない。

3日めはセミナーよりもコンベンションのほうを回る時間が多かったのだが、東京ゲームショウなんかと比べると、ミドルウェア関連の出展が目立っていた気がする。業界の構成がよくわからないが、実際に最終製品を作っている企業は日本に比べて少なくて、ミドルウェアの企業が占める割合が比較的高いのかもしれない。このことは、開発の効率化につながるとは思うのだが、必ずしもそれでいいのかどうかはわからない。一般論だが、ゲームを動かす重要な部分を他社に依存してしまうと自社の競争力強化にはつながらないかもしれない。そもそもあちらのゲームって、日本のゲームと比べてバリエーションに乏しい(みんなFPSとかで戦うのばっかり)ような気がするのだが、そういう市場構造がミドルウェアへの依存率の高さの理由の1つになっているかもしれないし。

コンベンション会場のはじっこのほうは、けっこうなスペースを使って、リクルート用のブースが並んでいた。このあたりも日本とはずいぶんちがう。有力どころも含めたいろんな会社が並んでいて、就職希望者はそこに並んで自分をアピールしたり、話を聞いたり。こういうやり方は、「日本的な風土」に合うのかどうかわからないが、けっこういいのではないか、と思う。何より学生さんたちにとって、1か所で何社も回れるのがいいではないか。今の東京ゲームショウの開催時期(9月)だと、大学生の就職活動の時期とは若干ずれ気味となるけど。就職活動向けとすると、東京国際アニメフェア(3月)ぐらいのほうが時期的にはいいかな。7月あたり、なんてのもいいかも。

ゲームそのものについていえば、アメリカよりも日本のほうがクリエイティブだと思う。「塊魂」とか「Nintendogs」とか「大人のDSトレーニング」とか、新しいアイデアのゲームがどんどん出てくる。オンラインゲームについてはアメリカのほうが普及しているかもしれないが、前にも書いたとおり、ビジネスモデル面まで含めると、日本を含めたアジア圏のほうがはるかに進んでいる。いや、そりゃWill Wrightの「Spore」とかは確かに革新的だよ。それ以外にもアメリカはいくつも新しいゲームのジャンルを生み出してきたし。でも全体としてみれば、アメリカ市場は「撃ちまくり、倒しまくり」一辺倒、といっても過言ではない。オンラインゲームでもまだ月額課金モデルへの依存が強いし。

何がいいたいかというと、ゲーム業界のイベントとして、日本の東京ゲームショウあたりの世界的なプレゼンスがもっと高くていいのではないか、ということだ。別にGDCよりたくさんの人が、となるかどうか別として、少なくとも同程度に注目されていいように思う。もちろん東京ゲームショウは今でもものすごく大きなイベントだし、海外からの人もたくさん来ているとは思う。ゲームそのものについても、今回のGDCで「ワンダと巨像」が4つの賞を獲得するなど、高い評価を受けている。ただ、業界外の部外者の感想ではあるが、日本での動向について、もっと世界の注目が集まってもいいように思うのだ。似たようなことを前にも書いたが、きっとこれは日本からの情報発信が少ないせいだと思う。この点に関しては、多少なりと自分にもできることがあるかもしれないが、ゲーム業界の人たち自身のほうがはるかに適任のはず。がんばってほしいなぁ。

最後におまけ。4月8日(土)午後、IGDA JapanがGDC2006の報告会を開催する。私よりもっと詳しい方々のお話が聞けるはず。私も少しだけ話をすることになっているが、このサイトに書いたことが中心になると思う。

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