そこんとこ大事だから明記しといてね
前の記事で書き忘れたのでひとことだけ追加。
自民・公明両党の教育基本法改正に関する検討会が「愛国心」に関する条項の案をまとめたことに関連して、同検討会の大島理森座長が記者団に対して「『国』という概念に(政府などの)統治機構は含まないという共通理解がある」と説明した由。
なるほど。よくわかった。そこはきわめて大事なポイントだ。私はこの国土とそこに住む人々を愛することにおいて(他に誰かにありがたくも教えていただかなくても)人後に落ちないつもりだが、統治機構やその人々たちを愛せよといわれたら、「いやだ」ときっぱりお断りしたい。別に政府の人たちが必ずしもきらいというわけではないが、「愛せよ」なんて強制されるのはまっぴらごめんだし、子供たちにそう教え込まれるのもお断りだ。政府に国民を選ぶ権利はないが、私たちには政府を選ぶ権利がある。
でもこういうのは、書いとかないとすぐ忘れちゃう。きちんと残しておかないと。というわけで、法案を作成する際には、次のようなくだりを条文に盛り込んでいただきたい。検討会が合意した表現に付け加えると、こんな感じ。
伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。ただし、ここでいう「国」には国の統治機構およびその構成員は含まない。
ことばというのは、一度できあがると、それ自体が一人歩きする。条文に盛り込まれなければ、忘れられても文句はいえない。反対派の皆さんも、この点が確認されれば、折り合う余地はけっこうあると思うのだがどうだろう?法案作成の際は、ぜひお忘れなく。
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Comments
しかし政府の統治機構が含まれないとなると、伝統的な日本人の「お上」意識にはあまりなじまないかと。「お上」側からすればわざわざ愛国心を強調するには結局「お上」への何かしら忠義を期待しないと意味がないわけで。一般国民の多くは政府と国は一心同体と思ってますし。分ける意味があるんでしょうか?(笑)
Posted by: すなふきん | April 16, 2006 11:46 AM
すなふきんさん、コメントありがとうございます。
とりあえずおことわりですが、私ではなく、大島座長がいわれたことです。わざわざいうからには、分ける意味があるということですよね。つまり、そこが対立のポイントだということです。
ここから先は私の考えですが、もし日本が民主主義の国であるならば(少なくとも政府はそう主張するはずです)、政府がこの国を統治する権限は国民の信認に基づくわけで、それがなくなれば、その権限は失われます。憲法にもそう書いてありましたよね?
極端な話をすれば、国内で2つの「政府」が対立する内戦状態だってありうるわけですが、そこまでいかなくても、国民が政府を選ぶというのは、単に政権を選ぶというレベルの話ではなくて、民主主義の根幹にかかる重要な精神です。統治機構は国民に「愛される」べく努力する義務を負うのは当然ですが、「愛してくれ」と要求するのはスジちがいです。それがきちんと具体的な法律にあらわれているべきだというのは、さして暴論だとは思いません。
Posted by: 山口 浩 | April 16, 2006 12:04 PM
>つまり、そこが対立のポイントだということです。
公明党が異議を唱えたことによる妥協の産物という感じが強いんですよね。結果的にはこれはこれで日本的かつ玉虫色の結論でめでたしめでたしということでしょうけど。しかしこれでは実質的には何も変わっていないという話になります。だって「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度」なんてのは、右派から散々叩かれてきた戦後憲法の精神と大して違わないし、何で今さら・・・・という感じがしたまでです。踏み込むなら思い切って踏み込んだ方が、政権選択のメリハリがついて面白いとも思うんですけど。日本人多数派がそうした国家観を選ぶのなら、それはそれで一つの選択ですから。誤解を防ぐ為に言っておきますが、私個人の思想信条とはまた別問題です。
Posted by: すなふきん | April 16, 2006 02:59 PM
すなふきんさん
「大して違わない」のは妥協の産物ですが、そうまでして変えたい理由があるわけですよね。口頭で付け足したニュアンスはあとで無視できるので、妥協のためによく使われます。
推進したいグループの方々にとって上の文章の中で重要なのは「伝統と文化を尊重し、…我が国…を愛する」だけです。よって、その「国」の定義に限定をはめておくのは、慎重に考えたい人にとっては重要なポイントでは?
Posted by: 山口 浩 | April 16, 2006 06:50 PM