買うのと買われるのとどっちが恥ずかしいんだろうかね
「太田氏のキャバ嬢過去に厳しい声…松戸市市長『恥ずかしい』」なんていう記事を見かけた。「松戸市の川井敏久市長(63)も自民党の斎藤健氏の応援演説の中で『キャバクラ嬢が選挙に出て戦っている。私は松戸市長として恥ずかしい』と厳しく批判していた。」のだそうだ。
ふうんそうか恥ずかしいのか。…いったい何が?
ことわっておくが、別にどの政党やら候補者(もう決まっちゃったけど)やらを支持するとかしないとか、そういうことではないのでそこんとこよろしく。で、本題だが、松戸市長さんはいったい何を恥ずかしいと思ったのか。想像するに「キャバクラに勤務した経験のある女性は、それだけで政治家として適性を欠くにもかかわらず、この選挙に出馬した。この人を国民の代表として選ぶようでは、この選挙区の人たちが周囲から『見る目がない』といわれてしまう。恥ずかしい」といった感じだろうか。記事にはこんなふうに書いてある。
近年は少女や若い女性が安易に体を使ってカネを稼ぐ風潮が社会問題化。キャバクラは風俗業でも色気だけで体は使わないとはいえ、“元風俗嬢”が県議に続き国会議員に当選したことは、こうした風潮に拍車をかけかねない。選挙に勝ったとはいえ、太田氏の経歴問題は尾を引きそうだ。
そうか社会問題化してるのか。近年?「体を使ってカネを稼ぐ」のは「最古の職業」だろ?芸者の水揚げなんて10代が当たり前だったらしいし、別に近年の風潮でも何でもないじゃん。私はキャバクラにおいてどのようなサービスがなされるのか知らないが、この分野に詳しいであろうサンスポが「色気だけで体は使わない」と書いているんだからそうなんだろう。政治家の皆さんがよくお使いになる銀座のバーやらと、サービスの「内容」がどのくらいちがうんだろうか。
まあいいや。きっとちがうんだろう。とにかく問題なわけだ。そうかサンスポっていうのは「少女や若い女性が安易に体を使ってカネを稼ぐ風潮」が問題だと考えている高尚な新聞なんだな。と思って、サンスポを買ってみた。2006年4月26日付。21面に求人広告が載ってる。どれどれ。
32万上寮完備要免40歳位<特浴>XXXXXX044(XXX)XXXX
従業員急募!経験不問面談即決年齢不問要免寮食完備日払可独立したい方歓迎送迎業務等デリヘル渋谷XX(XXXX)XXXX
「XXX」の部分は店名と電話番号。サンスポのターゲット顧客は男性だろうから、これは男性向けの求人。この分野には詳しくない(しつこいね)ので知らないが、これはいわゆる風俗店の男性職員募集ということだろう。免許を要求しているところからみて車の運転が業務らしい。顧客を送迎するんだろうな。これは「少女や若い女性が安易に体を使ってカネを稼ぐ」業種ではないのか?そういう広告を載せるのはいいのか?それに、22面にはいわゆる「ツーショット」の広告が出ている。これは「少女や若い女性が安易に体を使ってカネを稼ぐ」場の代表格、ではないのか?そういう風潮を問題だと考えているなら、なぜこういう広告を掲載するのだ?「こうした風潮に拍車をかけかねない。」だって?拍車をかけてるのはむしろサンスポのようなマスコミが当然のように掲載している広告ではないか?(別に当該風俗店を批判するつもりはまったくないのでそこんとこよろしく。)こういううすっぺらい正義面が一番きらいだし、このほうがよほど恥ずかしいと思う。
まあいいや。人間だれでも自分のことは棚に上げるもんだし。この市長さんが支持した斎藤さんは自民党公認の候補だったらしい。自民党?この斎藤さんは関係ないだろうが、そういえばかつてこの党の党首で総理大臣をやってた人は、赤坂の芸者に自分の指を3本握らせて「愛人になったらこれだけ出す」と持ちかけ、それを300万円だと思った芸者が実際は30万円だったことに憤慨してマスコミにリークした、なんてことがあったなぁ。そういえばこの党の別の党首で総理大臣をやってた人は、某国の「通訳」だった女性と「交際」していた、なんてこともあったなぁ。そういえばこの党の幹事長だったり首相補佐官だったりした人は、女性とここにはとても書けないようなことをしていた、なんてこともあったなぁ。
別に、だから自民党はどうこうといいたいのではない。逆だ。自民党は、こうした人たちを党首やら幹事長やらとし、さらに総理大臣やら首相補佐官やらといった公職に就けてきた。つまり、こうしたことで政治家としての価値が落ちるわけではない、という考え方だ。上記のさまざまなスキャンダルについて事実関係の詳細はよく知らないが、家庭外で女性と「交際」していたという点についてはご本人たちも否定していないと思う。そういった行為よりもキャバクラに勤めるほうが恥ずかしいんだろうか。女性を買う男性は政治家として適任で、男性に買われた(というか、接客した)女性は政治家として適任でない、というのだろうか。別にフェミニストを気取る気はないが(フェミニストがこの問題をどう考えるのかはわからないけど)、もし仮にキャバクラ勤めの経験がある女性を国会議員に選ぶのが恥ずかしいなら、銀座のバーに行く男性を国会議員に選ぶのも恥ずべきだし、女性スキャンダルを起こす男性を党首に抱く政党を支持するのも恥ずべきだと思う。
私は当選した人も落選した人も知っているわけではないので、どちらが適任かはわからない。選挙民は、選挙期間中の言動やら何やらを見て選んだのだろうが、それだけではほんの一部しかわからないだろうから、結局は今後の行動でみていくしかない。ただ報道されている限りでは、当選した人は、記者会見で「料亭に行きたい」とは言わなかったらしい。ということは、少なくとも現段階では、当選後の第一声が「料亭に行きたい」だった人と比べればはるかに政治家として適任、ということはいえそうだな。
※2006/4/26追記
はてブのコメントにご指摘あり。そうか!デリヘルの運転手が運ぶのは顧客じゃなかった!「デリ」は「デリバリー」だったのをすっかり忘れていた。
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Comments
いやー声を出して笑っちゃいました。
100%正論です。
きっと松戸市長もサンスポの記者もナイトクラブやキャバクラには足を踏み入れたことがないんでしょう。
漫才師のネタか、落語家のマクラに提供してください。絶対ウケます。
Posted by: 島田 | April 26, 2006 07:37 PM
島田さん、コメントありがとうございます。
100%かどうか知りませんが。松戸市長さんはキャバクラには行ったことがないんでしょうね。サンスポの記者は、…どうでしょうか。
Posted by: 山口 浩 | April 26, 2006 11:55 PM
『キャバクラ嬢が選挙に出て戦っている。私は
(自分が客として行った時の言動をばらされると)
松戸市長として恥ずかしい』
ではないかと深読み。
Posted by: 通りすがり | April 29, 2006 08:22 PM
通りすがりさん、コメントありがとうございます。
ちょっと深読みしすぎ、じゃないでしょうか。市長さんが客として行ったということはないんじゃないかと思いますね。あくまで印象ですが。
Posted by: 山口 浩 | April 30, 2006 11:09 AM