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May 23, 2006

ゲームは「個人化」するだろうか

ソニーのPS3がが62,790円(20Gバイトモデル。税込)というかなりの価格になると発表されてから、いろいろなところで議論が起きているようだ。「こんなんで売れるのか?」とか。SCEは「これはゲーム機ではない」と言っているようだが、全体として、懸念する論調のほうが多いように見えるのは日本人特有の悲観癖ばかりでもなさそうだ。

というわけで、私もつらつら考えたことなど。

森さんは「格安AVホームサーバ」という位置づけをしているらしい。なるほどこれはわかりやすいが、森さんもご指摘のとおり、みんながこうとらえてくれるかどうかは未知数だ。何せ高スペックのほうだと実売8万円クラスになりそうだし。

価格設定そのものについてはほかのところでいろいろなされていて、ここでいまさら私が何か書いても意味がなさそげなので、ちょっと毛色のちがったことを書いてみる。個人的な妄想レベルなので、ちがうぞというところはぜひご教示いただければ。

妄想したのは電話機だ。PS3と同様、電話機もメディア端末なわけだが、電話の世界では固定電話から携帯電話への流れがどんどん進みつつある。この傾向は若い世代において特に顕著だから、この方向性が今後も続き、やがて主流になるであろうことは予想できる。この流れは、電話が「家に置くメディア」から「個人が持ち歩くメディア」に変わったことを意味する。持ち歩くのは、軽くて便利、だからではない。このメディアが「聞く耳」「話す口」といった、いわば人間の肉体の延長だからだ。人間は、たとえ可能だとしても、耳や口を家に置いて外に出たりはしない。人「間」ということばが示すとおり、耳や口が可能にする他者とのコミュニケーションが人格そのものをかたちづくる。それは「自分の一部」だ。その意味で、かつてのように電話機が家に置く家族共通のものであった時代こそが、人間にとって「不自然」を強いられた時代だったのだろう。

メディア機器は「個人化」する。もしこれが共通の方向性なのだとしたら、ゲーム機はどうだろう?最近の携帯ゲーム機やソフトの好調な販売とか、携帯電話のゲームが伸びていることとかは、この兆候なんだろうか。PS3は、誰向けとか想定しているかどうか別として、サイズや価格の面で「一家に一台」志向のものであることは疑い得ないのではないか。任天堂のWiiがかなりコンパクトにまとまっていて、「持ち運びを想定しているのではないか」といわれているのとは大きな差かもしれない。

昔は携帯でゲーム機などというと、グラフィック面などで固定ゲーム機よりかなり見劣りがしたが、今のそれは、固定機さながらの高解像度だったりする。ゲームはコミュニケーションの道具ではなくコンテンツ消費のデバイスだという意見はもちろんありうる。もしそうなら、テレビがそうであるのと同じように、家庭用には家庭用のゲーム機市場がこれからもある、ということになるし、大きなスクリーンを使って「みんなで見る」映像コンテンツなんかのためには、当然ながら家庭向けサービスが有効といえそうだ。ただ、個人で楽しむ領域というのは、少なからずある。特に、オンラインゲームのように、他のプレイヤーとつながることが楽しみの一部であるようなものについては、むしろ電話のほうがサービスの性質として近いかもしれない、なんて思えてくる。

もしゲーム機も「個人化」の道をたどるのだとしたら、PS3のような「重厚長大」な機器というのは、将来的に減っていく方向になるんだろうか。それとも、だからこそソニーは「AVホームサーバ」を志向したのだろうか。もちろん予測なんて大それたことをやるつもりはまったくないが、世の中どっちへ向かうだろうといった興味は少なからずある。あ、もちろんどっちにも向かわなくて全然別の方向、なんてこともありうるわけだけど。

はてさて。

※そういえば、ソニー「PSX」って、最近聞かないなぁ。と思って調べたら、2004年12月に発売して、2005年2月に「出荷予定台数が終了したため」生産終了したそうだ。ふうん。

※2006/5/23追記
思いつきだが、「定価を値下げしていく戦略」という路線はありうるだろうか。もともと60GBモデルはオープン価格だから、時とともに下がっていくんだろうし、20GBモデルもそのうち値下げするんだろうけど、定価設定時点ですでに将来の値下げの時期とかを織り込んだ「戦略的」なものだったりして。アーリーアダプターあたりまでには高めにチャージしておいて値崩れを防ぎ、その後早めの段階で価格を下げて一気に普及を図る、なんて。デファクト争いをやってる産業ではあんまりこういうことはやらないんだろうが、一応インダストリーリーダーだしねぇ。

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Comments

作るのに一台$800以上すると推定されていること、また単独のBlu-rayプレイヤーが$1000ぐらいすることから値下げを始めるまで間が開くかと。

ソニーの『PS3を格安AVホームサーバとして見て欲しい』っていうのは少し矛盾してるところがあるような気もします。PS3を売ったことでの損害をゲームを売ることでの利益で埋めなければいけないのだから、第一にゲーム機として扱ってもらわないとソニーは結局損をすることになる。まあ、AV機器として売れればハードの販売台数を見てゲームソフト会社がPS3に流れ、一番のゲーム機になるのかもしれませんけど。

Posted by: k | May 24, 2006 12:22 PM

kさん、コメントありがとうございます。
今日、業界に詳しい人たちとお話をする機会がありましたが、発売前に価格を下げてしまうんじゃないか、なんていうご意見もありました。まあいろいろありうるんでしょうね。はてさて。

Posted by: 山口 浩 | May 24, 2006 10:53 PM

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