中国人より韓国人のほうが趣味がいいかも、という話
小ネタなのであらかじめおことわりしておく。たまたま、中国と韓国で日本の小説が人気、みたいな記事を見かけたので。
中国のほうは、2006年5月7日付の朝日新聞。「中国人 お好みは:村上春樹作品 渡辺淳一作品」という記事。筑波大学大学院に留学中の中国人学生が、中国語に翻訳された日本の小説について調査した、というもの。現役作家で一番翻訳点数が多いのは森村誠一(120点)であるものの刊行のペースがほぼ一定であるのに対し、村上作品は62点のうち98年以降の刊行が51点、渡辺作品は64点のうち98年以降が54点と、最近になって怒涛のように翻訳されていることから、この2人がいま中国で最も読まれている日本作家、と結論づけたらしい。
村上春樹は世界的に人気が高いし、まあわからなくもないが、渡辺淳一というのはいったい。記事にはこんなふうに書いてある。
渡辺さんの影響で90年代末から中国でも女性作家王海鴒さんの「牽手」「中国式離婚」など不倫小説が現れてきた。「都市化の進行で、家族同士のつながりが希薄になり、精神的支柱としての家庭が崩壊しつつあることの反映だろう」と康さんはみている。
「康さん」はこの研究をした学生さんの名。しかし、渡辺淳一恐るべし。こんなところの影響なんか受けなくてもいいのに、と思うのだが。というか、そもそも渡辺淳一は「家庭崩壊」というよりは「どろどろだけど自称純愛」の路線だよね。おそらくは「その種」の出版物に対する規制が厳しいであろうかの国においては、「その種」の本の代替物の役割を果たしているのかもしれない。まあ、「代替」という点では日本もさしてちがわないと思うけど。
一方、韓国のほうは、「COURRiER JAPON」の2006年5月号の記事「韓国で"日流"ブーム いま日本の恋愛小説が売れる!」。現地の「時事ジャーナル」の翻訳らしい。大手書店で年間売れ行きベスト100に入った日本の小説が03年には15点、04年は24点、05年は27点と増えているとか。日本の小説で2005年に売れたベスト5は以下の通り。
1位 「空中ブランコ」(奥田英朗)
2位 「暗闇の底辺」(原題:「アフターダーク」・村上春樹)
3位 「世界の中心で、愛を叫ぶ」(片山恭一)
4位 「東京タワー」(江國香織)
5位 「喪失の時代」(原題:「ノルウェイの森」・村上春樹)
実は日本小説ブームは90年代初めにもあって、今のは「第2期」らしい。恋愛小説が多いのが特徴なんだとか。当然というか、読者層は若年層の女性が中心で、日本の小説が「洗練」のイメージをもって受け取られている、とある。
作品のよしあしを語る資格もその気もないわけだが、村上春樹は共通として、渡辺淳一と、片山恭一やら江國香織やらとを比べると、やはりまあ、なんというか、韓国の人たちのほうが「趣味がいい」ということになるのかなぁ、という感じがしてしまう。もちろん、全部の中国人が、とかいう一般論ではないので、そこんとこ誤解なきよう。でも、もし渡辺淳一が日本文学の代表みたいに思われてるのだとしたら、日本人の1人として私は、複雑な思いを禁じえない、と言いたい。
渡辺淳一先生におかれましては、次回作ではぜひ中国人人妻と日本人男性ビジネスマンのあれやこれやなんかを題材にされてはいかがか、と勝手ながらご推薦しておこう。記憶ちがいでなければ、中国のほうでそんな感じの題材の小説があったという話を聞いたような気がするが、まあ「その手」の「ご本家」だから中国でも売れるんじゃないの、と無責任に煽ってみる。国内ではまた「にっけいしんぶん新聞」あたりで盛り上げていただいて。ただ、韓国人人妻をとりあげるのは、なんか文化摩擦になりそうな予感があるから、ゼッタイやめといてね。よろしく。
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