おつりの渡し方について
日常のなにげない所作について、「あれ?いつからこうなったんだ?」と思うことがたまにある。潮目が変わるというか、あるときを境にがらっと変わったりすることがあるから、なんとも面白い、といった小ネタ。
事情を知ってる人、ぜひ教えていただければ。
「潮目」が変わった典型的な例は、エスカレータで左側に立つという例のあれだ。あれは非常に印象深かったので覚えているが、東京であれが習慣として始まったのは、1993年から94年の間だった。時期が特定できるのは、その時期東京に住んでいなかったからで、久々に東京に帰ってみたら、人々がいつの間にかみな左側に立つようになっていたわけだ。それ以前の東京には、そうした習慣はなかった。80年代、英国に初めて旅行したとき、ガイドブックに「エスカレータでは右側に立つこと」という注意書きがあったのを覚えている。東京でなぜ左側になったのかは知らない。
まあ、この話は本題ではない。ここで書きたいのは、最近とみに増えてきた(ように思われる)、新種の「おつりの渡し方」についてだ。
ことばで説明しようとするとなかなかややこしいので、絵で描いてみた。ひそかに「言戯」にあこがれている私としては、あまりの出来の悪さに暗澹たる思いを禁じえないが、まあいいたいことが伝わる程度ではあるだろうということでご容赦いただければ。右側にお店の人、左側が客と思ってほしい。要するに、おつり渡すとき、おつりを持っていないほうの手を客の手の下に添える、というやり方とでも表現すればいいだろうか。
私がはじめてこのやり方に接したのは、記憶が定かではないが、TSUTAYAあたりではなかったか。居酒屋みたいなところでもずいぶん前からあったと思う。いつごろからなのかは残念ながら覚えていないが、たぶんここ数年、のような気がする。
きっとお店のマニュアルとかで決めたものなんだろうが、いったいこれは、何を目的にしたものなんだろうか。客がおつりを落としたときに受け止めるため?とっさに受け止めるなんて実際には無理だ。ていねいな印象を与えるため?全然そんな効果ないと思う。
さらに混乱させるのは、このとき下に添えた手で、客の手に意図的に触れる動きをする場合があることだ。私の経験からいえば、これをやるのはお店の人が比較的若い(あるいは若そうな)女性である場合に限られている。あらぬ想像がよぎる。まさか、これは営業上の「フック」なのではあるまいか、と。思い当たるふしがあるのは、私が出した手に対して新米らしきお店の人が下から手を添えるとき、いかにもしかたなくといったぎごちない風情で指先だけをちょんと触れてくる場合があることだ。お店のマニュアルで「お客様の手に下から触れることで、お客様は好印象を抱き、再び来店しようと思うのです」みたいな指導をしてたりするんだろうか。なんかちがう業種みたいだが。
もちろん、TSUTAYAあたりだと男性従業員も似た所作をするから、別にそうした「特殊」な意図はないものと思うのだが、いやしかしなんとも不思議だ。たまに、レジのカウンターに手を載せて、下から手を添えられないようにしてみたりする(いじわるだね我ながら)と、お店の人も一瞬どうしていいかとまどってたりする。一度聞いてみたいとかねがね思っているのだが、なかなか機会に恵まれない。事情をご存知の方、ぜひご教示いただければ。
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Comments
はじめまして。某ファーストフード店でビックマックを売ってるものですが僕(男)もそうやっておつりを渡します。特にマニュアルにあるわけではなく、誰かに指導されたわけでもないですが、他のバイトの方もそうやって渡してる人もいたりいなかったり、まちまちですね。
この渡し方のきっかけは、昔、なにかのTV番組で(番組名忘れました)手を添えて渡す場合と、そうじゃない場合でのお客様の印象度を測る実験をやってたからでした。それで、手を添えたほうが(お客様に触れたほうが)好印象だという結果です。(特に男女の違いはなく)
TVの小規模な実験だけでは信用に足りないのですが、スキンシップと親密度は比例していて、倦怠期を迎えた夫婦の仲を温めたり、異性の人と仲良くなる技術としてスキンシップがうまく使われてるのを見るとお釣りを渡すことでも有効なテクニックなのではと思えます。
TVから火がついて、仲間内に広がって、感じのいいお釣りの受け渡し方をされた他社の店員が自分もまねしたりしてみて、、、もしかしてそうやって広がったかもしれません。
Posted by: teruya | May 28, 2006 09:17 AM
teruyaさん、コメントありがとうございます。
「ビックマック」という商品名は珍しいですね。どこのファーストフード店なんでしょうか。それはさておき、指導してるわけじゃないんですか。あの業界は「マニュアル化の権化」みたいに言われることがよくありますけど、実際はそうでもないわけですね。好印象ですか。こわごわ、しぶしぶでなければそうなんでしょうがねぇ。
ともあれ、情報ありがとうございました。
Posted by: 山口 浩 | May 28, 2006 12:44 PM
エスカレータ左は、93年より前に始まってますよ。
自分が小学1年で電車通学を始めた時期には既にあったので、90年より前なのは確実です。
Posted by: gen | May 28, 2006 08:25 PM
genさん、コメントありがとうございます。
そうなんですか。私が乗っていた電車では、93年以前にはありませんでした。伝播していったんですかね。ともあれ、貴重な情報ありがとうございました。
Posted by: 山口 浩 | May 29, 2006 09:16 AM