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May 18, 2006

人の「プライバシー」を大切にするのはいい会社、という話

都内在住の日本テレビの男性アナウンサー(26)が、JR横浜駅構内で女子高校生のスカート内を隠し撮りした疑いで書類送検になってる、というニュースが流れている。

これを聞いて心強く思った。日本テレビっていうのは、プライバシーを大切にする会社なんだねぇ。

事件自体は、2月に横浜駅西口の上りエスカレーターで、この人が前に立っていた女子高校生(16)のスカートの中をカメラ付き携帯電話で撮影したところを近くにいた鉄道警察隊隊員に発見された、というよくある話。本人が容疑を認めたので、5月になって起訴猶予処分が決定したとのこと。被害者にはたいへんお気の毒で怒りを禁じえないが、もっと悲惨な事件も少なくないという意味でいえば、この種の事件としてはまだ「まし」なほう、なのではないか。ともあれこの点は本旨ではないので突っ込まない。

で、冒頭の感想だが、この件に関して日本テレビ総合広報部は「社員のプライバシーにかかわる問題で、当社としてお話しすることはありません。すでに社員に対して、適切な対応をとった」なんていうコメントを出している。おおなるほど。確かに社員のプライバシーは大切だな。別に誰がやったかなんてことはそもそも事件の再発防止にも関係ないし、われわれが知って何か得するものでもない。政治家や官僚の汚職などのような特殊な場合を除けば、容疑者の固有名詞は、報道の必須要素ではないのだ。匿名でもいっこうにかまわないと思う。社員を大切にするいい会社ではないか、日本テレビ。

だいたい世の中、本筋と関係ないところで人のプライバシーを暴いてさらしものにする風潮が蔓延している。まことに嘆かわしい。最近はネットで一般人のプライバシーをさらしたりする行為がよくあったりするが、それよりも影響力という点でいえば、特に目に余るのはやはりマスコミだ。テレビ局や新聞社、雑誌なんかのマスコミが、何かあるとよってたかって人のプライバシーをさらしものにした上であることないことをしゃべりまくり、書きまくる。相手が政治家や官僚でなくても、事案が重要なものでなくても、とにかく売れそうなもの、人がこっそり見たいと思っているものであれば、なんであれ対象となる。いったん標的にされたら、「焼け野原」になるまでプライバシーは蹂躙される。暴かれる情報は、事件とはまったく関係のない私生活やら過去やらまでも含み、本人だけでなく、その家族や周囲の人々、勤務先の人々まで巻き込まれる。下手すると、勤務先の上司やら社長やらが「社員の指導がなっとらん!」なんて吊るし上げを食ったりもする。そんなことまで知らないって。で、特にテレビのワイドショーなんかだと司会やらコメンテーターやらといった類の人が、無責任な放言で憶測を事実であるかのように印象づけて一丁上がり。まちがっていてもまじめに訂正なんかしないから、悪いままの印象が「事実」として世間に記憶されていく。いやまったく嘆かわしい限りだ。

こうした風潮はぜひ変えていかなければならない。そのためには、日本テレビのように、プライバシーを大事にする会社が先頭に立って、世間に訴えていくことがぜひ必要だろう。社員のプライバシーをこれほど大事にするくらいだから、それより大事な顧客、つまり世間の一般の人々のプライバシーをないがしろにしようなどとは夢にも考えないにちがいない。きっとそんな悪いことをするマスコミに対して強烈な批判キャンペーンやら何やらをやってくれるだろう。いや頼もしいではないか。これでわれわれのプライバシーが心なきマスコミに蹂躙されることもなくなる。安心安心。

ええと、ところで、日本テレビって何やってる会社だっけ?

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Comments

少し話しはそれるかもしれませんが、最近スーパーで買う野菜とかカルビーのポテトチップスにまで生産者の名前を載せています。モスバーガーでも野菜の生産者の名前が書いてあります。企業にとっては安全性をアピールした試みだとは思うのですが、私には何だか責任逃れのように思えます(食品生産者にとっては他者との差別化の利点もあるとは思いますが)。実際肉とか牛乳のトレーサビリティもほとんど使われてないと聞きます。企業は組織内で安全対策を施すべきであり、店舗などのアウトプットでそれを保証するのは何だかなぁと感じます。

Posted by: nitian | May 18, 2006 02:29 PM

これは面白いエントリーですね(笑

ただ、悲惨さの部分に関しては余計だったんじゃないですかねー。
個人的には同意できるんですがね。

Posted by: fkfk | May 18, 2006 04:57 PM

コメントありがとうございます。

nitianさん
なるほど。私はあまり気にしません。というか、誰が責任を持つかということは、誰が一番deep pocketなのかということにある程度依存しているように思います。製造者よりも販売者のほうが大きいなら、そこで責任をもつというのもひとつの考え方なのでは?そもそも、生産者表示も今はどちらかというとトレーサビリティ云々よりマーケティング戦略のほうに近いような気が。

fkfkさん
確かに、本筋に関係ないし、余計だったかもしれませんね。あの書き方で傷つく人もいるかもしれないし。とりあえず残しときますが、風当たりが強いようならその部分削除するかもしれません。
書いた側の理屈としては、あの種の事案で起訴猶予なら、一般人の実名を報道することはしない例も多いかも、というニュアンスがあります。ま、もしそうならそう書けばいいんで、いずれにせよいい文章じゃないですね。すいません。

Posted by: 山口 浩 | May 18, 2006 10:36 PM

始めまして。
美しい風刺文ですね。
もうエンターテイメントだと思います。

Posted by: yining | May 19, 2006 01:43 AM

yiningさん、コメントありがとうございます。
お楽しみいただけたようで光栄です。「風刺」かどうかは読む方の主観にお任せしますが、エンターテインメント的であることは意識して書きましたので、うれしいですね。

Posted by: 山口 浩 | May 20, 2006 02:30 AM

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