なんだかなぁもう、と思った話
極東ブログに「ライブドア事件・個人投資家は救済されるのかな」なんていう記事が出ていた。この件に関しては前に書いたことがあって、特段それから意見が変わったわけでもないのだが、なんとも後味が悪いままなので、もう一度だけ。
やっぱりこれって証券業界の問題として議論すべきだと思う。
もちろん、別に極東ブログを批判しているわけではなくて、証券業界が他人事みたいに静観しているさまが不満なのだ。「責任者出て来い!」なんてえらそうに言える立場ではもちろんないのだが、気持ち的にはそうも言いたくなるようないらだちが少なからずある。念のためだが、ライブドアに責任があるかどうかについていっているわけではないので、そういうつっこみはご勘弁願いたい。
ライブドア株の取引に関する個人の損失で、マスコミなどによく取り上げられているケースは、だれがどうみても「こんな顧客にこんな取引を勧めるなんてどうかしてる」という類のものだ。少なくとも証券外務員は、資格取得時にそういう勧誘を行ってはいけないと教え込まれているはずだし、証券会社は「取引に際しては、お客様の名前、住所、投資の目的、資産の状況、有価証券投資の経験の有無等・・・を十分把握したうえ、お客様の意向と実情に適合した投資勧誘に努めます。」みたいな勧誘方針を定めているはずだ。だから、この点に関しては、ライブドアやその元経営陣がどんな行動をしたかしなかったかとはまったく関係なく、証券外務員やら証券会社やらとして、責任を負うべきものだと思う。
それに、法的な責任というのはなかなかややこしい事情があるからそう簡単にはいかないとしても、こういう事態が起きたことについて、業界として問題意識を表明するくらいのことがあってもいいではないか。報道内容は、証券会社の勧誘に問題があったと指摘しているに等しいのだ。なんか関連する発言があるかと、この件に関する2006年2月14日の証券業協会会長記者会見の議事録をみると、こんな具合だ。
(記者) ライブドア事件の関連で、前回の会見でも会長の所見を伺ったが、その後も経営陣の逮捕・起訴、ライブドア自体の監理ポスト入りなど様々な動きがあった。上場廃止の可能性も指摘されている中で、ライブドアの株価もかなり乱高下しており、新興市場への影響もみられる。改めて今回の事件が株式市場及び約20万人いるとされる個人投資家等に与えた影響について会長の所見をお願いしたい。
(越田会長) 今回のライブドアの件は、市場を非常に混乱させ、投資家や市場関係者に与えた影響が非常に大きかったのは確かであり、投資家や株主を裏切ったということは、上場企業としてはあってはならない許し難いことである。こうしたことが起きないように早期にチェックできる体制を図っていくことが必要であると思う。こういったことから取引所の自主規制機能を強化することが望ましいと考えている。 (中略) ライブドアの件は、株価が大幅に値下がりし、株主に非常に影響が大きいので私も深刻に考えているが、上場廃止問題は取引所が決めることで私が予見を与えるようなことはコメントできない。虚偽記載その他証取法の違反ということに関しては、今後とも厳罰に処していかなければならないと思う。
個人攻撃をするつもりはまったくないのだが、なんでこういうコメントになるんだろう。しつこいぐらいに繰り返されてる報道番組の1つでも見ていれば、あの問題が業界自身の問題でもあることに気づかないはずがない。「今後とも厳罰に」なんて他人の仕事に口を出すくらいなら、自分の業界の中に「不届き者」がいることを協会としてどう考えるのか、どう対処していくのか、ひとことでもコメントすべきではないか。
ましてや、この問題はライブドア事件よりはるか以前から繰り返し指摘されてきた、いわば業界の「業病」のようなものだ。ライブドアをいくら批判したところで、証券業界自体の問題が消えてなくなるわけではない。一連の報道で業界全体のイメージも悪化していることに少しでも気づいていたら、うそでも「勧誘のあり方について再検討したい」ぐらいのコメントをするのが当然だと思う。まさかわかってて無視してるとか?この件はライブドアが攻撃の的になってるからいいってことか?それじゃ自浄作用が働いていないといわれてもしかたあるまい。逆に、もし報道が事実に反するなら、協会としてきちんと反論し、訂正と謝罪を求めるべきだ。
マスメディアの皆さんも、自分たちの報道が、ライブドアよりもむしろ証券業界にケンカを売っているのだという自覚があるんだろうか。誰を悪者にするかだけに終始する議論は、無益というよりむしろ有害だと思うんだが。
あれやこれや、なんだかなぁもう、という感じ。
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