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June 11, 2006

IT企業は大学から145マイル以内に立地せよ、という話

Woodwarda, D., O. Figueiredob, and P. Guimarães (2006). "Beyond the Silicon Valley: University R&D and high-technology location." Journal of Urban Economics 60, 1: 15-32.

企業などの立地問題は都市経済学の重要なテーマの1つだ。理論的な分析もさることながら、いろいろな実証分析が行われている。これもその1つ。ハイテク企業の立地と大学との関係を分析したものだ。最初にことわっておくが、以下はこの論文の本文を読んで書いたものではない。そこんとこよろしく。

ともあれまず要旨を。

In this paper, we examine high-technology location in US counties, focusing on the relationship with university research and development (R&D). The Dirichlet-Multinomial model (an extension of the conditional logit model that allows for overdispersion) is used to estimate the determinants of manufacturing establishment births in US counties. We test the hypothesis that university R&D generates spillovers captured locally as new high-technology establishments, after controlling for local costs, demand, agglomeration economies and other important location factors. Estimates show that R&D expenditures at universities exert a positive, statistically significant influence on the decision to locate plants in a county. The marginal impacts of increased R&D funding on county probabilities for new high-tech plant births, however, appear to be modest. Separate estimates indicate that the findings hold up across most individual high-tech industries. Our model also determines the distance from university R&D in which economic spillovers can be detected. Spillover effects may extend up to approximately 145 miles from universities.

ここで取り上げられたシリコンバレー界隈には、多くのハイテク企業だけでなく、数々の優れた大学が立地していることはよく知られている(Wikipediaによる解説はこちら)。いわゆるspilloverというやつ。この研究が調べようとしたのはこれだ。もちろん、企業の立地には、もちろんいろんな条件がからむ。大学ベンチャーみたいなものから発生した明確なケースはさておき、一般論としては、仮にハイテク企業が大学の近くにあったからといって、その立地が大学に起因するとは限らない。この研究では、そのあたりをその地域のコスト要因、需要要因、集積メリットみたいな典型的な立地の理由なんかとは切り離した上で分析しているようだ。

大学の研究費支出は、企業の立地に関する意思決定に有意な影響を与えているらしい。ただ、だからといって、大学がより多くの研究費を使えば企業の立地が増えるかについては、どうもあまりはっきしないようだ。このあたり、産学連携を狙って大学を誘致しようとしている自治体の方なんかには、ちょっといやな話かもしれない。

それより面白かったのは、spilloverが及ぶ限界距離、というのが示されている点だ。大学から約145マイル。1マイル = 1.609344 キロメートルだから、約233キロメートル。典型的にシリコンバレーと呼ばれる範囲より大きいようだ。つまり、大学の効果はシリコンバレーを超えて及ぶ、だから「Beyond the Silicon Valley」というタイトルなんだな。日本で233キロというと、東京を中心として、関東一円はおろか静岡、長野、さらに福島、新潟、愛知の一部あたりまで入る。…なんか、アメリカって大きいんだな、という感じ。日本だとどのくらいなんだろう。もう誰か調べてるだろうか。どの大学でもいいってわけではないだろうなぁ、なんていうあたりにはあまりつっこみたくないので、このへんで。

※追記
上のを読んでると、自分がハイテク企業=IT企業という想定をしていることがわかる。これらが同じとは限らないのは当然の話だが、なにせ本文を読んでいない弱みで、わからないまま思い込みで書いたわけだ。要旨を読む限りは、「high-tech plant」みたいな表現もあるし、どっちかというと製造業っぽいなぁ。でもほとんどのハイテク産業にあてはまるとも書いてあるから、きっとIT産業もその例に入っているんじゃないか、と言い訳してみたりもする。とはいえ保証できないので、無責任で申し訳ないが、詳しくはぜひ本文にあたることをお勧め。

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