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June 09, 2006

広告ってむずかしいねぇ

広告はそれ単体では存在せず、そのときの社会状況やそれらに対する認識、周辺の環境との関係などを伴って解釈される。したがって広告単体の効果を評価するということは、ある程度の「割り切り」を前提としたものである。

なんてことを思ったきっかけは、実はきわめてたわいなかったりする、という話。

Shibuya1
これは東急田園都市線渋谷駅ホームにある広告だ。2つ並んでいて、右側が東京女学館大学、左側が黄桜酒造の広告となっている。この2つ、なぜこの2つが並んで配置されているのか、が冒頭の感想をもったきっかけだ。最初にことわっとくが、別にこの両者に対してなんら悪い感情をもっているわけでもなければ、おとしめるような意図もない。そこんとこよろしく。

この写真だと、携帯電話についているカメラの性能が悪くてよく見えないので、拡大してみる。

Shibuya2
まずは女学館のほう。大学名「東京女学館大学 国際教養学部」の上に、キャッチコピーとして「女性リーダーシップの育成をめざす」とある。ほほうなるほど。なにせ「国際」で「教養」なわけだから、社会で活躍する女性、社会をリードする女性を育成する学部、ということだろう。ちなみにこの大学には、国際教養学部しかない。「なんで特定の学部だけの広告なんだ?」と思った方がいたら、そういうことなのでよろしく。サイトのほうには、「明日を担うすべての女性にリベラルアーツ教育を」というキャッチコピーがついている。「広い国際的な知識の習得(リベラルアーツ) 」、「専門知識の研究・習得(3つのコース:国際関係・比較文化・女性学) 」、「国際人として英語力の習得」の3つが主な教育内容なのだそうだ。「著名な客員教授陣」には、阿刀田高、 猪口邦子(だいじん、ではないか)、工藤庸子、原ひろ子、福岡政行(おお「あの人」ではないか)といった名前が連なっている。


Shibuya3
で、こちらは黄桜酒造。いわずと知れた高島礼子だ。けっこう前からこの会社のイメージキャラクターになっている(関連)。和服姿から、家で夫の帰りを待つ女房、といったイメージが伝わってくる。遅く帰宅した夫が愛妻の手料理を食べているのを、テーブルの向かいから眺めている図、といったところだろうか。キャッチコピーも「おつかれさま」となっている。当然、晩酌には黄桜、というわけだ。まあ、なんだな、「古きよき」日本女性、とでもいった印象で、こういう場面には黄桜が合いますよ、というのが広告のメッセージということになろう。


これらがそれぞれ単体としてあるなら、いずれも違和感なく受け入れられる。しかしこれが並んでいると、とたんにあれ?となってしまうのだ。右側は「女性リーダーシップ教育」、左側は家で夫を「おつかれさま」と待つ専業主婦。どちらもそれぞれ別の意味で(誰にとってかは別として)「よき女性像」だが、これらは共存しうるのだろうか、と。

いろいろな女性がいる、という考え方もあるだろう。リーダーシップを発揮して世界で活躍する女性になるもよし、家で夫の帰りを待つ主婦になるもよし、それは個々の女性が選ぶことだ。とまあ、これが理屈ということになる。しかし実際はどうか。「右側」の女性像をめざして教育を受けながら、現実には「左側」の道を行かざるを得ない女性が少なからずいるのではないか。あるいは、「左側」の道に行ってしまうことを恐れて結婚に二の足を踏む「右側」組の女性も少なからずいるのではないか。こんなことをつらつら考え始めると、もはやこれらの広告から、それが意図した印象を受けることはない。「右側」の広告を見れば「教育を受けても結局なぁ」みたいな印象、「左側」を見れば「あんた本当にそれでいいんか?」みたいな印象を受けることになる。どっちにしても、うーん、と考え込んでしまい、広告そのものの印象は薄くなってしまう。

で、最後はこれらの広告を並べた広告代理店と、それを了承した広告主へと想像が広がる。いったいなんでこんな並べ方をしたんだろう。他に場所はなかったんだろうか。まさか、わざと並べたわけじゃないよなぁ。お互いを「反面教師」とする意図!?まさかねぇ。それとも、「昼間は世界をリードする女性エグゼクティブ、夜は手料理と晩酌で夫を迎える主婦」みたいなスーパーレディを志向せよ、とか?もっとひねって「夫を操縦する専業主婦こそ真の世界のリーダーたりうる」みたいな発想とか?

いやわからんね。しかしまあ、しばらくはこれを考えるので楽しめたからよしとするか。本当はいろいろ考えなきゃいけないことなんだろうけど、今日は時間もないのでここまで。

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Comments

失礼します。
非常に興味深い考察です。
この大学のイメージキャラクターのようにも見えてしまいます。

つい先日には、WEBサイト上の車事故のニュースの横に、キャデラックのバナーが、みたいな例もありましたね。

単体のクリエイティブだけでは済まない時代になったということですね。

Posted by: amigo_kimura | June 15, 2006 04:59 PM

amigo_kimuraさん、コメントありがとうございます。
プロの方は当然わかってらっしゃるんでしょうけどねぇ。この例はちょっと、といったところでしょうか。

Posted by: 山口 浩 | June 16, 2006 05:09 AM

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