「経済学ノート」点字データを公開
筑波技術大学という大学がある。視覚・聴覚障害者のための大学で、それまで短大だったのが最近大学になった。ここで数年間、視覚障害者向けの経済学の授業を担当していたのだが、今年度で晴れて御役御免になった。
終わるにあたって、事務の方に頼んで、そこで使っていた点字テキストのデータをいただいたので、取り急ぎ公開しておく。
「経済学ノート」と名づけたこのファイルは、筑波技術短期大学で私が実際に使っていた教科書の点字データだ。塩澤修平著「入門経済学」(有斐閣。Amazonには出ていない。絶版か?)を一部利用しながら私が作成したテキストファイルをもとに、同学の方に点訳していただいたもの。塩澤先生の書かれた部分をそっくり使っている部分もあるが、かなりの部分はそのままではなく、自分なりに書き換えている。各所でハンバーガーを例に使っている(チーズバーガーとフィレオフィッシュの無差別曲線分析、みたいな)のは、それで少しでもわかりやすくなれば、というものだ。
実際の授業では、学生の視力に応じて、この点字テキストのほか、拡大墨字(「すみじ」と読む。点字に対比してこういう。大きなフォントで印刷している)で印刷したものも使う。テキストファイルのほうをそのまま公開すると著作権法上問題があると思うが、点字のほうは問題ないようなので、こちらを公開する。
ファイルはこれ。圧縮されている。解凍すると、BASE形式という点字用の特殊なファイルが3つ現れるが、これが3分冊。通常のテキストファイルとして出力するとA4でほぼ100ページぐらいになる分量だが、点字でテキストにするとこのぐらいの分量になる。
これを利用するには、フリーウェア、シェアウェアとして配布されている点字エディタ等を入手する必要がある。事務の方からは、フリーウェアの日本語点訳システム「T・エディタ」をご紹介いただいた。このサイトでダウンロードできる(その他、大阪府立図書館の杉田正幸さんのサイトにも「視覚障害者に利用可能と思われるWindowsソフトウェア一覧」というページがあり、そのうち「9.点訳ソフト一覧」にもいろいろ出ている由。
作成したのは2000年ごろなので、少し内容が古いがご勘弁。視覚障害者向けということで、可能な限り図を使わないようにしているが、それでもそこそこの数の図が含まれている。微分を習った人も少ないので、数学もできるだけ使わないほうがいい。実際の授業ではもう少し「進歩」して使う図の数を減らし、式は使わないようにしていたが、そのあたりを反映して「図も式も使わない経済学テキスト」を作ろうという野望は今のところかなっていない。これはそのうちおいおい。
確か点字のファイルを集めているサイトがあったと思う。落ち着いたらそちらにも登録することとしよう。
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