「『ウェブサービス』としてのオンラインゲーム」資料一部改訂
7月21日に行われたBBAオンラインゲーム専門部会で話をする機会があった。悪天候の中ご来場いただいた皆様には感謝申し上げたい。その中で使った資料について「ちがっているのではないか」との指摘があって、見直した結果、一部改訂してみたのでここにアップしておく。
資料はこちら。ご指摘を受けたのはページでいうと20ページ、スライドでいえば39枚目の図だ。意図としてこれはオンラインゲームの需要関数を示していて、縦軸は価格、横軸は需要量を示す。これを図では縦軸が「料金」、横軸が「ユーザー数」と表現していたが、これがどうもわかりにくかったらしい。
ここでいいたかったのは、オンラインゲームに対して高い価格を支払ってもよい、つまり留保価格の高い人々は少数であって、大半の人は無料かそれに近くないと利用しようとしない人々になっている、という関係だ。一般的な需要関数と同じ類の話だと思う。アイテム課金は一種のtwo-part pricing的なしくみで、「入り口を広げて多くの需要を取り入れたうえで留保価格の高い人から高い料金をとる」ビジネスモデルになっている。しかし一種のネットワーク外部性があるため、無料ユーザーの存在も全体にとってメリットがある、そしてそれは外部効果であるがゆえにこの需要関数の外にある、ということだ。その方向で資料を一部直してみた。横軸を「需要量」に変更し、若干の説明を加えてある。
このようなビジネスモデルは、最近のウェブサービスによくみられるものであり、オンラインゲームもまたウェブサービスであることのあらわれだというのが話の主旨。これで話がつながるだろうか。本人の中では意味が通っているんだが、複数の方からご指摘を受けたので少々不安になっている。ちがうと思われた方、ぜひご指摘いただきたく。何せ私は「学ぶ者」だから。
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Comments
PPT の件のページを拝見しました。私はオンラインゲームにはあまり親しんでないのですが、「はてな」の仕組みがこの図に近いのではというふうな気がしました。
仮にはてなが有料サービスのみの提供形態しかなくて、かつその価格が安くない(どの程度が「安くない」かの議論はあるとは思いますが)とすれば、今ほどのユーザ層の拡大はまず期待できなかったでしょう。
まず無料というエントリポイントを設定しておき、有料サービスにアップグレードすると例えば Google AdSense の自アカウントを使えたりといった「バージョニング」(『ネットワーク経済の法則』より)によって、参加誘因を生み出していると考えることができます。
また、技術的に見れば、はてながはてブの API などを介して他のサイトにもエントリポイントを作る(作らせる)仕組みが、まさにロングテールよろしくユーザ層の裾野を広げる効果をもたらしていると言えそうです。あ、もちろん API を使って UI をバリバリ作るハッカーだけでなく、そうやって作られた Web サービスの利益に浴するユーザも含めての話です。
Posted by: McDMaster(マナル店長) | July 24, 2006 10:14 PM
McDMasterさん、コメントありがとうございます。
確かにはてなのしくみは近いですね。さらにいえば、最近のウェブサービスにはこれに似たものが多くみられるのではないかと思います。無料ユーザーも含めてユーザー層全体が「財産」になっている、有料ユーザーも納得して支払っているのでそれなりに「満足」している、という構図です。オンラインゲームの最近の流れもこれと共通要素があるぞ、その「一致」は偶然じゃないぞ、というのがお話のポイントでした。
Posted by: 山口 浩 | July 25, 2006 12:00 PM