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July 28, 2006

雑誌目次をみる:「SMR (Sports Management Review)」

ひさびさ登場の「雑誌目次をみる」シリーズ。今回は「SMR (Sports Management Review)」 。

表紙に「『スポーツ・マネジメント』の総合誌、創刊。」とある。スポーツ・マネジメントに対する関心が、最近徐々高まりつつあるのではないかと思う。文化としてとらえようがビジネスとしてとらえようが、スポーツというのは個人の趣味の範囲を超えたところではまちがいなく「マネジメント」を必要とする。そしてそれを上手にこなすためには、通常の場合、スポーツの技術の指導やらスポーツを通じた人格の育成やらとは別のトレーニングが必要となる。「名選手が名監督ではない」とかよくいうが、さもありなんと思うし、さらにスポーツをビジネスとして成り立たせるという観点からは、むしろ何の訓練もなしにできると考えるほうがむしろ不自然だ。日本でもいくつかの大学でスポーツ・マネジメントを教えるところが出てきた。というわけでまさにタイムリーな創刊、ということなんだろう。

この雑誌、一般的な雑誌の作り方とは流儀があちこちちがっていて、全般的にどうもよくわかりにくいのだが季刊らしい。今手にしているのは、4月25日に発売されたその創刊号。表紙はヤクルトの古田監督。スーツ姿。7月25日には第2号が発売された…はず。見てないからわからないけど。いまどき、新しい雑誌を立ち上げるなら公式サイトくらい作っといたほうがいいよ?とか思うのだが、まあそこはそれ。

というわけで、創刊号の目次をご紹介。あ、念のためだが、私はプロスポーツ業界にうとい。ファンの人なら当然知っているべきことを知らない。そういう前提でお読みいただければ。

SMR SPECIAL
・古田敦也が語る「F-Project」の全貌。
  改革のキーワードは「FULL」「FUN」「FAN」である。
・「僕は、“三つの目線”で神宮を満員にしたい」。
  「F-Project」リーダー穐田誉輝(カカクコム社長)インタビュー。

表紙にも登場した古田監督の特集。「古田」の「F」をキーワードに改革しようというわけ。ほほおなるほど。で、なんでカカクコムなの?と思ったら、どうも穐田社長、古田監督と旧知とかで、改革の舵取りを頼まれたらしい。ちなみに「三つの目線」とは「ファンの目線」、「球団の目線」、「選手の目線」だそうだ。まあステークホルダーってわけだな。マーケティング、ガバナンス、モチベーション、みたいな感じだろうか。ぜひリスクマネジメントも忘れずにしっかりご指南いただきたい、なんていったら野暮というか意地悪というか。

全然関係ないが、この目次、やけに「。」が目立つ。これ以降もそうだが、ほぼすべての項目に「。」がついている。これも先ほど「流儀がちがう」と書いた理由の1つ。目次の、しかも箇条書きに「。」をつけるのは珍しいと思うがどうなんだろう。編集者の方、よほど「。」にこだわりがあるらしい。「モーニング娘。」のファンだったりするんだろうか。

TOPICS MANAGEMENT
・千葉ロッテ、「指定管理者制度」を導入す。
  今年、「千葉マリンスタジアム」は「稼ぐ場所」に変貌する。
・日本のプロスポーツはどこへ行くのか?
  プロ野球&Jリーグの収支比較。

「〇六年四月、千葉ロッテは千葉マリンスタジアムの指定管理者となった」のだそうだ。要するに、「本拠地『千葉マリンスタジアム』の運営権を千葉市から譲り受けた」ということらしい。これまでは単なるテナントだったということか。事業主体として経営上の柔軟性を得て、本格的な事業展開をはかろうというわけだ。虎穴に入らずんば虎児を得ず。記事にはさまざまな改革が行われているさまが説明されている。ファンの人ならとっくに知ってることなんだろう。スタートから3ヶ月ほどたったわけだが、今どうなんだろうね。
収支比較のほうは、野球とサッカーの開示姿勢のちがいがくっきり。そういえば野球って最近はテレビ中継がほとんどなくなったな。球団的にはけっこう大変だろうと思う。私としては、時間が決まってれば別に文句はないんだが。野球も時間制にしたらどうかって真剣に思ったりする。

SMR COLUMNS MANAGEMENT TOPICS
・WBC開催、真の理由と今後に向けての課題。
・相次ぐスケートリンクの閉鎖と若手育成への不安。
・2016年の五輪招致を目指す東京と福岡。
・認知度アップに苦戦するバスケットボール世界選手権。
・レアル・マドリード、ペレス会長の辞任劇。
・映画「レアル・ザ・ムービー」と「GOAL!」の共通項。

このへんのコラムあたりまでくると、なんだか「Number」あたりの記事とさして変わらない雰囲気が漂ってくるような気がするんだがどうなんだろう。ガチガチの経営誌じゃやっていけん、ということか。個人的に気になるのはオリンピック招致の件。ちょっと前に福岡に行ったら、招致運動を盛り上げようという街頭キャンペーンの5メートル先で招致反対運動をやっていたりしたが、3月時点の調査では67%が反対とか。しかしここはぜひがんばって、東京を打ち負かしてほしい。でないと、万が一東京で開催するなんてことになったら負担増でたいへんだ。少なくとも私はやだね。だいたい2016年っていったら石原慎太郎は84歳とかだよ?まさかそれまで知事に居座ろうとか思ってるんじゃないだろうね。いや別に年寄りをあしざまにいうわけではないんだが、少なくとも長期政権は弊害のほうが大きいと思う。

特別企画
・唯一のサッカー専門新聞「エルゴラッソ」が目指すスポーツメディアのあり方とは?

TOPICS MANAGEMENT ILLUSTRATIONS
・プロスポーツ選手の年俸はこうして決まる。
  プロ野球&Jリーグ。
・鈴木亜久里「僕がF1チームを作った理由」。
  スーパーアグリF1チーム始動。

「こうして決まる」といっても、それほど詳しい情報が載っているわけではなく、プロセスを説明しているだけだ。まあ当然といえば当然。どうも交渉している本人たちも、詳しい算式みたいなものを使っているわけではなさそう。交渉事だから仕方ないんだろうけどね。でもこのあたりを透明化していく動きってのが本来必要なんじゃないか、と部外者的に思ったりする。

ちなみに、日本だとICUの竹澤先生が始めてるぐらいしか知らない(たぶん他にはいないと思う)けど、海外でスポーツ・ファイナンスという分野が立ち上がりつつあって、スポーツに関する財務の研究が今後盛り上がってくる機運がある。今年2月には「International Journal of Sport Finance」なんていう専門誌も創刊された。こういうテーマをやりたいらしい。ちょっと脱線するが、関連あると思うので、書いておく。
- Franchise and Stadium Valuation
- Pricing Theory and Application to Sport
- Capital Financing Techniques
- Structuring Public Financing
- Financial Analysis Techniques
- Economic Impact Analysis
- Stadium Economics
- Fundraising Techniques
- Risk Mitigation Strategies
- Budget Construction and Analsyis Techniques

こうしてみると、当然ながら、リアルオプションに関連する領域がかなりあることがわかる。一種のアセットファイナンスでもあるし。データがあればけっこう面白そう。もちろんここまでテクニカルなテーマは「SMR」の対象顧客層にはあまり受けないだろうけど、本当は経営っていったら、こういうことも考えなきゃいかんのだよ。

SMR COLUMNSMANAGEMENT ILLUSTRATIONS
・「タグ・ラグビー」普及に燃える、ラグビー協会の本音。
・「チーム青森」に見る町おこしの真実。
・どこへ行く?人気凋落NBA。
・欧州サッカークラブのマネジメント通信簿。
・人気沸騰「スポーツ留学」、その本当の値打ち。
・浦和レッズ観客動員80万人へ。

「欧州サッカークラブ」の記事をみると、どうも「マネジメント不在」問題は国際的に共通のようで、成績のよいチームは高額で選手を獲得するために、概して収支が悪い傾向があるらしい。ちょっと安心、してちゃいけない。それから、「スポーツ留学」というのもあるんだね。「人気沸騰」とあるが、記事に出ているのは1つの例。それでも参加者の満足度は高いらしい。ふつうの大学とかで留学すると授業についていくのが大変だが、スポーツなら非言語コミュニケーションで伝わるところが多いのかもしれない。大学生の海外体験にもけっこういいかも。

特別連載
・岡田武史「監督の哲学」。

[連載]SMR流知的武装講座
・[スポーツ・マーケティング]観客動員力No.1の阪神が、収益力No,1ではない理由。
・[法務]権利管理では「地図」と「アンテナ」。
・競技管理では「リーグマネジメント」を意識せよ。

「スポーツ・マーケティング」は早稲田大学スポーツ科学学術院の原田宗彦教授による分析。こういう大学院って面白そうだな。

SMR SPECIAL
・早大ラグビー部に見る「究極の大学スポーツ・マネジメント」
  日本一の要因は、“グラウンド外”にあった。

連載
・海外のスポーツ・マネジメントを読む。

[連載]経営のメタファーとしてのスポーツ
・第1回特別対談 平尾誠二(神戸製鋼所)×金井壽宏(神戸大学大学院教授)

金井教授は組織論の専門家。経営者でメタファーとしてスポーツを引き合いに出す人は多いが、実際近いんだろう。どちらも人間のグループに関するものだし。経営学教育においても、もっとスポーツを素材として活用していくべきなのかもしれない。なんせスポーツは結果がはっきり出るしね。

IBLJ開幕特別企画
・地域に愛されるリーグ運営で四国を明るく元気にします!

SMR INFORMATION
FROM EDITORS

いやなかなか野心的な内容。どのくらいの読者がいるのかわからないが、潜在的な読者層はすごく広いと思う。私はこの雑誌を大学の書店で見つけたのだが、スポーツ指導者、スポーツ経営に携わる人、経営に携わる人、いろいろな人に関係するはず。スポーツをビジネスとしてとらえる考え方は、「金勘定をもちこむな」みたいな反発を呼ぶことがあるが、少なくとも「金勘定」から逃れられない立場なら、逃げるべきではないと思う。今後に期待。

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Comments

こんにちは。
ラグビーファンで金井ファンの私にはなかなかそそられる内容の雑誌に見えます。
「「タグ・ラグビー」普及に燃える、ラグビー協会の本音。」「「チーム青森」に見る町おこしの真実。」なんてぜひ読んでみたいところですね。

平尾さんと金井先生は平尾さんの著書「「日本型」思考法ではもう勝てない」で対談しているので、そのつながりかと(「神戸つながり」というのもありそうですが)。平尾さん自身同志社大大学院の大学院総合政策科学研究科に行かれてスポーツマネジメントを研究していた記憶があります。

そう言えば平尾さんと同じ元ラグビー日本代表の大八木淳さんや元NECの川合レオさんも社会人として大学院に行かれていて、第一線で選手として活躍していた人達が引退後スポーツマネジメントを学んでいく事例が増えているように思います。

Posted by: くりおね | July 30, 2006 02:27 PM

訂正です。
大八木さんのお名前は「淳」ではなく「淳史」でした。失礼いたしました。

Posted by: くりおね | July 30, 2006 02:30 PM

くりおねさん、コメントありがとうございます。
スポーツ選手がそのマネジメントにかかわっていくこと自体は当然望ましいことだと思います。でも名選手だったから自動的にマネジメント能力も、というのはちょっとどうかなと。その意味で、選手だった方々にちゃんと学ぼうという動きがあるのは高く評価すべきことではないでしょうか。

Posted by: 山口 浩 | July 31, 2006 02:22 AM

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