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August 19, 2006

「返す」で済むわけないでしょ

一応、法学部の出なのだが、もともとのできの悪さに加えてまじめに勉強もせず、しかも卒業してもう何年もたっているから、ほとんど素人といっていいところまで戻っている。というか、完全に忘れてしまったのではないか。そうとでも考えないと納得がいかない。法律に詳しい方、ぜひ教えていただきたい。

あれは、横領か業務上横領かではないのか?

「あれ」とは、要するに「岐阜県の一部の部署で不正な会計処理があり、1億円を超えるプール金が県職員組合が管理する銀行口座に集められていたことが2006年8月5日の県議会で明らかになった。」という話。メモのために報道内容を整理すると、こう。

・裏金は、旅費や食糧費、消耗品費などの架空請求で作り、現金や預金で各課がプール。職員の飲食費やタクシー代、国の省庁への土産代や接待費などに使っていた。
・裏金作りは県情報公開条例施行(95年4月)直前の94年度まで組織的に行われ、94年度のピーク時点で総額約4億3000万円あった。
・2000年度末から01年度初めに、裏金の存在の表面化を避けるため、当時の森元恒雄副知事(現参院議員=比例代表)が組合への資金集約を指示した。知事公室長が出納長や総務部長と相談し、知事公室と総務部の次長が各課の予算担当者を呼び、組合口座への集約を指示した。
・森元恒雄副知事(当時)は、裏金の存在を公表しなかった理由について「知事への批判や職員の動揺が生じ、県庁全体が混乱する」とし、非公表としたことは梶原拓前知事も了解していた、と述べた。これに対し梶原前知事は「具体的に掌握はしていなかったが、ありうるとは思っていた」としながらも「覚えはない」と自らの関与は否定した。
・組合に集約した時点で、裏金は県分約2億1100万円、県教委分約2900万円など計約2億6500万円残っていた。
・各部署は現金を直接、組合に渡し、預かり証などの発行もなかった。
・裏金のうち、組合の会合や労組との交流の飲食費などの活動経費や職員への生活資金の貸付金などに約1億1100万円が流用された。
・梶原拓前知事も、裏金を原資に、職員組合が設けた訴訟費用の貸付制度を、自ら利用した。うち700万円は今も未返済となっている。
・組合は、2005年3月から同県可児市で開催された「花フェスタ2005ぎふ」など、県や企業の主催したイベントの協賛金として約200万円、チケット代として約900万円を裏金から支払った。
・また、裏金のうち約700万円が職員個人の訴訟費用に流用された。
・裏金が入金されたとみられる口座の現在の残高は計約1億4600万円。
・一部の部署では組合に裏金を移さなかった。その額は少なくとも約1億9900万円あった。
・集約されなかった裏金のうち、約6500万円は99年以降に職場のパソコン購入費やユニセフなどへの寄付、飲食費などに流用された。
・集約されなかった裏金のうち、約1億1400万円は現在も各課やOBも含む職員が保有している。
・集約されなかった裏金のうち、計約500万円分の紙幣や硬貨を焼いたり、ごみに交ぜて捨てた。
・集約されなかった裏金のうち、残り約1000万円の使途は不明。(金額が合わんが)
・原正之副知事をリーダーとする県の調査チームが調査にあたり、結果を県議会に報告した。
・県は弁護士3 人による「プール資金問題検討委員会」を設置。今後は同検討委が調査を進め、8月下旬に再発防止策を県に提言する予定となっている。
・組合の三浦孝雄委員長は「(裏金は)公金だから返すのが当然。不足分は組合で負担する」と発言した。
・同県内の市民グループは、梶原拓前知事が同組合に行っていた寄付が公職選挙法違反(寄付行為)に当たるとして、県警に告発状を提出した。また、同組合と歴代の組合委員長3人についても、無登録で職員らに貸付をしたとして、貸金業法違反(無登録営業)容疑で告発状を提出した。

記事にはあらかた目を通したつもりなのだが、横領関連に触れたものはどうも見当たらない。私は何かとんでもない考えちがいをしているのだろうか。

念のため、条文を読んでみる。横領罪は刑法第252条、業務上横領罪は第253条に定められている。条文はこれ

(横領)
第二百五十二条  自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。
2  自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。
(業務上横領)
第二百五十三条  業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

よくわからないが、組合に保管させることを指示した行為は、他人のものを勝手に「処分」したのだから「横領」にあたらないか?少なくともそのプールされた裏金、プールされなかった裏金を使ったものはすべて「横領」だよね?飲み食いだけでなく、業務用パソコンを買おうが寄付しようが捨てようが「横領」にはちがいないよね?後で返すかどうかは、犯罪の成立には関係ないよね?当時の副知事やら県幹部やらは、公金支出の直接の権限者ではないのかもしれないが、少なくとも教唆はしてるはずだよね?

記憶が正しければ、横領罪の時効は5年、業務上横領罪の時効は7年。「業務上」ならまだ間に合う。

そういえば、秘書給与流用問題で詐欺として逮捕された国会議員がいたよなぁ(追記:社民党の辻元清美議員。他にもいたっけ?)。あれと比べて今回のケースはどうなんだろうか。もとは公金だった裏金として飲み食いに使うことを目的として支出させたのなら、これも詐欺罪(刑法第246条)ではないかと思うのだが(これも10年以下の懲役だから変わんないか)。それから、支出のための文書作成も虚偽公文書等作成(刑法第156条)にあたったりしないのか?(こっちはもう時効かな?)とか。どれかにはあたりそうな気がするんだが、これって素人考えか?

要するにだ。以上のような考えがもし正しいとするなら、これは「弁護士3 人による検討委員会を設置」とか(弁護士じゃなくて検察だろうよ?)、「返すのが当然」とか(返してすむなら警察はいらないって子供に言われるよ?)、そういう問題ではない、と思うのだ。「副知事をリーダーとする県の調査チームが調査」、なんて「ありえねー」って大合唱されるよ?証拠隠滅される前に踏み込む、のがセオリーなんでしょ?検察の皆さん。

なのに、なんかそういう方向には行かなそうな雰囲気もちらちら。というか、マスコミの扱いの小ささはいったい。なんで?わからない。とにかく、わからない。本気でもう降参。詳しい方、ぜひ教えていただきたい。

補足。私は岐阜県に住んではいないが、利害関係はある。岐阜県の平成18年度一般会計歳入予算7707億円のうち、地方交付税1773億円、国庫支出金846億円、地方譲与税400億円は国から出ている。私の税金だってわずかながら入っているのだ。きっと前からこうだったんだろうから、裏金にも国の金が入ってるはず。国に「税金返せ」とかつまんないことをいうつもりはないが、これは県民だけではなく、全国民に関係のある問題だ、ということは声を大にして言いたい。もし刑法的にはお咎めなしだったとしても、こっちは別問題。増税しようっていうからには、こういうのは見逃さないよね?よね?財務省の皆さん。

とにかく、関係する皆さんの「適切な対処」を期待。そこんとこよろしく。

※2006/8/19追記
はてブのコメントに従って「週刊!木村剛」の「[ゴーログ] 公金を横領しても、お役人は逮捕されない」にトラックバック。これも素人考えだが、ひょっとして、横領にするためには、岐阜県とかが被害届を出さなきゃいけない、なんて事情があったりするんだろうか。まさか、被害届を出してない、なんてことがありうるんだろうか?

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