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September 17, 2006

ほめる技術

ブログをやっているなどというと、「これから始める人に何かアドバイスを」などといわれることがある。もちろん、たいていは社交辞令だ。それでも、聞かれた側はそれなりに一生懸命考えて答えたりしなければならない。そんないい知恵があるなら自分だって教えてもらいたいね、とか思いながら。

そんなときのために、ひとことですむ簡単な模範回答みたいなものがないだろうか、と考えたことがある。

もとより個人ブログに「こうすべき」みたいなルールなどない。個人の表現行為だ。犯罪になるのはまずいが、基本的には「好きなようにやればいい」のだ。ということを前提として。

Bartle (2004)によるオンラインゲームプレーヤーの4分類というのがあるが、それを流用すれば、やはりブロガーにも4つの類型があるのだろう。
 (1)Achievers(自分の目標の達成のために活動)
 (2)Socializers(他人と交流するために活動)
 (3)Explorers (新しい知識を得るために活動)
 (4)Killers(他人を攻撃するために活動)
Bartleの分析は、この後コミュニティの中でこれらの4タイプがどう分布してるとどうとかいう話に進むのだが、長くなるので別の機会に。この分類はブロガーにもけっこうあてはまると思う。要するに、いろいろなタイプのブロガーがいるわけで、自分がどんなタイプであるかによって、活動の内容は自ずとちがってくるはずだ。

まあこれでは何のアドバイスにもならないので、自分なりに考えた。私としては、やはり楽しくやるのが一番だと思う。で、問題は何が楽しいかだが、一部の例外的な人を除けば、他人ともめごとを起こせば、たいていの場合、気分が悪くなる。無理をする必要はないが、もめごとは、なければないほうがいい。

そういう観点から、これまでは、「面と向かって言えないことを書いてはいけない」と答えることにしていた。面と向かうと、ふつうあまりひどいことはいえないからだ。しかし、面と向かってかなりのことを言える人というのも世の中には存在することを最近学んだ。これではどうもだめだ。

というわけで、今はとりあえず、「けなすな、ほめよ」というふうに言おうかな、と思っている。これからブログを始める人をいきなり「戦場」に放り込むわけにもいくまい。まずはポジティブなやりとりから始めるのが無難だろう。何か書くなら、ほめたいものを書く。それだけで万全とはいかないが、少なくとも、妙な批判を浴びたりするリスクは多少小さくなるはずだ。

といっても、ほめるのは、意外に難しかったりする。ポイントをはずすと、ほめたことにならなかったりするし。そういえば、世の中には、「ほめる技術」の専門家という類の人がいる。コーチングをやってる人たちは、「ほめる」というより「励ます」なのかもしれないが、かなりの程度「ほめるプロ」といっていいのではないだろうか。それと、幇間の方々も。これはまさに「ほめるプロ」ではないかと思う。不勉強でまだ私は読んでいないが、こういう方々の本を読めば、役に立つかもしれない。


ただし、これらはいずれも「対面」の場合だから、ネットでのコミュニケーションにどれだけ役に立つかどうかは定かでない。

ともあれ、うまくほめられれば、人を幸せにできる。素人はそこまでできないかもしれないが、少なくとも悪い気分にはさせない可能性が充分にある。というわけで、これからブログを始める人には、まずほめる方を練習することをお勧めする。

私が考える最も簡単でそこそこ効果的なほめ方は、「好き」と言うことだ。たとえば私はカニよりカニかまが好きだったりするが、カニよりカニかまのほうが優れた食べ物であるとか美味であるとかいう主張は、客観性がないし、理解が得られないおそれが強い。しかし「私はカニかまのほうが好きだ」ならば、文句はいえない。好みに優劣はないからだ。カニかまが私に好かれて機嫌よくなっているかどうかは知らないが、まあ彼らも人気商売だから、心があるならよほどのことがない限り悪くは思わないだろう。だから、何を書いたらいいかわからないときは、自分が好きなものを「好き」と書くのが一番安全なのではないか。それに、自分が好きなものについて書くことは、たいていの場合楽しいし。

一方、けなすのは、ほめるよりはるかに難しい。けなすことばを発信すること自体は容易だが、よほど気をつけないとあっという間に「ダークサイド」に身を落としてしまうからだ。単に相手を傷つけたり貶めたりするためだけの文章はまず論外。言論に対して言論で返さず、その書き手自身の人格やら身体的特徴やらを中傷するのもだめだ。他人の言論を引用して客観性を装う中傷も同類といえる。そういうことをやっても、相手を説得したり自分の主張を通したりすることはできないし、かえって自分の価値を大きく落とすことになるのだが、ついやってしまいがちになる。

けなすことばが「ダークサイド」に陥りやすいのは、相手を貶めたいという「闇」の意思に動かされやすくなるからだ。人間は誰でもダークな側面を持つ存在だが、それをことばとして発すると、それが自分にも返ってくる。自分が発した「闇」のことばが、逆に自分に「闇の意思」を植えつけてしまうのだ。大声でどなっていると、だんだん怒りが増してくる、なんて経験はないだろうか。文章でも同じだと思う。Yodaのことばを借りよう。

"But beware. Anger, fear, aggression. The dark side are they. Once you start down the dark path, forever will it dominate your destiny."

しかし、けなすことの最も深刻な問題は、けなした分だけ自分が腐っていくことだ。トンデモ風にいえば、マイナスのエネルギーを発していると自分にもダメージを与える、といった感じだろうか。しばらくは自分のことばが持つ「力」に酔いしれるかもしれないが、やがてじわじわと闇に冒されていく。そうこうしているうちに痛みも感じなくなり、身が朽ちるのにも気づかなくなるらしい。私も、自分の中にある「闇の意思」に動かされてついやってしまうことがあるが、そのたびに自分が少し腐ってしまったという自覚がある。私の「剣」などこんにゃくしか斬れないなまくらだが、たとえそれが「鉄が斬れる剣」であったとしても、つまらぬものを斬れば劣化するのだ。

聞くところによると、「けなす技術」の専門家と称される方もいるらしい。自らの評判を落とし、精神を蝕む「腐海」にあえて身を沈め続けるのはさぞかし苦しかろう。気高い自己犠牲の精神に基づくノブレス・オブリージュなのであろうから、尊敬の念を禁じえないが、これは誰でもができることではない。これからブログを始める方は、わざわざ身を犠牲にするようなまねはしないほうがいい、と申し上げたい。ダークサイドは、外からみると、ときに魅力的に見える。注意していても、つい落ちてしまうことがある。だからこの文章は、他人事ではないという自戒とともに書いている。

というわけで、ここしばらくは、人に聞かれたら「けなすな、ほめよ」でいってみたいと思う。

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Comments

面白いですね!
ご無沙汰しています。
4分類というのも面白い、山口さんの場合は面白がりつつExplorersですね。。

最近は言葉の威力(話すことも書くことも)を身にしみて感じます。毎日過ごす時間の質が、自分の発する言葉で操作してるかんじ。

ダークサイドのヨーダの話は爆笑。そこでヨーダですか(笑)しかも深い。

知的でポジティブな刺激のあるブログをこれからも楽しませていただきまーす♪

Posted by: マッキー | September 17, 2006 11:39 PM

マッキーさん、コメントありがとうございます。
あの4分類は、オンラインゲーム研究の分野では有名なものです。ゲームに限らず、「仮想世界」における人間の振る舞いの類型化に使えるかもと思っていました。ブログにはけっこうあてはまりますよね。
ヨーダは私の尊敬する人物(?)です。他にもいろいろいいことばがありますよ。

Posted by: 山口 浩 | September 18, 2006 09:57 AM

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