NABEが新しい予測方式の実験をしている
National Association of Business Economics(NABE)が、pari-mutuel bettingを使って雇用の予測を行う実験をやっている、というリリースが流れていた。
実験はカリフォルニア工科大学のCharles Plott教授がデザインしたもので、今回行われたのは9月の非農業部門雇用者増。NABEだから参加者は経済の専門家23人。9月の雇用増としてありうる数字が範囲として選択肢に設定され、参加者は与えられた予算内で「チケット」を買い、ありうると思う予測にそれを投ずる。予測を1点に絞るのではなく範囲として、しかも重みづけをして行うわけだ。目的はというと、Chris Varvares氏(president of Macroeconomic Advisers)の言を借りればこう。
“overall objective is to get a consensus view from the NABE Outlook panel of the entire probability distribution of possible outcomes rather than just an average of forecast modes.”
要するに、予測を「点」ではなく「分布」として行いたい、ということ。
10月4日時点で行った実験の結果はこんな具合だったようだ。最もありうると考えられたのは100~124千人のレンジでだいたい25%の確率。平均もこのレンジにあって121千人。ちなみに今年の平均は127千人、直近4ヶ月に絞ると102千人。結果として、だいたい75%の確率で9月の雇用増は 75~174千人と予想されたことになる。ちなみに、Bloombergにあるコンセンサス推計による雇用増を比較可能なように修正すると、80~115千人にあたるらしい。
実際にはこの実験は2回目らしい。今後も続けていくとのこと。将来は?というと、NABEの副会長でチーフエコノミストのEllen Hughes-Cromwick氏(Ford Motor Company)によればこう。
“We believe that this experimental approach to forecasting is potentially a useful and valuable addition to the NABE Outlook Survey, a quarterly consensus macroeconomic forecast of 50 NABE members, . . ”
リリースを読む限り、いったん投じた「bet」を取引するセカンダリーマーケットはなさそうだから、予測市場とは異なる。以前私がトライした「予測投票」に少し近い、といえなくもないか。NABEのエコノミストたちにとって、「市場」はまだハードルが高いのかもしれない。日本だと、社団法人経済企画協会がやってるESPフォーキャスト調査を補完するものとして、可能性があるかもしれない。
ともあれ、継続していくというのは何より。今後も要注目とみた。
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Comments
http://www7.tok2.com/home/aaaaaaaaaaa/cgi-bin/ft.cgi
で自分が政党議席数について行ってる方式と似てるなー。
こっちは別の事情で確率分布を扱うことになったけど。
Posted by: A-11 | June 17, 2007 08:34 PM
A-11さん、コメントありがとうございます。
値をレンジで切ってparimutuel betにするタイプの確率分布型予測市場は、ずいぶん前からNewsFuturesで行われています。これを使ってボラティリティを推測するという話を今度筑波大学で出してる「ビジネスの数理」シリーズの新刊に書きました。
Posted by: 山口 浩 | June 18, 2007 01:54 AM