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October 16, 2006

なぜ国がNHKに口を出すのか

世の中、一見当然みたいなのによく考えるとわからなくなったりすることがいろいろとある。その1つがこれ。なんだそんなことあたりまえじゃんという人も多いんだろうけど。

なぜ政府がNHKに口を出せるのだろうか。

放送法をみてみる。政府がNHKに口を出せるのは、直接的なものとしては、今話題になってる放送法第33条。

(国際放送等の実施の命令等)
第三十三条 総務大臣は、協会に対し、放送区域、放送事項その他必要な事項を指定して国際放送を行うべきことを命じ、又は委託して放送をさせる区域、委託放送事項その他必要な事項を指定して委託協会国際放送業務を行うべきことを命ずることができる。
2 協会は、前項の国際放送の放送番組の外国における送信を外国放送事業者に委託する場合において、必要と認めるときは、当該外国放送事業者との間の協定に基づきその者に係る中継国際放送を行うことができる。
3 第9条第7項の規定は、前項の協定に準用する。この場合において、同条第7項中「又は変更し」とあるのは、「変更し、又は廃止し」と読み替えるものとする。

これは国際放送とかの場合。「ほんとにやるのか」と話題になってるぐらいで、本来かなり「特殊」な事例と思うので、以下では、この問題は扱わない。

そうでない部分、一般論として国がNHKに口を出すというのは、突き詰めればNHKの予算が毎年国会で審議され、承認を受けなければならない、ということに起因するといっていいだろう。

予算に国会の承認を必要とする根拠は第37条。

(収支予算、事業計画及び資金計画)
第三十七条  協会は、毎事業年度の収支予算、事業計画及び資金計画を作成し、総務大臣に提出しなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2  総務大臣が前項の収支予算、事業計画及び資金計画を受理したときは、これを検討して意見を附し、内閣を経て国会に提出し、その承認を受けなければならない。
3  前項の収支予算、事業計画及び資金計画に同項の規定によりこれを変更すべき旨の意見が附してあるときは、国会の委員会は、協会の意見を徴するものとする。
4  第三十二条第一項本文の規定により契約を締結した者から徴収する受信料の月額は、国会が、第一項の収支予算を承認することによつて、定める。

要するに、毎年度の予算や計画を事前に承認されなければならない、ということ。このほか、第37条の2には承認が間に合わなかった場合の措置、第38条には事業年度終了後の業務報告書の提出なんかが決められている。

ふうんそうかしかたないよな、と思ったりしそうなのだが、やはりひっかかる。なぜか。ひっかかるところを列挙してみる。

1 政府の資金に依存しているわけではない
「みなさまのNHK」とよくいうが、NHKの運営費用は受信料収入によって支えられているというニュアンスがある。
実際その通りで、平成17年度業務報告書をみると、

経常事業収入 674,946百万円
 うち受信料  663,515百万円
 うち交付金収入 2,497百万円
 うち副次収入  8,933百万円

交付金というのが政府からの収入だが、これは国際放送と選挙放送のために、放送法第33条、第35条や公職選挙法第150条、第151条、第263条、第264条なんかで定められたもの。要するに必要があって法律で決められた仕事をするためにもらっているお金であって、いってみれば業務の対価だから、これゆえに全般にわたって政府のいうことを聞かねばならない、というのはなんだかちょっと変な気がする。しかもこれは金額でいえば、経常事業収入全体の0.4%にも満たない。ちなみに副次収入は「放送番組の多角的活用、放送番組テキストの出版、技術協力、特許実施料による収入等」「受託業務等勘定の事業支出及び事業収支差金からの受入れ」なんて書いてあって、政府からの金ではない。つまり、採算という面でいえば、NHKは政府からの金に依存しているわけではない。

2 国会で審議する必要があるのか
NHKだけが受信料の徴収を認められているということ自体が特権だ。だから政府の監督を受けるのは当然だ、という考え方もあろう。確かに、特権的立場にある以上、なんらかの意味で監視されなければならないのは当然だと思う。しかしそれが「国会」という場で直接審議する、というところまで必要なのか。そうでなくても予算審議中の国会議員は忙しい。実際に支出する費用の使い道は上記のように国際放送とか選挙放送とか。今は国際放送が話題になってるからそういうのを議論するのはいいと思うのだが、一般的にいえば、これが国会議員の他の仕事と比べて重要度が高いとは質的にも金額的にも正直いいにくい。実際、議論されている内容はこの程度なのだ。国会でわざわざ審議する必要があるのかどうか。せっかく経営委員会やら放送番組審議会やらを設けているのだから、もっとそうした機関を利用すればよいのではないかと思う。

もちろん、国会で議論しているのは交付金の支出の是非ではなく、NHKの事業計画の全体なわけだ。公共放送は社会にとって重要な存在だし、今は技術的にも社会的にもそのあり方を問われる時代だから、国会で議論すること自体を批判するつもりはないが、それにしたって、予算を「人質」にとるやり方はいかがなものか。放送法第1条で「不偏不党」を謳う以上、政治家が口を出す機会を最小限に抑えるのがこの法の精神というものではないかと思うのだがどうなんだろう。NHKが「みなさまのNHK」であるならば、意見を聞くべきは政治家ではなく国民のはずだ。政治家は国民の代表、なんていうのは方便にもならない。国民にとってのメディアの主な役割の1つは権力の監視にある。政治家はむしろ口を出される方ではないのか。

わからない。どうしてもわからない。

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