人はシートベルトのない車に乗る権利がある
人はシートベルトのない車に乗る権利がある、というようなことを言った人がいる。シートベルトのない車は、シートベルトのある車と比べて安全ではないだろうが、価格は安いだろう。消費者は、どちらがいいか、考えて決めればいい。それは選択の自由だ、と。
うろ覚えだが、とても印象的だったので、記憶ちがいではないと思う。安全基準なんてものは政府の干渉にすぎない、というわけ。市場を信じない人は民主主義を信じていないのだ、とも言っていたと思う。なんと極論を、と思うと同時に、なるほどそういう考え方もあるよな、とも思ってしまう不思議な説得力があった。理論面での貢献もさることながら(いわずもがなだが、この人がノーベル賞をとったのはこっちのほうでだ)、世間的には冒頭に挙げたような数々の大胆かつ独創的な「提言」のほうが有名。それらがそのまま取り入れられたことはあまりなかったかもしれないが、多少なりと影響を受けたものは数知れない。今も極東のとある島国で教育バウチャーの議論をしてたりするし。
ともあれ、合掌。
※2006年11月19日追記
シートベルトのない車というのは、この人が挙げたひとつの例。私の拙い文章だと、どこに説得力があるのか、たぶんわからないだろう。まだこの人の文章を読んだことのない人は、ぜひ一読をお勧め。テレビか何かで見かけた、この人のしゃべり方がそっくり写しとられたような不思議な迫力のある文章。暴論とさえ思える極端な議論も、素人の思い及ばない高いレベルでの思索に基づいた彼なりの選択であったことがわかる。この人が最も活躍した当時、経済学の分野でも「冷戦」が真っ盛りであったこと等も想起しつつ読まれるとさらに理解が深まるのではないかと思う。
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Comments
米国産牛肉論争にしても似てますね。安全を徹底しようとすれば結局何らかのコストがかかるわけで。自由と平等の関係もそうで、何だかんだ言っても結局はトレードオフなんだと思います。日本人にはわりとそういう感覚が欠如してるような気もするんですが。
Posted by: すなふきん | November 18, 2006 07:57 PM
すなふきんさん、コメントありがとうございます。
つきつめると結局、自立とか自律とか、そういうあたりの話なんだろうと思います。
Posted by: 山口 浩 | November 19, 2006 03:54 AM
一言。シートベルトって本体に比べて安過ぎて話にならんという話。
Posted by: 佐藤秀 | November 19, 2006 09:34 PM
佐藤秀さん、コメントありがとうございます。
一言。おわかりと思いますが、シートベルトの話そのものが本題ではありません。
Posted by: 山口 浩 | November 19, 2006 09:38 PM