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November 07, 2006

いきいきと働いてるやつなんて見たことがない、という話

小ネタ。「いきいきと」、ということばがある。あれがどうも苦手というかしっくりこないというか。ひらたくいえば、きらいだ。

「いきいきと」をグーグルで検索すると約860万件ヒットした(トップが「いきいきとやまドライブマップ」なのはなんともおかしかったりするが)。それほど世に蔓延している「いきいき症候群」なわけだが、いったい自分は「いきいき」の何が嫌いなのか、ずっとわからなかった。申し訳なくも思っていた。みんな「いきいき」したがってるのに、自分だけ嫌ってどうする。どうしてお前はそんなにひねくれてるんだ、と。で、少しだけ考えてみることにしたわけだ。

まず、「いきいき」を辞書を引くと、こんなふうに出ている。

(1)新鮮で生気があふれているさま。 「―した目」「―(と)描写する」
(2)元気で、活気のあるさま。 「―(と)した表情」

別に、人が新鮮で生気があふれていようと、元気で活気があろうと文句はない。

上記のグーグル検索で、「いきいきと」何をしてるかをみると、いきいきと暮らす、いきいきと働く、いきいきと生きる、いきいきと活躍する、いきいきと活動する、などといろいろ。

なんか、どうも気になる。特に、「いきいきと働く」が。申し訳ないが、どこかかちんとくる。いったいなんだろう。

しばらく考えて思い出したのが、あれだ。

テレビなんかで見る、「いきいきと働いている人」の顔。ぱっと思い出したのはコムスンのCMに出てくるヘルパーさんだが、もちろんコムスンにも介護ヘルパーさんにも別に悪い感情を持っているわけではないし、他にもたくさん例はあると思う。要するに、「いきいきと働いている」ということを表現する演技のしかただ。なんであんなにニコニコしてるんだろうか?1人で自転車こぎながらニコニコしてるなんて、変じゃん。実際に街で会ったら、こわいよ?

テレビドラマ(ほとんど見ないけど、予告編なんかでもある)かなんかでも、なんか同様の「いきいきと働いてる」演技というのをよくみかける。みんな、ニコニコしながら歩いてる。なぜかたいてい肩掛けカバンで、途中で立ち止まって掛けなおしたりする。やっぱり、変だ。あれが「いきいき」なら、世の中にいきいきと働いてる人なんて、ほとんどいない。だって見ないでしょ?街でニコニコしながら歩いてる人なんて。

で、さらに妄想は進む。

実際にニコニコするかどうかは別として、なんで「いきいきと」が「ニコニコと」に翻訳されるのだろうか。「いきいきと働く」は「楽しく働く」ことなのか?「楽しく」は「いつもニコニコ」なのか?「働く」ことって、そんなに手放しで楽しいか?

もちろん充実した仕事をしてる人はたくさんいるし、そういう人はきっと「仕事が楽しい」と思っているだろう。仕事中に笑ったりすることだってたくさんあるだろう。それはいい。でも、人間、真剣に働いていれば、いやなこともつらいこともばかばかしいと思うこともいっぱいあるはず。やってらんねぇよ、みたいに投げ出したくなることだって少なくないと思う。「働く」ってそういうことじゃないだろうか。そういうもろもろも含めての「充実している」なんじゃないだろうか。

個人的な思い込みで申し訳ないが、「いきいき」には、そういうのを全部はしょって、楽しいことばっかりですぅ、私、輝いてますぅ、みたいな能天気な響きがあるような気がする。少なくとも私は、自分自身も含めて、自分はいきいきと働いてます、なんていう人に会ったことがない。まあいろいろあるけどさ、それなりに楽しいよ、みたいなのならわかるんだが。似たような気持ちの方がけっこういるからではないか、と想像するのだがどうだろう。

実はもうひとつ、「いきいき」に必ずついて回る「自分らしさ」への強迫観念みたいなものに対する嫌悪感もあるということに気づいたんだが、長くなるので別の機会に。

想像だが、この人もきっと、自分が「いきいきと働いてる」なんて言わない、と思う。

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