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December 18, 2006

外部監査を集団知でできるだろうか

しばらく前に、東京都目黒区で政務調査費の不正流用が発覚、公明党議員団6名全員と自民党の区議会議長が辞職した、というがあった。抱き枕だの、洗車代だの、目黒で走行する沖縄のタクシー領収書だの、なかなか興味深い使途だが、これも税金なわけで、あまり鷹揚に構えているわけにもいかない。秘書給与の目的外使用をやって詐欺として逮捕された国会議員がいたことを多くの人たちが覚えているはずだ。

こういう話があると、外部監査を徹底的にやれという議論があるわけだが、一方でそれはお金がかかるしという意見もあったりする。そこでというわけで、いつもの妄想的思いつき。

この件に関連して、区議会のとある自民党議員から区民に対して出された手紙というのが今手元にある。「お詫びと共に、私の提言と決意」と題したA4版2枚。こんなことが書いてある。

はじめに、目黒区議会の不祥事による恥じは、目黒区の恥じであり区民の皆様全てに負わせたご迷惑であったと思っています。

「恥じ」とはさぞかし恥ずかしいだろう。あんまり恥ずかしくて読み返さなかったんだろうな。この議員は後援会の人たちをバスハイクに連れていった際のバス代、高速代、施設利用料約16万円だかを返還したそうだ。自民党都連本部役員のアドバイスと区議会事務局の見解を聞いた、という「説明」もしっかり書いてある。抱き枕よりはずっとましな理由だし、特にこれについてどうこういうつもりはないのだが。

気になったのは以下のくだり。

外部監査の導入を図れとの声については、多大な予算が必要となります。昨年実施された区の外部監査費用は約490万円でした。同様の予算が必要になり経費削減に逆行します。上記1~4で対応できると思いますが如何でしょうか。

「上記1~4」というのは、今後の対応として、

1. 領収書は原本を添付し写しと共に提出し、報告書は提出前に外部スタッフのチェクを受ける

2. 使途基準は第3者に諮問して見直し・検討をする

3. 前記・後期と分けて、前期は10月中に中間報告をし、後期は4月に年間として報告する

4. 事務局スタッフを強化してチェック体制を整える。同時に監査事務局の監査も強化する

としているものを指すらしい。なるほど外部監査は大変なのね、と思わせたいのだろうが、外部スタッフのチェク(この種の文書でこういうタイポエラーはほんとに恥ずかしいね)とはどうちがうんだろうかとか、そういうコストは惜しむべきではないとか、そもそも目黒区の平成18年度予算の一般会計は850億円ぐらい、政務調査費も1人年間204万円、合計で約7,300万円あるわけで、そのうちの490万円ぐらい割いてもいいのではないかとか、いろいろあるのでどうも腑に落ちない。

とはいえ。

コスト面でどうしても外部監査を受けたくないというなら、1つ提案がある。政務調査費の請求内容を、領収証とともに公開してしまえばいい。ネットであれば、ほとんどコストを使わずにほぼすべての支出をガラス張りにできる。興味を持った人なら誰でもチェックを行えるようにしてしまうのだ。外部監査を「集団知」で、なんていうと聞こえが少しはいいかも。

誰が好き好んでそんなことを、なんていう心配はいらない。今回だって市民オンブズマンという「物好き」な人々がいたわけだし、選挙のたびに相手陣営が隅から隅までチェックしてくれるし。たとえ実際にチェックはされなくても、チェックされうる状態にするということだけで効果は期待できる。まさか、公開できないような使い方はしてないよね?なら問題ないはず。いやだっていうなら理由をぜひ説明してもらいたい。

制度を新しく作ろうとか新しいことを慣習化しようとかするとそれ自体でいろいろコストやら手間やらがかかってたいへんなわけだが、自分で公開してしまうなら誰も文句をいわないだろう。なんせ「大変申し訳ない事と心よりお詫び申し上げます」だそうだから、異存などあろうはずもなかろうし。1人がやれば、他の人も世間体的に追随せざるを得なくなる可能性がある。先頭を切れば目立つよ。

反省する気があるなら、区民に手紙を送りつける(これ自体相当のコストだろう)くらいなら、このくらいはやってみてはどうか。なんせ「選良」なんだし。

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Comments

いつも楽しく拝読しております。

今回の「妄想的思いつき」、すばらしい案ではないでしょうか。1目黒区民、1ネット市民として賛成です。

目黒区への政策提言をオフィシャルにしてくださいませ。

Posted by: 佐藤 純 | December 18, 2006 01:56 AM

 この議員さんは政務調査費はつかみの金で、何に使ってもいいと思っていたようですね。
 とりあえず、政務調査費は区民の皆さんが使途を知ろうと思えばすぐに知ることが出来る状況にあればいいと思います。与党議員には共産党系の議員から共産党系の議員には与党系の議員からチェックが入るでしょうから。

Posted by: こんなこといってもいいの? | December 18, 2006 12:44 PM

はじめまして。

僕も今回のご提案に賛成です!

知的好奇心をくすぐるブログで、
これからも興味深く拝読させていただきます。

Posted by: @風俗的!総合研究所 モリコウスケ | December 18, 2006 12:58 PM

コメントありがとうございます。

佐藤 純さん
そうしたいところです。うまいルートがあればいいんですが。

こんなこといってもいいの?さん
きっと、これまで誰も深く考えてこなかったのだろうと思います。手紙をよこした議員さんも確かめたうえでこの使途に使ったようですし、チェックされるとわかっていたら、抱き枕の領収証を出す人はいないでしょうからね。私は、監査よりも公開のほうが安くて効果的ではないかと思っています。

@風俗的!総合研究所 モリコウスケさん
ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。

Posted by: 山口 浩 | December 18, 2006 04:50 PM

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