「美しい国」の真髄5選
今年から、「美しい国」作りのアイデアを国民から募集するプロジェクトが始まるらしい。2006年12月31日付の讀賣新聞に出ていたのだが、「首相がイメージする『美しい国』に、具体的なイメージがわかないとの指摘も多く、コンクールなどを通じて国民から直接アイデアを募ろうという試み」だそうだ。
人に聞くのかよ自分の旗印だろうがという声も聞こえてきそうだが、外部の意見を聞こうということ自体は別にそう悪くもないだろう。
記事によると、計画の原案には、(1)将来も尊重すべき日本の伝統、文化、習慣などを国民からインターネットや郵便で募集する「日本の真髄100選」(2)「美しい国」を文章や絵画、写真で表現した作品を公募し、首相が表彰する「美しい国コンクール」(3)首相や閣僚らによる在日外国人との対話集会など、計7項目が盛り込まれている由。
「日本の真髄100選」。なんともすごいタイトルだが、こういうことらしい。
着物やゲタ、初詣でやおせち料理、ひな祭りや七五三などの伝統文化や慣習が候補として想定されそうだ。「新幹線」や「省エネ」など日本が誇る技術力、日本人の美徳や謙譲の精神の具体例なども含めて広く募集したい考えだ。
ふうんなんでもいいわけね。それなら私もというわけで、100は無理だが5つぐらい考えてみた。
(1)談合
和を以て貴しとなすお国柄。1人勝ちは嫌われる。対決や競争は形式として必要だが、それで実際に決めてしまっては角が立つ。ものごとをスムーズに進め、皆が満足するために、関係者があらかじめ打ち合わせておいて、互いに譲り合って利得を適度に配分するのがよい。温かい互助の精神とともに、いくら「決別」しても「撲滅」してもよみがえるしたたかさを兼ね備えているあたり、まさに「日本の真髄」にふさわしい。
(2)美辞麗句
日本が誇るべきものといえば、日本語を欠くことはできない。美しい日本語といえば、美辞麗句。なんだかいいイメージで期待をかきたてつつ、何も言質を与えない手堅さが頼もしい。かつては「前向きに善処いたしたい」でよかったが、今はさらに進化して「しっかり実行してまいりたい」が流行り。戦略に裏打ちされていないので外交の場では通用しないのが玉に瑕だが、だからこそ「日本の真髄」なわけで。
(3)妥協
他人と意見が異なることはよくあるが、たいていの場合、原理原則などしょせんは利害の衝突にすぎない。自らの主張に固執して突っ張りあっていては、互いに傷つくしものごとも解決しない。そのためには、何事も極端を避け、互いに譲りあわねば。足して2で割る謙譲の美徳こそが賢者の知恵だ。けんかした相手も謝ってきたら許して迎え入れるべきだし、名をとったら実を譲ってやるし。
(4)先送り
時はすべてを解決する。困ったときは時に解決を任せよう。「果報は寝て待て」というではないか。待っているうちに勝手に解決すればそれでよし、解決しなくてもいい。「すべて自分が」とでしゃばらず、大きな課題は残しておいて後任者に華を持たせるのも美徳の1つ。実際、全部自分でやろうとしてもどうせできないのだし、後任者がちがう意見ならその時点で反故にすればいいし。
(5)忘却
日本人の最終兵器はこれ。人の噂も75日。何があってもたいていのものは数ヶ月、長くても数年で忘れられる。たいていのものごとは、つきつめればたいていの人にとってどうでもいいことなのだ。どんなミスも犯罪も、しばらくたてば「そんなのもあったよねぇ」程度の扱いになる。思い出はすべからく美しいのだ。「美辞麗句」および「先送り」と組み合わせて使うとさらに効果が高い。
他にもたくさんありそうだが、まあこのへんで。
※2007/1/2追記
Bewaad Institute@Kasumigaseki「日本の真髄3選」は要チェック。私のよりはるかにブラックで奥が深い。
« やり残していないか | Main | 商人の「分」 »
The comments to this entry are closed.
Comments