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January 24, 2007

「グーグル革命」と「逆SEO」をめぐる極素人的妄想

2007年1月21日に放送されたNHKスペシャル「グーグル革命の衝撃」があちこちで話題になっている。初めて知ったという人も知ってることばかりじゃんという人も、「グーグルすごい」という人も「グーグルなんか」という人もいるが、総じていえば「グーグルすごい、でもちょっとこわい」みたいな感想が多いだろうか。もちろんそれは、番組自体がそう描いていたからでもあって、映像やらBGMやらも含めて、全体としてこわがらせようとする雰囲気を演出していたように思う。

で、見ながらつらつらととりとめもなく考えたんだが。

「こわい」というのは、要するにグーグルに情報の流れをすべて握られてしまうのではないか、そうなったらどうなってしまうのかみたいな話なわけだが、これには大きく分けて2つの類型があるように思う。「グーグルにすべてを握られてしまうのではないか」派と、「グーグルに無視されたら終わりだ」派だ。いいかえると、「グーグルに見つかりたくない」派と「グーグルに見つかりたい」派。番組にもこの2派が登場していた。

前から気づいていた人はきっとたくさんいると思うが、私はこのとき初めて気がついた。あれ?この2つって逆じゃん。どっちにとってもこわいっていうのはどういうことなんだろう。「見つかりたくない」派にとって、グーグルは「どこに隠れていても自分の情報を見つけ出して洗いざらいぶちまけてしまう恐ろしい存在」。「見つかりたい」派にとっては、グーグルは「どんなにがんばって目立とうとしても自分の情報を上位に表示してくれない恐ろしい存在」。どっちも同じアルゴリズムに基づいた検索結果なんだよね?

もちろん、それぞれちがった性質の話であることは理解しているつもりだ。探す側の観点からみると、この両者では情報を求める側の動機とか行動パターンがちがう。探される側の観点からみると、「見つかりたくない」派はたいてい個人で、ロングテールの先の先までいっても見つかりたくないわけだし、「見つかりたい」派はたいてい法人か事業者で、最初のページの上位5つまでに入らないと意味がないわけだし。だから、2つの「こわさ」が両立しうるのは別におかしくはない。それでも、全体と見渡してみると、どうもあちらでは「黒いからだめ」といいこちらでは「白いからだめ」という、みたいな感じに見えてしかたがないのだ。

で、素人の妄想が広がっていく。ふつうSEOというと、検索エンジンにつかまりやすいサイトの設計なんかをイメージするわけだが、逆方向のSEOというのはあるんだろうか。と思って「逆SEO」とか入れて検索してみると、けっこうひっかかる。似たようなことを考える人はたくさんいるわけで、逆にいうと私の考え方もそれほど奇天烈というほどでもないことになる。

とはいえ、「見つかりたくない」派の懸念は、自分のページの検索順位ではない。自分のサイトなら、そもそもひっかかりたくない情報はアクセス制限するとかすればいいわけだし。だから問題は、典型的には他人が了解なしにネット公開している自分の情報をどうするか、だ。こういうときにも使える逆SEOというのは別種のものになるんだろう。その他人の意図に反して自分の情報が出たページが検索エンジンにひっかからなくさせるわけだから、「敵対的逆SEO」とか呼べばいいんだろうか。よくわからないが、当然、対象ページ自体はいじれないわけだから、対象ページに対してグーグルのアルゴリズムが嫌いそうなリンクをいっぱい張る、みたいな感じなのかね。検索アルゴリズムが変わったら、その「見つかってほしくない情報」が思いっきり目立ってしまうかもしれない半ば「捨て身」の方法ではあるな。

そういえば、うろ覚えだが「ウェブ人間論」で、「見つかりたくない」派向けの対策として、有名人に似た名前をつければいいといった話を梅田さんがしていたように思う。これはページやらタグやらをどうこういじるというものではなく、自分そのものを見つかりにくくしてしまう方法だ。なんか忍者っぽいね。これも広義では逆SEOに入るんだろう。

ただ、大きくなった後本人が「見つかりたい」派になったらどうするんだ、という問題は残る。子の人生を左右するわけだからねぇ。そういえば、うろ覚えだが、「例のあの人」にちなんで「田中角栄」と名づけられた人が、その「例のあの人」の逮捕後、改名を裁判所に申し立てて認められたというケースがあったと思う。そういうリスクはある。となると、有名人の「陰」に隠れるより、ごくごく平凡な名前にしてたくさんの一般人の陰に隠れるほうがいいのかもしれない。日本人で最も多い名は「ひろし」だそうだから、苗字の平凡さも合わせて、私などは逆SEO的に比較的望ましい名前ということになるのだな。

さらに妄想は広がって、不安が出てくる。自分が「見つかりたい」派であるときに、他人からその「敵対的逆SEO」を食らったらどうなるか。それはたとえばネットビジネスの場合には営業妨害になるだろう。よく「アドセンス狩り」みたいな話を聞くが、よく似ているかも。しかしこれって狙われたらなかなか防ぎようがないよな。うーんどうすれば。

10秒ぐらい考えて、気がつく。この話はグーグルの「掌の上」の話だ。知らず知らず、選択肢がグーグルしかないような考えになっちゃってる。そうじゃない。グーグルは便利だし高機能だし安いし強力だしといろいろ優れているが、少なくとも今のところ、ネットの「すべてを支配」しているわけではない。情報の流れを「すべてコントロール」しているわけではない。

要するに、「グーグルすごい」と思っていると、いつのまにかすでに「グーグルがすべてを支配」しているかのような感覚に陥ってしまうのではなかろうか、といいたいわけだ。私たちがグーグルを使うのは、グーグルが優れているからであって、それがグーグルだからではない。もっといいサービスがあれば、すぐに皆乗り換える。そもそも10年前、グーグルはなかった。思い起こせば、そのころネット検索といえばヤフーだった(今でも日本ではヤフーのほうが有力だ)。私がグーグルに「乗り換え」たのはいつごろだったろう。確かに今グーグルは、すべてとはいわなくてもかなりの部分を「支配」しているかもしれない。しかしそれでも、将来その「支配」がそのまま続くとも限らないし、さらに強まるとも限らない。この10年間の変化を考えれば、10年後が今のままであると考えるほうがナイーブではなかろうか。

グーグルの「支配」がこわいと思う人は、せっせとグーグル以外を使ったらいいのではないか。グーグル以外を使っても意図に反してグーグルに見つかってしまうリスクは減らないだろうが、グーグル以外を使う人が増えれば少なくともグーグルを使う人が減るわけで、その分だけグーグルの検索結果にたどりつく人も減るのではないか。それに、グーグルが本物の「世界政府」とやらになってしまったりするのを防ぐことに少しは役立つだろうし。

それから、グーグルに見つけてもらえなくて困っている「見つかりたい」派も、せっせとグーグル以外を使ってみたらいいのではないか。たとえグーグルが見つけてくれなくても、他のところで見つけてもらえばいい。グーグルのやり方が「見つかりたい」側にとって必ずしも完全に望ましいものでないのだとすれば、そこにチャンスがあるはず、なんだろう。グーグルに有力な競争相手が出てきて(もうあるだろうが、もっともっと)競争が促進されれば、グーグル以外のところで自分が見つけてもらえるチャンスが増えるかもしれないし、グーグルのアルゴリズムも変わっていって、全体としてより望ましい状況が生まれるかもしれない。

もちろんどちらの不満もない人は、せっせとグーグルを使えばいい。「邪悪にならない」というポリシーを本気で掲げる企業はけっこう珍しいだろうから、他の企業より信頼できるという見方もある。それに、検索されて困るほどの情報はない、という人も少なくないだろう。正直なところ、そんなにこわがるのもどうよ、というのはけっこう説得力があるし、利便性のほうが勝ってるよね、という人はたくさんいるはずだ。

頭の中がぐちゃぐちゃになってきたので、このへんでやめる。上記は「どうあがいても素人」の発想だ。グーグルをこわがるべきなのか。実際のところ、よくわからない。プロの方、ご教示いただければ。

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Comments

見つかりたくない派ならGoogleに削除依頼だせばOKじゃないの?
そうすれば検索結果には出てこないでしょ?

Posted by: あえる | January 25, 2007 01:13 PM

あえるさん、コメントありがとうございます。
なるほどそうですよね。と納得しかけたんですが、考えてみると、削除依頼を出すというのは、望ましくない情報が公開されてからでないとできませんよね?私も本文でグーグルの嫌いそうなリンクをとか書いてますが、それもその意味では同じ。どちらにせよ、望ましくない情報の公開自体を止めることはできません。ことの性質からいうと、いったん公開されてしまったらアウト、という場合もあるでしょう。こういうときにはどうしたらいいんでしょうか?

Posted by: 山口 浩 | January 26, 2007 03:18 AM

本文とは、あまり関係ありませんが,

おめでとうございます
(と言ってもいいと思います..)

トップ40入りですね。

http://alphabloggers.com/modules/news/article.php?storyid=5

# google にみつかりやすいかと :)

Posted by: ひろん | January 26, 2007 02:55 PM

ひろんさん、コメントありがとうございます。
あらあら大変。というか、グーグル氏には以前から名前を知られておりますので、もはやいかんともしがたいですな。

Posted by: 山口 浩 | January 27, 2007 09:40 AM

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