学生のエッセイ その10
先日に引き続き、ゼミ選考のために集めた学生のエッセイ第10弾。今回は「信じるべきか、信じないべきか」な2本。
まずは1つめ。
「食」について by 名無しさん5号
私は日本食の代表ともいえる「納豆」について書きます。私が「納豆」について調べた理由は、大好きだからというのも勿論ですが、よく世間で体にいいと言われているので、何がどこによいのだろう?という疑問からです。 まず、よく耳にする言葉に腸内細菌があります。人の腸内には多くの種類の細菌がすみついています。人の腸内には約100兆個の腸内細菌がいます。その重さは、1キロにもなり、体重50キロの人の肝臓の質量が約1キロです。肝臓とほぼ同じ質量の細菌が腸の中で活躍しているのです。 腸内細菌は人の健康にとっても大切な働きをしています。消化を助けてくれたり、免疫力を強めてくれたり、ビタミンを作ってくれたり、働きはとても大きいのです。腸内細菌が乱れると、健康に支障が出てきます。 納豆菌で腸内細菌をコントロールすることができるのか?納豆菌は胞子を形成するため、過酷な環境下でも生き延びることができます。マイナス100℃でも死滅しません。 一般に乳酸菌は酸に弱く、胃酸のために死んでしまいます。乳酸菌は胃酸に耐える菌株を探すのが大変ですが、納豆菌は胃を楽々通過することができます。また、納豆菌には乳酸菌を増加・安定化させる効果があると考えられています。納豆が快便に効く理由は、便は50%から80%が腸内細菌とその死骸からなっていて、腸内細菌が活発に活動していると、いい便ができるのです。 数年前から、納豆菌ダイエットがブームになりました。納豆菌は一週間ほど腸内にすみつきます。なので、毎日でなくても納豆菌を補給し続けて、いつも腸内に納豆菌がいる状態を作ります。他の善玉菌も増えて安定化します。食物として食べた栄養を腸内細菌が餌として食べてくれるのでダイエットになるのです。 私も納豆菌について理解できたので、これを生かした健康な食生活を送りたいとおもいます。
来た来た納豆。昨年秋に出してもらったエッセイを今まで貯めておいたのがよかったのか悪かったのかわからないが、時節柄タッチーなテーマではある。エッセイの著者も私もこの内容の真偽について保証しないので、そのつもりでお読みいただきたい。このエッセイで注目しているのは腸内細菌。納豆菌が腸内環境にいい影響を及ぼすらしいことは、ずっと以前から知られていて、科学的検証も数多くされている。ただ、このエッセイのネタ元になっていそうなのはこれとかこれとかだろうか。この種の健康ものはわかりやすくていいんだが、どういう根拠かがはっきり示されないことが多くて困る。よくあるのは「AはB」で「BはC」だから「AはC」みたいな論法だが、ほんとは「AはB」にも「BはC」にもいくつも前提条件やら限定やらがついていて、単純に三段論法みたいには使えないという場合がよくある。
今回ちょっとネットをぱらぱらと調べたら、納豆菌が家畜の腸内環境をよくする効果もあって、というのがあった(これとか)。ふうんそうかと思ったのだが、よくみるとそれらは、家畜の「成育を助ける」ために使われているらしい。たとえば、柏岡・新居・森・山本(2005)「乾燥オカラ納豆菌の豚に対する投与効果」の要旨にはこう書かれている。
子豚については、BNオカラ3%飼料添加した場合、離乳以降の腸内納豆菌数は107CFU/gに増加し、大腸菌数は105CFU/g以下に減少した。また3%添加により離乳後下痢の発生が抑制され、離乳後の発育も良好に推移し、抗生物質の代替えとしての利用が期待された。
要するに、納豆を食べれば家畜がよく育つ、ということは肉付きがよくなる、・・・って体重増えちゃうじゃん!ダイエットと逆じゃん!でも当然だな家畜はダイエットしないし。…まあ、もちろん家畜の話はダイエットと直接結びつく話ではないのだろうが、これだけでも、「納豆ダイエット」なるものが仮にあるとしても、それは「納豆を食べさえすればやせる」という類のものでなかろうことは想像に難くない。こういう内容を書くと、このサイトにも健康食品関連のスパムトラックバックが山ほど来るのだが、皆さんご注意を。
ということで、2つめ。
現代の食べ合わせ by terry
「鰻と梅干し」。 食べ合わせが悪いと言い伝えられてきたこの食べ物を、あえて一緒に出す店が静岡県にある。「もともとはまかない料理として食べていたが、大丈夫だった。言い伝えを逆手にとったら面白いと思った。」と女将は言う。商品として出してからも、体調を崩した客はいないとのことだ。 では、一体食べ合わせの根拠はどこにあるのか。言い伝えを探っていくうちに、ある薬売りが関係しているようだ。富山県にある「富山の薬売り」だ。明治から昭和中期にかけて「売薬さん」が得意先に配ったチラシの記録が、富山市で富山の薬売りにまつわる資料を展示する富山市売薬資料館に残っている。 「此の画のやうに喰合すると中毒を起こします」。その隣に「鰻と梅干し」をはじめ、「天ぷらとスイカ」「牛乳とミカン」「マツタケとアサリ」「カニと氷水」などが並ぶ。 ある学芸員の調べでは、食べ合わせの例は約60種類にのぼるという。「明治以降、売薬さんたちの宣伝合戦が始まり、実用情報として食べ合わせの例を提供していた」と話している。 平安時代の医学書「医心方」(972年)に「猪肉と魚」など73例が登場。江戸時代には貝原益軒が「養生訓」(1713年)で「同食の禁忌」として「カニと柿」などをあげている。文献に載っていた話が売薬りのチラシや口コミや口伝えなどで広まったと考えられている。 しかし、現代の科学のメスをいれると、「毒は生成しない」ということがわかった。 たしかに、組み合わせの片方を見た場合、消化に時間がかかりやすいものや鮮度が落ちやすいもの、毒をもつものがあるが、食品管理の知識が乏しい時代に片方の食品が原因で体調不良になったと考えられる。科学食品衛生管理などの研究が進んだ現代では、食べ合わせが中毒の原因になることはなさそうだ。また毒は発生しないがオススメできない例などは「カルシウムとリン酸塩」「砂糖と脂肪」「鉄とタンニン」などというように、より詳しくわかっている。 しかし、間違った食べ合わせだけではないことも、また事実である。 今まで何気なく食べ合わせていた「焼き魚と大根おろし」「豆腐と鰹節」は、きちんと意味がある。「焼き魚と大根おろし」は有名であるが、「豆腐と鰹節」に関しては、知らない人も多いのではないのかと思う。 また、現代だからこそ、気をつけなくてはならないものもある。 注意を要するのは薬と食品の「飲み合わせ」。代表的なものは牛乳とカフェインが含まれるお茶系統の飲み物である。 牛乳は薬の吸収率を半減させる。胃薬と飲み合わせると血液がアルカリ性に傾きすぎることがあり、便秘薬(腸で解けるようにコーティングしたもの)と取ることで薬が腸に届く前に溶けてしまうこともわかっている。お茶は抗不安薬と摂ると効果が下がり、喘息薬に含まれるテオフィリンはカフェインの影響で興奮作用が強まってしまう。 アルコールが禁物なのは言うまでもない。酔って睡眠薬や抗不安剤を飲むと寝ている間に呼吸が止まることもある。 これらは一例であるので、個人で判断せず薬剤師に指示を仰ぐことが大切である。
参考文献など ・e食べ合わせ大百科 ・悪い(よくない)食べ合わせ ・富山の薬売り ・うんちく
今度は食べ合わせ。出典が出ているから、詳しくはそちらをご覧いただくとして。このあたりはまちがうと危険なので、エッセイにもあるとおり、ぜひ「個人で判断せず薬剤師に指示を仰ぐこと」をお勧めしたい。この中で個人的に気になるのはお茶。何せ「体の半分はお茶でできている」といわれかねない状況だし。お茶で薬を飲んではいけない、というのは確かによく聞くが、ここの情報をみる限り、きっとすべての薬に対してだめということでもないのだろう。それに、体内で混ざるのがまずいのだったら、いっしょに飲まなくても薬を飲む前後にお茶を飲めば同じだ。だったら、薬の注意書きに「服用前後○時間はカフェインの摂取を控える」みたいな注意書きがあってよさそうなものだが、今まで飲んだ薬でそういう注意書きを見たことはない。というわけで、医者か薬剤師から直接言われたら話は別だが、そうでなければ、多少薬の効きが悪くなってもお茶を飲むほうを選ぶね私は。
ともあれ結論。こういう大事なことは、ブログのエッセイなんかじゃなくて(テレビのバラエティ番組なんかでもなくて)、ちゃんと専門家に聞こうね、ということだな。エッセイは、まあ世間話、ということで。
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