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March 15, 2007

「あの事件」をめぐる7つの意見

小ネタ。2007年3月12日付の朝日新聞に「客室乗務員を操縦席に座らせ…日航機長、飛行中に記念撮影」という記事が出ていた。

はっきりいってどうでもいい話ではあるが、ふと頭をよぎったことがある。この件って、人によっていろんな見方がありうるよなぁ、と。

この件、JALのウェブサイトに出ている情報だと詳細がよくわからないが、新聞記事によるとどうもこういうことがあったらしい。

…日本航空のボーイング777型機(乗客・乗員190人)がシベリア上空を巡航中、機長(45)が客室乗務員(28)を機長側の操縦席に座らせ、短時間、デジタルカメラで記念撮影していたことがわかった。右側操縦席にいた副操縦士(34)も社内調査に「良くないと思ったが止められなかった」と話したという。…
…機長が飲み物を持ってきた客室乗務員に「操縦席に座ったことはあるか」と声をかけた。操縦席に座って操縦桿に手を添えるなどした乗務員を、1分程度、2枚撮影したという。当時は自動操縦中。…

要するに、一番「ヒマ」な時間だったわけだ。つい気がゆるんで、ということなんだろう。自動操縦中だし、実際のところ、これで乗客が大きな危険にさらされたということでもないだろうし。もちろんリスク管理上とんでもないことで、言語道断にはちがいないわけだが、私は根が不真面目なので、他の人はどう考えるだろうなぁ、と考えをめぐらせてみたわけだ。だってさぁ、すっごく想像力をそそるシチュエーションじゃんこれ?

(1)経営者:「せっかくワンワールド加盟で久しぶりに明るい話題が出たのに、またかよ!」
なんだかこの会社、やけにトラブルとか不祥事とかが多い。会社のウェブサイトに出ている最近のものだけでもこのくらいある。

2007.03.14 DHC8型機全機点検の終了について
2007.03.13 「耐空性改善通報」に対する処置について
2007.03.13 DH4(Q400)型機の緊急点検の実施について
2007.03.12 【お詫び】操縦室内での写真撮影について
2007.02.23 【お詫び】弊社社員の逮捕について
2006.12.26 【お詫び】弊社社員の逮捕について
2006.07.20 運航乗務員が手術後、服薬しながら乗務した事例について
2006.04.12 公正取引委員会からの「排除命令書」における社告について
2006.03.24 国内線運賃広告に対する公正取引委員会からの排除命令について
2006.03.23 国内線機内で販売されたフェイラー社製品の製造国誤表示について
2006.03.23 MD87型機主脚部に対する不適切な整備作業について
2006.02.10 福岡空港で昨夏発生したエンジン不具合の再発防止策について
2006.01.31 JALグループにおけるヒューマンエラー防止にかかわる改善策について
2006.01.27 JL356便(2002年10月21日)について
2006.01.25 成田空港降雪の影響について
2006.01.10 1月7日JL3913便鹿児島空港着陸時逆推力装置の不作動について

特に昨年12月、今年2月と逮捕者が連続して出るなど人がらみの案件が目立つ。もともといろいろな事情で注目されやすい会社ではあると思うのだが、こう続くといったい、という感じ。特に「弊社社員の逮捕について」の2件。12月のやつは副操縦士(28)がタクシー運転手を蹴って傷害、2月のやつはパイロット(39)が元交際相手の客室乗務員(34)の自宅に盗聴器を仕掛けた電波法違反とかなり情けない系が連続して起きたわけで。今回の写真撮影は法違反とかではないんだろうが、情けない系ということでは共通。経営者としては、せっかく3月9日にワンワールド加盟を正式発表したというのに、そのわずか3日後にこれでは、株主へのアピールが台なしではないか、というわけだ。

(2)ボーイング社:「操縦席にパイロット以外の者が座ることを防止するシステムが必要なのではないか」
そもそも飲み物を持っていくだけのために客室乗務員が操縦席に入ることが必要なのか、という観点もあるかもしれないが、ドアをなくすわけにもいかないだろうし。ただ少なくとも、飛行中の操縦席にパイロット以外の者が座るのはやめていただきたい。とすれば、航空機製造会社ができることとしては、なんらかの方法で操縦者を照合し、登録した者以外の者が席に座ると異常事態として察知するシステムなんかが考えられるかもしれない。ハイジャック防止にもなるかも?これを「次世代航空機に必須のシステム」とか何とかいって売り込むわけだ。

(3)マーケティング担当者:「『操縦席で写真』は売り物になるのではないか」
逆に、もし安全が確保されるなら、ジェット旅客機の操縦席なんていうのは、ぜひ一度座ってみたいものの1つだろう。ファンなら金を払ってもやってみたいにちがいない。飛行中はまずいだろうが、上得意の(たとえばマイレージ100万マイルと交換で)顧客に離陸前に記念撮影させるサービスでもしてやれば、顧客ロイヤリティが高まるかもしれない。リスク管理的には超アウトだろうけど。

(4)リスク管理担当者:「誰がばらしたのか」
リスク管理担当者としてはいろいろなところが気になる案件だろうが、ややいじわるくいえば、この件で一番ダメージの大きいのは風評損害ではないかと思う。本件が明るみに出た事情は知らないが(JALが自ら公開したのかもしれないけど)、何せ、操縦席でのことは、部外者には本来知る由もないわけで。となると、最も気になるのは「誰がこの件をばらしたのか」になるのかも。最も可能性が高いのは副操縦士、か。

(5)テロリスト:「このタイミングを狙えば操縦席に入ることができるぞ!」
不謹慎で申し訳ないが、けっこうマジな話。いつもは施錠されているのだろうが、客室乗務員が操縦席に入れるということは、そのときに扉を開けるわけで、操縦席に押し入りたいテロリストがいたとすると、けっこうリスクの高いタイミングということになるのではないか。そもそも、単に飲み物をというだけなら操縦席に水筒を置けばいいし、ほとんどの打ち合わせなら機内電話で足りるはずだし。もちろんなんらかの対策をとってのうえのことなんだろうが、これはちょっと気になるなぁ。

(6)フェミニスト:「機長に飲み物をもっていくのは男性客室乗務員が行うべきだ」
この件で、機長や飲み物を持っていった客室乗務員が男性なのか女性なのか知らないが、今でも客室乗務員は女性のほうが多いのではないかと思う。一方、パイロットというと男性のほうが多いのではないかと。もしそうだとすると、これはつまり、役割のちがいだとはいえ、「女性が男性にお茶くみサービスをする」という図になるわけだ。こういうものに対して敏感な人はけっこういると思う。

(7)週刊誌:「この機長と客室乗務員の関係は」
機長は45歳。客室乗務員は28歳。なんとも「微妙」なお年頃だ。仮に機長が「操縦席に座ったことはあるか」と聞いたとして、仕事だけをきっちりこなす「ハケンの品格」の大前春子(篠原涼子)みたいな客室乗務員だったら、まず座ることはないだろうと思う。この2人はいったい、という興味を持つ人がいたとしてもおかしくはない。少なくとも、週刊誌の皆さんはここに食いつくのではないか。さらにいうと、この客室乗務員が機長と「仲良く」やっているのを横目で見ていた副操縦士の心中は、なんてあたりはさらにそそるものがあるだろう。この後の「2人」の運命やいかにとか、この件を知ってなぜか別の客室乗務員が激怒するケースがあったりしたら、とか、どんどん妄想がふくらみそうになるのだが、あまり下世話なのはどうかとも思うのでこのへんで。

いろいろ書いてみても、やっぱりどうでもいい感はぬぐえない。なんだかなぁもう、と言ってみたりして。がんばってねぇ。いろんな意味で。

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Comments

(8)コンピュータ関係者

飲み物を持ってきた.. とあるけれども、その瞬間、
乱気流などで、機体が揺れて、"飲み物" をコンソール
にぶちまけちゃったら、どうなるのだろうか...

というのも、最近、"最悪の事故が起こるまで人は何を
していたのか" (SBN-10: 479421538X) を読んだのだけ
れども、その中のオーシャンレンジャー号の事故を
ふと、思い出してしまったからだ。オーシャンレン
ジャー号とは、巨大海洋石油掘削装置で、普通、何が
あっても沈むような代物ではない。しかし、この事故
は、制御盤を濡らした海水が原因で、バラストタンク
のバルブのコントロールができなくなり、沈没してし
まった、というものでした。

で、ボーイング777は、そういうテスト(制御盤に飲み
物をぶちまけても、運行に支障がない?)、やってい
るのかな???


Posted by: ひろん | March 15, 2007 03:24 PM

つらつら考えると...
たぶん、そういうテストはやっているんだろうな。

上空の気温は、夏でもマイナス60度とかだから、
結露の問題とかあるだろうから、当然、そういう
テストは、しているハズだ... と思う。

まぁ、どうでもいい感。

でも、どうでもいいことこそ、余計、気になったり
して。

Posted by: ひろん | March 15, 2007 05:58 PM

ひろんさん、コメントありがとうございます。
いや確かに、「コクピット内での飲食」への対応は気になるところですね。パイロットはそこで食事もするのでしょうし。そもそも乗客と同じものを食べてるのかとか、食中毒のリスクとかを考えれば機長と副操縦士が同じものを食べるのかどうかとか、知りたいことはけっこうあります。

Posted by: 山口 浩 | March 15, 2007 11:44 PM

>食中毒のリスクとかを考えれば
>機長と副操縦士が同じものを食べるのかどうか
たしか乗客と同じものだったと思う。

食事は別のようです。
フライト前から違うメニューにするそうです。
これは法で決まってるのか
格航空会社などが自主的にやってることなのかは
知りませけども。

どの業界にしても問題がちゃんと出てくる企業は
まだいいと思いませんか?
JALに何かあったときとANAとでは
メディアの扱いが違いすぎる気がします。

Posted by: とりばち | March 27, 2007 11:50 AM

とりばちさん、コメントありがとうございます。
やはり食事はちがうんですか。まあそうでしょうねぇ。でも、もしそうだとするならば、客室乗務員が持っていった飲み物を操縦士と副操縦士が飲む状況は、きわめて危険ということになりませんか?いやまさにポイントはここなわけです。
メディアの扱いのちがいはありそうですね。内紛のせいもあるんだとは思います。ただ、不祥事の発生自体についてはどうなんでしょう?社員間の盗聴とか、普通の会社だとあんまり起きなさそうな印象ですが。飛行中の飛行機の操縦席で写真を撮る行為が他で行われているのかどうか知りませんが、常識論として、「プロはやらないよねぇ」的ふるまいではあろうかと思います。

Posted by: 山口 浩 | March 28, 2007 11:43 AM

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