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March 04, 2007

地方分権時代の「市場万能型」リスク管理手法について

先日、例によって衆議院TVをつけっぱなしにしていたら、予算委員会の分科会の質疑で、民主党のなんとかいう議員が、地元の新潟県で暖冬のため建設業者が除雪の収入が上がらず困っている、みたいな質問をしていた。低利融資とかいろいろな支援策がどうとか話していたが、つきつめると、困っている地域のために政府がなんらかのかたちで金を出せないかというそういう類の話、ということになるんだろう。

資源の再配分は政府の主要な機能だから、そういう話はありうるしあっていいわけだが、それがばらまきになってしまってはいけないというのもまた当然。政府の対策というのはどうしても融通が利きにくかったり、無駄が生じやすかったりするし。そこで、というわけなんだが。

といっても、別に新しいことをいおうとしているのではない。以前書いたものを焼きなおして、「自治体間リスク取引市場」を作ってはどうかと再度いいたいだけだ。

タイトルに「市場万能型」とあるのは一種の釣り。「市場」というと、弱者の敵みたいな一方的な見方をする向きも多いと思うが、市場というのは本来価格を使って効率的な資源配分を行うメカニズムであって、それ自体弱者の敵でも味方でもない。市場そのものというより今市場に参加している人たちが弱者の敵だという議論もできるし、そういう側面もあるんだろうが、もちろん世の中がそういう人ばかりではないわけだし、ここでは、今市場で取引されている資産の多くが「そういうもの」として設計されている、という点に着目したい。

だから、市場やそこで取引される資産を適切に設計すれば、市場メカニズムを弱者の味方として使うこともできるのではないか、と思う。別に市場が「万能」だと本気で思っているわけではないが、市場には今使われてる以外にも使い方がある、市場メカニズムを生かして資源再配分を行うというリスク管理手法がある、というのが主旨。

上記の国会質疑で問題になっていたのは、暖冬だった。このほかにも、豪雪とか猛暑とか水不足とか大雨とか台風とか地震とか、この種の自然現象に起因するリスクはたくさんある。ただ、これらの少なからぬものは、地域的に偏りがある。暖冬が東京ではそれほど大きな深刻な問題ではないが新潟では深刻な問題になるように、全国的な現象であっても、その影響は地域ごとに異なったりする。ということは、地域間でそうしたリスクに対する「相互扶助」のしくみを作れば、全体としてリスクを分散できる可能性があるわけだ。暖冬がリスクであるならば、暖冬の際に必要な資金援助を受けられるような金融上のしくみを作ればいい。要するに天候デリバティブだ。単純なオプションだけでなく、他の自治体とのスワップにする手もあるし、地方債と組み合わせてCATボンドみたいにしてもいい。設計のしかたはいろいろあると思う。

民間企業はこうしたしくみを活用し始めている。天候デリバティブの市場規模については、Wikipediaには「2006年現在では日本国内の市場規模(補償料額ベース)は約600億円」とあるが、こちらをみると2002年の市場規模は130億円ともあるから、(同じベースの数字だとすれば)急拡大、といっていいのだろう。ただ、日本では、セカンダリー・マーケットがまだできていない。世界的にみれば、必ずしも順風満帆というわけではないが、CO2の排出権市場なんてのもすでに立ち上がっていて、多くの企業が参加している。民間で使われているものをそのまま持ち込む必要はないが、少なくともその基本的発想は参考になるはずだし、自治体間だけでも潜在的な市場規模は充分に大きいと思う。

これまで、この種のリスクへの対処は、基本的に国の仕事だった。「いざとなったら国に頼る」という手法だ。国のこうした役割は、もちろん必要なんだが、自治体の自助努力みたいなものももう少し必要ではないか。国と地方の役割分担が変わっていくという時代状況もあるわけだが、それ以前の問題として、地元のきめ細かいニーズに対応するために、やはり地方が主体的に取り組んだほうがいいと思うからだ。政府がコストの一部を負担することはあってもいいと思うが、一度市場メカニズムを通すことでしくみが透明になるし、利潤動機からリスク自体を減らす方向への努力を引き出すということもある。

こうしたものは、必ずしも大掛かりなしくみを作らないとできないというものではない。民間企業が買ってるのと同じような天候デリバティブを少しずつ取り入れて、慣れていったらいいのではないか。細かいところはともかく、基本的な原理は公務員試験を通った皆さんにとってそれほど難しいものではないと思う。「専門家」に丸投げするのではなく(いろんな意味で高くつくからね)、ぜひ自分たちで理解しながら進めていくのがいいと思う。もしどうしても難しくてわからなかったら?そんなときこそ職員を派遣して大学院で勉強させてはどうか、というと我田引水っぽくなるので、このへんでやめとく。

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