アメリカのカップ焼きそばは電子レンジで調理する、という話
小ネタ。カップ焼きそばという食べ物がある。インスタント焼きそばともいう。Wikipediaには、「カップ麺のうち焼きそばを模したもの」という秀逸な定義が出ている。これの調理法(調理というほどのものでもないが)というと、具を入れてお湯を入れて3分待って、お湯を捨ててソースを混ぜる、といったあたりを思い浮かべるのが日本では常識的なところだろうと思う。
ところが、最近食べる機会があってわかったのだが、アメリカだと、これがそうでもないようなのだ。
実物はこれ。「Maruchan Yakisoba」のChicken Flavor。ここで見えているのはビニール製のカバー。
カバーをとると容器が出てくる。ふたに調理法の解説。映りが悪くて申し訳ないが、図から雰囲気は伝わるかと思う。
ざっくりいうとこう。
(1)具を入れる。
(2)水を入れる。ただしひたひたにするのではなく、めんの高さより低く。
(3)電子レンジに入れて4分。
(4)レンジから出し、粉末スパイスをかけてよく混ぜて、出来上がり。
これが完成品。具は麺の下に隠れているので、もっとある。麺の色がやけに白っぽいが、これで正しい色。ソース焼きそばではないのだ。アメリカでソース焼きそばを売っているのかどうか確かめなかったが、少なくともこちらのほうがアメリカ人になじみやすいのだろう。
作り方が大きくちがうのがおわかりいただけるかと思う。つまり、湯を切るという、日本人にはもはや常識といってもいい動作がないのだ。マルちゃんは日本発なわけで、つまり日本とは調理法を変えているということ。明らかに意図的だろう。いったいこれはいかなる理由なんだろうか。ちょっと考えてみたら、2つくらい思いついた。
(1)湯を扱わせないため
ひとつ考えられるのは、湯を扱わせない、というあたりか。子どもが調理することもあるかもしれないし、そういうときに何かあって(何するかわからないからね)やけどでもしようものなら、たちまち訴訟を起こされるのではないか。「危険な湯を扱わせるような調理法は製品の欠陥である。おかげで子どもが大やけどをして、痕が残ってしまった。懲罰的損害賠償分も含め、1億ドルを請求する」みたいな。
(2)麺のこぼれを避けるため
カップ焼きそばを作ったことのある人なら誰でも、湯を切る過程で麺がこぼれ出てしまうというトラブルを経験しているのではないか。いや、絶対にしてるね。少なくとも私はやったことがある。全部まるごと流しの藻屑と消えてしまったこともあったぞ。最近はいろいろな工夫をしてうまく湯を切れる製品もあるようだが、それにしたって、熱くてつい容器ごと落っことしてしまうこともありうる。しかしそんなことがあろうものなら、かの国ではたちまち訴えられるにちがいない。「容器が熱くて落っことしてしまい、麺が台無しになった。これは製品の欠陥である。これにより受けた精神的なダメージの賠償として50万ドルを請求する」みたいな。
やっぱり、どう考えても訴訟リスクがらみのような気がする。そうだとすれば、ご苦労なことである。カップ焼きそばひとつにも、日本企業の創意工夫、汗と涙が生きているわけだ。感動、ではないか。
ちなみに、マルちゃんに焼きそばなんてあったけ?という方、日本だとマルちゃんの焼きそばは北海道限定、らしい。たとえばこんなの。これを作っている東洋水産は東京の会社だったはずだが、なんで北海道限定なのかは、謎。知っている方ぜひ。
※2007/4/4追記
折りしも、同日4月3日のテレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」で、マルちゃんがとりあげられていた。メキシコでマルちゃんのカップラーメンが人気、という話。1つ約30円。メキシコのカップラーメンも、水を入れて電子レンジで調理するのだそうで。そのほか、アメリカはもはやカップラーメン大国であるとか、徹底した合理化による低価格化がヒットのカギだったとか、いろいろ。ということは、訴訟リスクがらみというよりは、簡便性という点で電子レンジによる調理を採用してるのかな。
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Comments
山口さん、こんにちは。
以前やきそば弁当についての記事を書いたことがあり、そこでリンクを張った「北海道ぷっちがいど」の記事によると、
・もともと北海道は東洋水産のシェアは高めだった
・ペヤングが広がる前に全国で「やきそば弁当」を発売
・ペヤング上陸前に北海道だけで定着したため、限定販売になった
とのことでした。
http://pucchi.net/hokkaido/knowledge/yakisobabentou.php
東洋水産は他には「札幌スパイシー・スープカレーやきそば」なんてのも出してるそうです。
一応私の記事もトラックバックさせていただきます。
Posted by: くりおね | April 04, 2007 11:33 PM
くりおねさん、コメントありがとうございます。
この記事、読んだ記憶があります。リンク先をたどっていればなぞが解けていたんですね。不注意でした。WBSでは東洋水産の国際展開へ向けた努力みたいなあたりが紹介されていて、面白かったです。
Posted by: 山口 浩 | April 05, 2007 02:29 AM