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April 23, 2007

手前の牛乳を安くできないものか

新聞広告クリエイティブコンテスト」というのがあって、その2006年度の最優秀賞は「エコ買い」だったそうだ。

賢い主婦はスーパーで
手前に並んでいる
古い牛乳を買う。

というコピー(実際は縦書き。牛乳パックの表面に描かれているようなデザイン)。理屈はわかる。できればそうしたいとも思う。それを前提として、だけどね、といいたくなる気持ちもある。

ここでいう「賢い」は、エコロジーへの配慮をしつつ消費をするのがよいこと、という価値観にもとづいている。自分の利便性だけでなく、次世代の人々のためにも、というわけだ。確かに、牛乳はたいてい買ってからほんの数日のうちに飲み終わる。賞味期限(今はそういわないんだっけ?)にひっかかることなんてそれほど多くない。それに、賞味期限自体だって、それを1分1秒過ぎたらもう飲めない、という性質のものではない。

とはいえ、たくさん牛乳が並んでいたら、より新鮮なものを飲みたいと思うのは自然だし、なんかの事情で牛乳を数日飲まないことだってありうる。数日あいてしまったときに、それでも飲めるか飲めないかは大きなちがいだ。どうせ値段は変わらないんだし、だったら新しいものを買うのは当然、ともいえる。

で、ここで思うわけだ。値段が同じだからいかんのだ、と。

単純にいえば、牛乳が1日古くなるごとに、少しずつ値段を下げていけばいい。どのくらい下げるかは、顧客の意識(需要側)と企業の事情(供給側)のバランスによって適切な「均衡」が見つかるだろう。要するにポイントは、新しい牛乳とそれより少し古い牛乳が店頭で同じ価格で並んでいること、いいかえれば、商品の「質」の差が価格に反映しないこと、もう1ついいかえれば市場メカニズムが正しく働いていないことこそが問題の本質だ、ということだ。

これまでそうなっていなかったのはなぜか。もちろんコストの問題がある。古い商品を値下げすること自体は当たり前に行われるが、1日ごとに値札をいちいち貼りかえていくのはたいへんな手間がかかるだろうし。でも、そういうのは、ICタグがもっと普及していけば、問題は解消していくかもしれない。要するに、ちょっくら小難しい言い方をすれば、トランザクションコストの問題は、技術革新によって大方解消可能かも、ということだ。

しかしそれもさることながら、店側の意識の問題もあるのではないか。1日古くなっただけで値引きを迫られるとなれば、仕入れ担当者の責任はこれまでより重大になるかもしれない。めんどくさいし。品質はほとんど変わらないんだし。だったらこのままでいいじゃん、ということになりがちだったりするかも。これってエージェンシー問題だよねぇ?

でも、もしその気になれば、レジで1日前の牛乳に値引きをするくらいのことはできるのではないかと思う。その場で打ち込むやり方では、レジの人がめんどくさくなるかもしれないが、バーコードに日付情報が入っていれば(ひょっとしてもう入ってる?)、それほどおおごとではないのではないか。ひょっとしたら、そういうのをやってる店がもうあるかもしれない。だって、刺身とかすしとかはその日のうちに値下げとかしてるじゃん?その気になれば、できないわけないと思うんだな。

別に「賢い消費者」とか「エコ買い」を否定するわけではない。ないのだが、それと少なくとも同じ程度に、「賢い企業」とか「エコ売り」とかを考えていただければと思う。広告代理店の方に言ってもしかたないんだけどね。

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Comments

> これまでそうなっていなかったのはなぜか。もちろん
> コストの問題がある。古い商品を値下げすること自体
> は当たり前に行われるが、1日ごとに値札をいちいち
> 貼りかえていくのはたいへんな手間がかかるだろうし。


近所のイトーヨーカドーですと、さかなのパックだと、
時間を追う毎に、20%引き-> 50%引き、というように、
バーコードの張り替え、というか、張り増し?をやって
います。

それほど手間がかかる作業には、見えませんでした。

"さかな"、でやっているんだから、牛乳でやっても
いいはずだと思います。

Posted by: ひろん | April 23, 2007 05:14 PM

日配と鮮魚(生鮮)では担当するアイテム数と、アイテムごとの販売日数が違い過ぎるので、管理コストが引き合わないでしょう。

引き合うだけのコストをかける意味がある、というコンセンサスを作り出していっていただきたいものですね>広告代理店のみなさま

Posted by: なりなり | April 23, 2007 06:33 PM

コメントありがとうございます。

ひろんさん
下の方のコメントにもありますが、対象品目が広がっていくと、実際に値札を貼りかえていくのは作業量がばかにならなくなると思います。やはり何か工夫が必要なんでしょうね。

なりなりさん
管理コストが引き合わないでしょうから、やり方を工夫すべきですね。でも、本当にその気になれば、現状の技術でもやってできないことはないのではないかと思っています。それから、これはやはり広告代理店ではなく、スーパーの方々が解決すべき問題ですね。古い牛乳から売れていくようになることはどのくらいメリットがあるのか、ぜひお考えいただければ、と思います。

Posted by: 山口 浩 | April 24, 2007 01:03 AM

経済原則からその意見は賛成です、在庫管理は厳しくなりますが消費者の利点という意味では結構ですし、夕方になれば**%引きというシールを貼る必要も無くなり、資源・労力も低減できますね。

容器は同一の版で大量印刷するので容器での対応は不可ですが印字(賞味期限が書いてある部分)へ2次元バーコードを印字するのは技術的に不可能でないと思います(コストはそんなにかからない)。

というわけで賞味期限(消費期限)を印字する商品については牛乳に限らず全ての商品で可能でしょう。

Posted by: wood | April 24, 2007 12:05 PM

缶飲料の自販機についてはすでにそのような試みがなされているようです。
http://allabout.co.jp/career/marketing/closeup/CU20070401A/index.htm

Posted by: cloudy | April 24, 2007 09:53 PM

スーパーの生鮮食品は賞味期限が近づけば大体値引きしますよ。
牛乳も生菓子も残り2日くらいになれば30%ほど下がります。
あまり見かけないのはその前に売れてしまうからです。

賞味期限といえばドラッグストアみたいな所のペットボトル、カップラーメンは面白いですよ。
大体賞味期限半年を切ったものばかりです。(普通は1年以上ある)

前に明日賞味期限切れの2ℓペプシを50円で買ったことがあります。
味は普通でしたよ

Posted by: T.K | April 24, 2007 11:50 PM

コメントありがとうございます。

woodさん
ご指摘のとおり、技術的な問題ではないと思うのですよね。むしろ意識の問題ではないかと。

cloudyさん
ええ確かに。ただ、本文をお読みいただければわかると思いますが、問題は頻度です。賞味期限ぎりぎりになる前に売る(しかも消費者ががまんせずに気持ちよく買える)ためにどうしたらいいかを考えるべきではないかと。

T.Kさん
上に同じ、です。ぎりぎりになって大幅値下げをするのはいわば市場の失敗ではなかろうかと思います。

Posted by: 山口 浩 | April 25, 2007 12:20 AM

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