中国の知的財産保護に関していくつか
なんというか、きわめてタイムリーな話題でだらだらといくつか。まずは、ジェトロが来週東京と大阪で開くはずだった「中国知財保護セミナー」を中止するらしい、というあたりから。
このセミナー、「商標権侵害から企業ブランドを守る方法」という副題がついている。趣旨はこんな感じ。
中国ビジネスを行なう日本企業の多くが、自社商標が侵害されるリスクを経験しています。こうした中、中国の主要な省、直轄市から、商標法および不正当競争法に基づく権利行使を担当する当局幹部を招き、東京と大阪で セミナーを開催します。中国でのブランド保護の第一線で活躍する、現地取締り当局の取り組みを知る絶好の機会です。
ジェトロからのお知らせによると、直前になって突然の中止になったのは、「中国行政機関関係者の訪日が急遽中止となりましたため」だからだそうな。
理由というか、背景は当然想像がつく。最近テレビで話題になった、北京の「石景山遊園地」で日本や米国のキャラクターが無断使用されていると報じられた件。日本のだけならもう少し強気に出ていたのかもしれないが、ディズニー関連はやばいわけで。YouTubeには、日本のテレビ番組を録画したビデオに、ごていねいにも英語でタグをつけたものがいくつも上がっている(著作権侵害を著作権侵害行為で糾弾するというのもアイロニカルな話だが)。アメリカでどう報じられたのかは知らないが、さっそくディズニーが北京市当局に告発したらしい。で、市当局もいつになくすばやく対応した、と報じられている。
「中国の主要な省、直轄市」の「商標法および不正当競争法に基づく権利行使を担当する当局幹部」というのがどの市のどんな人なのか知らないが、「直轄市」ともあるし、北京市の人だった可能性は充分ある。そもそもいろいろと忙しい状況だろうし、「飛んで火に入る」になりたくはない、ということでもあるんだろう。国営だそうだから、民間業者が勝手に、という言い訳もきかないのはつらいところ。
この件と直接関係はないんだが、たまたまつい最近、中国でコンテンツ関連のビジネスに関与している人(中国人ではない)の話を聞く機会があって、なるほどと思ったことがある。中国で外国コンテンツの海賊版の取り締まりがなかなか進まないという話が出たのだが、それについて、中国における外国コンテンツの規制と裏腹だ、という指摘があった。当たり前といえば当たり前で別に目新しくもないわけだが、それを「政府の対応」という観点からみると興味深い。外国コンテンツの流入を規制しているために、海賊版の取締りを厳しくすることがなかなかできないのではないか、という「仮説」。石景山遊園地にしても、北京で人気の遊園地であるとすれば、「当局」の人がまったく知らないというほうが不自然だし、海外で問題化しなかったら、独自に対策をとるということは考えなかったんだろう、という気はする。
石景山遊園地の件は、白か黒かといわれればまちがいなく黒なわけで、先方も弁解の余地はなかろう。というわけで、ほれ見たことかと盛り上がっている向きもあるらしい。でも考えてみれば、著作権侵害行為は日本にだってたくさんあるわけで、そういう人たちは自分たちの足元のことも少しは考えたほうがいいと思う。もちろんだからといってかの国の人たちを「免罪」するとかいう性質のものではないんだが、要するに他人事ではないのだなこの問題は。
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