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May 20, 2007

中高年の凶悪犯罪を俗物的世代論で語ってみるテスト

なんだか凶悪な事件のニュースが続いて流れていて、いやな感じだ。被害に遭われた方々、その周辺の方々の痛みやら悲しみやら不安やら憤りやらは想像を絶する。ことばもない。

そんな折に何なんだが、というなにをいまさら話。

最近の凶悪事件の中には、被疑者が中高年である場合がけっこうみられるような印象がある。もちろんこういうのは大方マスメディアの伝え方によって作られる印象なのであって、全体の傾向が実際にそうである保証はまったくないのだが、少なくとも世間の注目を集める状況にあるということはいえるのではないか。これまた印象論でしかないが、ニュースとかではこれらの事例について、個々の事情にまで入り込んでそれなりに突っ込んだ情報が伝えられているように思う。

で、気になったことが1つあった。もしこれらが若年者だったら、すぐにテレビやらゲームやらの影響とかが持ち出されたんだろうなぁ、というあたりだ。やれ「過保護に育てられた世代だから仮想と現実の区別がつかなくなっている」だの「なんでもネットやケータイですまそうとする現代のバーチャル社会の光と影」だの。この種の言論は、いざネットで探そうとしてみると検索上位にはなかなかひっかからないのだが、テレビにコメンテータとして出てるタレントとかいわゆる「識者」とかの発言としてはよく聞くような記憶がある。

となると、ちょっと試してみたくなる。若年者が起こした凶悪犯罪とかを論じるときにすぐに持ち出されるこの種の「世代論」を、中高年者の凶悪犯罪のケースに適用してみたらどうなるか、といった一種の思考実験だ。

たとえば先日、長崎市長を殺害した被疑者はいわゆる団塊の世代に属する。この被疑者については、今のところ、職業上の属性などにかこつけて語られるものをよく見かけるが、これを世代論として語ってみたらどうなるか、というわけだ。たとえば、団塊の世代はもともと個人主義をふりかざして自分勝手にふるまう傾向が強いからこういう犯罪に走りがちなのだ、といってみたらどうだろう。

ちなみに団塊の世代は、日本で未成年者の凶悪犯罪が今の数倍あったころ、つまり日本の未成年が最も「凶悪」だったころに未成年だった世代だ。三つ子の魂百までというではないか。暴力に対して後の世代よりも甘いのかもしれない。実際、6年ほど前のJR東日本の調べで、駅員に対する暴力行為が最も多いのは50代だったとかいう話もあちこちで書かれている。今だと60歳を越えたりかかったりする人もいるだろうから、ほぼ団塊の世代ないしその近傍といってよさそうだ。考えてみれば、この世代がテレビでよく見ていたであろう時代劇などでは、ヒーローが法の助けを借りずに、悪人どもをばっさばっさと斬り殺している。こういうものをずっと見てきた世代の人々はきっと、悪いと自分が判断した相手は自分が「成敗」してしまっていいという考え方が深く染み付いているにちがいない。あるいは逆に、会社の言いなりになって働くばかりで、ゲームやテレビでうまく息を抜くすべを学ばなかったために、内心の鬱屈が凶悪な犯罪となって噴出しがちなのかもしれない。いずれにせよ、あの世代の人々は危険だ。適切な法規制とか、再教育を含めた総合的な社会政策を展開しないと、日本の将来は暗い…。

それから、元妻を監禁して拳銃を乱射したとしてつい最近逮捕された被疑者は、それより少し下のいわゆる「新人類」世代のはしりにあたるだろう。「成熟した成人として、社会を構成する一員の自覚と責任を引き受けることを拒否し、社会そのものが一つのフィクション(物語)であるという立場をとる」(Wikipedia)世代だそうだ。そういう目でみれば、家族を監禁したり発砲してけがをさせたりするなど「社会を構成する一員の自覚と責任」の不在以外の何者でもないし、にもかかわらず地元FM局のDJに長々と個人的思いを語るような現実感のなさも、実際に起きている現実を受け入れられない証拠だ…。

ついでにいえば、最近関西の特急電車の車内で女性に狼藉を働いた被疑者は団塊ジュニアにあたる。団塊の世代が自由を放任とはきちがえて、子どもの教育をしっかりしなかったために、今の中年世代がおかしくなっているのではないか…。

書いてて自分でも思うが、ふざけるな、という声が多いだろう。ほんの一部ではないかと。いっしょくたにするなと。証拠があるのかと。あれにはそれぞれ個人の事情なり社会経済的な事情なりがあるのであって、一般論として世代全体に話を広げるのはあまりに乱暴だと。

そう。その通り。こういう乱暴な議論は危険だし的外れだ。一部に極端な事例があったからといって、感情や思い込みで、あるグループの人たち全体を悪者であるかのようにいうのは、何重もの意味で問題がある。それが若年者であろうが中高年であろうが。

テレビなんかでありがたいコメントをしてくださる「識者」の皆さんは、当然ながらご自分の分野では一流の存在なんだろうが、ここで対象になっている問題に関しては必ずしも専門家ではないケースが少なくないだろう。本来、そうしたケースで識者に期待されるのは、自分が何を知っていて、何を知らないかをふまえたもののいい方ではないか。さしたる根拠も挙げずにたまたま若い凶悪犯がゲームを犯行の理由に挙げたからといってゲームが若者を凶悪犯罪に走らせるといったような議論は、「桃太郎侍」が団塊の世代を凶悪犯罪に走らせるという議論と少なくとも同程度に暴論ではないかと思う。

※追記
人の属性は世代のほかにもいろいろある。この話は、そういういろいろな属性についてもあてはまることが少なくないのではないか。少なくとも犯罪者について語るのであれば、性別でも民族でも宗教でも趣味でも思想信条でも、そういう一般的な属性でひとくくりにしていいかどうかは慎重に考えたほうがいいと思う。

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Comments

山口さん、相変わらず巧いです。

マスコミの作るステレオタイプな論評を逆手に取って皮肉るって。

そもそも「無言の帰宅」っていう枕詞に気持ち悪さを覚えてるので。

こういう事言うと、過剰反応する人もいそうですが。

Posted by: まお | May 20, 2007 04:42 AM

>書いてて自分でも思うが、ふざけるな、という声が多いだろう。

いや、別に。いつもの下らない世間話の一つね。
話のネタとしては悪くないんじゃん

という感じに思う

Posted by: ふま | May 20, 2007 10:48 AM

識者に限らず、これができる人はまず信用
できますね。

「自分が何を知っていて、何を知らないかを
ふまえ」て発言できる

Posted by: 感動 | May 20, 2007 02:36 PM

コメントありがとうございます。

まおさん
「無言の帰宅」、私も嫌いです。観光地なんかの様子を伝えるニュースで「…を満喫していました」みたいなのも。

ふまさん
「いつもの下らない世間話」は私が下らない人間だからで、いってみれば仕様です。世の中には「ふざけるな」派の人が多いだろうと思ったので、そのように書きました。

感動さん
実際にやるのはけっこう難しいことだろうと思うんですけどね。特にテレビに出るような人は、局側の期待するキャラを演じるよう求められてますし。

Posted by: 山口 浩 | May 20, 2007 11:54 PM

上を見て私が思うのは、マスメディアの世に与える影響は大きさです。最近の報道のされ方を見てると(最近始まったこととは思わないけど)、それが事実なのかそれとも製作者の意見なのかを見る側が判断するのは、難しくなっていると思います。新聞とか放送とかは、一応公共的情報伝達手段の一部を担ってるんだから、そこらへん、自主的なルール作りを含めて考えてほしいし、我々も考えていかないといけないような気がします(情報化社会と言われてるんだし)。とはいっても難しいテーマだとはおもうけど。

Posted by: のひ | May 21, 2007 02:23 AM

いえいえ、誤解を招いたようです。

>こういうものをずっと見てきた世代の人々はきっと、悪いと自分が判断した相手は自分が「成敗」してしまっていいという考え方が深く染み付いているにちがいない。

といったような意見が仮にあったとして、そのような
意見はいつもの下らない世間話の一つだなあと

Posted by: ふま | May 21, 2007 08:11 AM

コメントありがとうございます。

のひさん
マスメディアの責任は確かに大きいですね。ただ先方に言わせれば、視点まで含めてわかりやすく伝えないとそもそも大衆に関心を持ってもらえない、ということになるのでしょう。これまた他人事じゃないわけですね。

ふまさん
あ、そうでしたかすいません頭が悪いもので。確かにその手の話は飲み屋で酔っ払ってやる類のものみたいな気がしますね。人前で臆面もなくやるのは恥ずかしいと思うんですけどねぇ。

Posted by: 山口 浩 | May 21, 2007 10:17 PM

>人前で臆面もなくやるのは恥ずかしいと思うんですけどねぇ。

それをやって人を楽しませるのも仕事と言えば仕事だと思います。それ(下らないバラエティ番組等)が嫌いな人も当然いるのでしょうが

Posted by: ひの | May 22, 2007 02:23 PM

ひのさん、コメントありがとうございます。

確かにそうでした。人前で恥ずかしい行為をすることで人気をとる人がテレビにはたくさんいましたね。そういう番組は「報道」ではなくて「バラエティ」のジャンルに入れたらいいかもしれません。
「あるある」捏造事件のときも思いましたが、番組をきちんと色分けして、どの程度の信頼度かをあらかじめ示しておけばいいのではないかと。あるいは人ごとでもいいですね。この出演者の発言の信頼度は37%、みたいな。それぞれのランクに応じたバッジをつけておいてもらえば視聴者も判断できます。

Posted by: 山口 浩 | May 23, 2007 10:14 AM

人それぞれだからと言って何で一般論を語ってはいけないんだ?
ライオンにも白い奴はいる。しかし一般論としてライオンは黄色い。
それの何が悪い?
団塊にもまともな奴はいる。しかし一般的には団塊はどうしようもないクズばかりだ。
個人差と一般論は別の話。

Posted by: 差別完全肯定主義者 | June 23, 2010 07:42 PM

差別完全肯定主義者さん、コメントありがとうございます。
ええ、別の話ですが何か?
本文を読んでいただければわかると思いますが、この文章は、個別のケース、おそらくは特殊例をもって全体を決め付ける論理のおかしさを指摘したものです。一般論としてライオンが黄色い(黄色い、ですか?)と語りたければ、あのライオンは黄色いとか、このライオンはおおむね黄色いとかじゃなくて、ライオンという種の動物が総じて黄色いという点について語ってくださいということです。

Posted by: 山口 浩 | June 26, 2010 11:25 AM

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