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暴論:「ふるさと投票」も作ったらどうだ

「ふるさと納税」がなんだか妙に盛り上がっている。納税者が自分のふるさとに納税できるようにすれば都市と地方の格差是正につながる、のだそうだ。ふうん。「ふるさと」の定義は何だとか(たとえば、私は転勤で2年間ほど新潟県に住んだことがあってある種「心のふるさと」みたいに感じているのだが、新潟県は私のふるさとになるんだろうか)、税制の根幹を乱すのではないかとかいろいろ問題意識はあるのだが、私は東京出身の東京在住者なので、色つきの意見と見られるのだろう。

どうせ色つきと思われるなら、思いっきり意地汚く主張してみることにする。金を出すなら口も出させろ、と。

これは本来、そんなに理不尽な要求ではないように思う。ふるさとをよくするために1票を投じたいと思うのは自然な感情だし、納税者として自分が納めた税の使い道に口を出したいというのはむしろ当然の権利だろう。

要するに、都会の人が地方に納税した場合には、その地方の選挙権をいただきたい、ということだ。たとえば税金の10%をふるさと納税に回したとすれば、その地方に0.1票を投じる権利を与える、みたいな。当然、その分だけ自分の選挙区の票は減らしてもらってかまわない。「ふるさと納税」と併せて「ふるさと投票」も、というわけだ。もし「ふるさと納税」で地方財政を潤すほどの規模の税収が上がるとすれば、「ふるさと投票」のほうもけっこうばかにならない影響力を及ぼすかもしれない。

しかし、これだけでは面白くない。この機会にぜひ格差の是正を主張したいところがある。長らく問題になってきた都会と地方の格差。収入の、ではない。投票権の、だ。

いわゆる「1票の格差」というやつ。経済同友会のサイトには「1票の格差是正ウェッブサイト」なるものがある(この「ウェッブ」ってところにこだわりを感じるね)。そこからリンクをたどって総務省のサイトにある簡単にまとまった資料を見てみる。もちろん選挙区によってちがうので本来細かく見る必要があるのだが、はしょっておおざっぱにいえば、定数配分の関係で、地方の方々は、衆議院でいえば1人あたり最大約2票、参議院でいえば最大約5票を持つ計算になる。いくら最高裁が認めたって、納得できないって人は少なくないと思うのだが、このあたりは思いっきりお手盛りだから、実際のところ当面改まりそうにない。

そこでだが、ふるさと納税を行ったがふるさと投票を行わない人にも、それに応じた倍率で票を与える、なんてのはどうだろう。何せ、地方で投票すれば自分の票の価値が最大で数倍になるのだ。これはぜひ活かしたいではないか。たとえば、ふるさと納税した先の選挙区では自分の選挙区と比べて1票の価値が3倍だとしたら、自分の選挙区で投票する際にはそのうちふるさと納税した10%に相当する分に3倍の価値を、つまり0.9+0.1×3=1.2票をもらえる、みたいに。

もちろん、こんなことを本気で主張してもあまり意味はない。少なくとも現状ではコスト的にも技術的にも引き合わないだろうし、政治的にも受け入れがたいだろう。そもそもむちゃくちゃな主張だし。いいたいのは、「ふるさと納税」もこれと同じくらいの暴論ではなかろうか、ということだ。そもそも、所得再配分は政府の仕事のはず。今あるしくみがいろいろ弊害をもたらしてるから、権限と税源を委譲しようとかいう話になったんじゃなかったのか?あれはいったいどうなったんだ?政府にはうまくできないからそれを国民の手に委ねたいというなら、ふるさとに限らず、寄付金に対する税額控除を広範に認めて、国民に税金の使い道を決めさせるぐらいのことをやってもらいたいね。そのときは、所得再配分という「本来業務」を一部放棄するんだから、その分だけ国会議員の定数も減らしたらいい。

ちなみに。「地方は人材を育てたのに都会に出てしまって」という理屈を言う方がよくいるのだが、これはよくわからない。その地方で教育をするとか地方の基盤整備をするとかのために地方交付税やらなにやらといった国の資金が投入されてきたという点はどう考えてるんだろうか。損得の話をするなら、こうむってる損ばかりではなくて、受けてる得のほうもよく考えたほうがいい。というか、本来この問題は損得の話ではないと思うんだがなぁ。で、そういう損得の話を離れて国のグランドデザインを考えるために、「全国民の代表」として国会議員を選ぶのではなかったのか。なんだかよくわからんねもう。

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暴論:「ふるさと投票」も作ったらどうだ引用:「ふるさと納税」がなんだか妙に盛り上がっている。納税者が自分のふるさとに納税できるようにすれば都市と地方の格差是正につながる、のだそうだ。「格差是正」については10年以上も前からなんとなく思っていたことがある。例えば選挙区の問題。どう考えても単なるパズルだ。公平な最適解をコンピュータで得られるはずだ。今の知識を持ってハッキリ言える。最小の行政単位で分割し、周囲との繋がりをデータとして持たせる。買い物や就労などの経済的な結び付き、学区や医療施設や消防や警察や... [Read More]

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Tracked on June 01, 2007 at 01:19 AM

Comments

私は「ふるさと税≒出生税」かなと思ってました。
だから納税場所は選べない。
生まれた土地に一生、納税する。

こう考えるとひとつメリットがあって、最近問題になっている産科の減少に歯止めをかけられるのではないか。

産院=税収に直結しますからね。
一人の税を一生分確保できるんですから、大きいです。

そりゃあもう、豪華な産院が地方にボコボコ建って、出産費用は無料とかサービス競争しますよ。

あとね、生まれただけじゃ納税するまでに20年ほどかかってしまうので、立派な「納税者」になるまでは手厚くケアします。できれば出生の土地に住んでももらいたいから、毎年イベントしたりしてね。

暴走しました。すみません。

Posted by: YUH | May 23, 2007 at 01:13 PM

個人的な感覚からいうと、総合的に考えて現状でさえ、地方の方が得してるような気がしますけどね。

この問題、きちんと数値に出せるもの(教育費とか地方交付税とか)と、格差是正という”おもいやり”みたいなものが入り組んでるので、難しいのかなーなんて思ってます。

Posted by: のひ | May 23, 2007 at 06:55 PM

この投票だと東京に強い(かもしれない)田中康夫ちゃんもまだ長野県知事でいられたかもですね。

Posted by: 佐藤秀 | May 23, 2007 at 10:36 PM

コメントありがとうございます。

YUHさん
出産のときに実家に帰る女性はけっこう多いと思います。「生まれた場所」だと、そういう場合、自分が子ども時代をすごす場所とはちがった場所になるケースが多そうですね。
まあ、本気で考えてもしかたないんですが、出産を誘致する競争が実際に起きれば、少子化対策にもなるかもしれませんね。

のひさん
損得の話は難しいですね。何を望ましいと考えるかというところからしていろいろありますから。あまりぎちぎちに締めるとかえっていろいろ問題があると思います。価値観と利害を共有できる範囲内でどんぶり勘定にするほうが受け入れやすいと思います。そもそも国とか自治体とかってそういう存在だったのではないでしょうか。

佐藤秀さん
そうかもしれませんね。だからこそ、この案は地方の方には絶対受け入れられないだろうな、と思うわけです。

Posted by: 山口 浩 | May 24, 2007 at 12:16 AM

ふるさと投票というアイデアは現状の新自由主義的発想の破綻が囁かれるご時世で実に秀抜なアイデアです。感心しました。実は、世界の投票制度ではこうした考え方は存在します。南米ブラジルでは、自分の出生地、本籍地に戻って投票するのが普通です。選挙になると民族大移動が起きます。山口さんは本気で考えていらっしゃらないのだと思いますが、現今の状況では地方が滅びて国が滅ぶ状況になりつつありますから何らかの方策を創造する必要があります。おそらく日本の政治に一石を投ずる秀抜なアイデアです。どのように理論化するか考えませんか?
   塚崎


Posted by: 塚崎康彦 | April 18, 2009 at 10:41 AM

塚崎康彦さん、コメントありがとうございます。
私がこの案を本気で考えていないのは、現実の政治システムや政治家たちを前提にすれば合意はほとんど不可能だろうと思うからです。議員定数をちょっと減らすだけでもあれだけの大騒ぎですから。政治学は私の専門でもありませんし、それに時間と労力を割くのは正直気が引けます。いいと考える方がたくさんいれば、そういう方向に動きだすかもしれないとは思いますが。

Posted by: 山口 浩 | April 18, 2009 at 06:00 PM

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