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「女ヲタ」の時代が来たのかもしれない

以下の話は、別に全然新しくないし、知ってる人ははるかに詳しく知ってる話だろうしと思うのだが、自分なりにまとめておきたい思ったので、書いてみる。文化論みたいなのには強くないしそれほど興味もないので、そういう視点からではないことはあらかじめおことわりしておく。

出発点として、事実の確認から。マンガ、アニメ、ゲームなどのファン、典型的に「オタク」と呼ばれるジャンルの人々の中にかなりの数の女性が含まれること自体は、別になんら新しくもない。そもそもそうしたものが始まった当時から、女性のファンは数多くいた。たとえば同人マンガその他の即売会であるコミックマーケットにしても、女性は一貫して大きな存在だった。Wikipediaにはこう書かれている。

一般参加者の男女比については統計がない。コミックマーケット66でコミック文化研究会(九州大学助教授・杉山あかし)が準備会と共同で、試験的に計測した結果では、男性がやや多いかも知れない、との結果を得たという。サークル参加者に関しては、第1回コミックマーケット開催当時から一貫して女性参加者が多い。時期によって男女の比率は大きな変動があるが、女性サークルが男性サークルを下回ったことはない。

このへんはぜひ実際に見てみないといけないわけだが、「売り手」側はもちろん、「買い手」側にも女性がかなりいるというニュアンスはわかる。聞くところでは、コミケの同人マンガでネタにされる原作としては「テニスの王子様」が一番多いのだそうだが、これもまた女性ファンのほうが多い作品だろう。でも、テレビなどで伝えられるコミケは、「萌え」「メイド」「猫耳」マンガに「オタク(男ね)」が群がるといったものばかり。すでにして思いっきりバイアスがかかってるわけだ。

しつこく書いとくと、80年代のアニメブームの際にも、人気の男性声優には多くの女性ファンがついていた。日本で声優のアイドル化が始まったころだ。これまたWikipediaから。

アニメの美男子キャラクターを持ち役とする声優が人気を集め、神谷明、古谷徹、古川登志夫らはスラップスティックというバンドを結成してライブ活動を行なった他、多くの声優がレコードを出すなどした。

というわけで、別に女ヲタが新しい現象だなどといっているわけではない。では何が新しいと思うのかというと、女ヲタの存在に対する社会の「認知度」や「受容度」がはっきりと上昇し始めたのではないかということだ。今まで、一定の年齢に達した女性は少女マンガを「卒業」するのが普通で、そうしたものに興味を示さない、あるいは興味を示すことは恥ずかしい、といった「社会的認識」のようなものがあったと思う。もちろんそういう趣味の人は以前からずっといたわけだが、それを表に出しにくい状況があったのではないかということだ。女性向けということでいえば、いわゆる「レディースコミック」みたいなのもあって、これも「恥ずかしい」系にはちがいないだろうが、社会の「認知度」「受容度」ということでいえば、現状ではあきらかに腐女子関連より上だろう。早い話、コンビ二でもレディコミは見かけるが、腐女子向け雑誌はあまり見ないし。

もちろん、男性の側も、それほど状況がちがうわけではない。ちょっと前まで、通勤電車の中でマンガを読むことは恥ずかしいふるまいとされていたし、いわゆる「萌え系」みたいなアニメやゲームへの嗜好をあからさまに出すことは、今でもそれなりに「リスク」を伴う行動だろう。ただ最近は、一般社会における認知度、許容度が以前と比べてよりはっきりと高くなってきているのではないかと思う。それはたとえば、「萌え」という「専門用語」が一般的に使われるようになってきていることなんかにも典型的にあらわれている。「電車男」のヒットがひとつのきっかけになったのかもしれないが、今は「特急田中3号」のように、鉄ヲタが主人公のテレビドラマすら放映される時代だ。

で、今はそれと同じ流れが、女ヲタ界にも起きつつあるのではないか、と思うわけだ。新しいのは、女ヲタの存在そのものではなくて、女ヲタに対する社会の「認知度」「受容度」の上昇なのではないかと。

しつこいようだが、文学論にも社会学っぽいのにもあまり興味はなくて、注目してるのは企業の動き。実はここからが本題なんだが、そういう社会の「認知」なり「受容」なりを反映して、女ヲタをターゲットにしたメディアがけっこう増えてきてるね、という話を書いときたかったわけだ。

雑誌でいうと、たとえば主婦と生活社の「女子専用アニメマガジン」である「PASH!」。もともと2004年9月に不定期刊のムックとして創刊されたのが最近隔月刊に「昇格」したわけだ。「新創刊」となった2007年5月号の表紙には「コードギアス 反逆のルルーシュ」のルルーシュとスザクが2人でいっしょに花束を持っている絵が。このほかにも、「ニュータイプ」の女性版である季刊「ニュータイプ・ロマンス」も2006年7月創刊。こちらの最新号は「今日から(マ)王!」のユーリが表紙。どちらも書店で手にとるのはいろいろな意味でハードルが高い。少なくとも私にとっては。このジャンルの雑誌はもちろんずっと前からあるが、数が増えるというのは市場の盛り上がりを反映してのものだろう、ということで。

当然ながら、こうした雑誌がとりあげる対象であるテレビアニメでも、女ヲタを意識していると思しきものがけっこう放映されている(「おおきく振りかぶって」もそうらしいのだが、このあたり趣味がよくわからんね)わけだが、このあたり、以前と比べて数が増えているのかどうかはチェックしていない。ただ少なくとも、今やってる「地球へ…」が原作マンガや以前の劇場版と比べてよりはっきりとやおいテイストを出しているというあたりは前にも書いたとおり。「一般女性」をターゲットとしているであろうフジ系の「ノイタミナ」枠のものとは確実にちがうジャンルなわけだ。

ラジオも負けてはいない。知る限り、地上波ラジオで最もアニメ系の番組が多いのは文化放送で、深夜帯は「A&G枠」と呼ばれ、アニメとゲーム関連の番組オンパレードとなるのだが、そこでも女性向け番組が増えてきているようなのだ。土曜の深夜というか日曜の早朝というか、その時間帯だとこんな感じ

21:00~23:00 A&G 超!RADIO SHOW~アニスパ!~
 (鷲崎健・浅野真澄)
23:00~24:00 A&Gメディアステーション こむちゃっとカウントダウン
 (櫻井孝宏・小清水亜美)
24:00~24:30 田村ゆかりのいたずら黒うさぎ
 (田村ゆかり)
24:30~25:00 RADIO アニメロミックス
 (新谷良子・後藤邑子)
25:00~25:30 神谷浩史・小野大輔のDearGirl~Stories~
 (神谷浩史・小野大輔)
25:30~26:00 コードギアス 反逆の山々DX
 (福山潤・杉山紀彰)

26:00~26:30 電撃大賞
 (森田成一・柏木貴代)
26:30~26:45 宮野・遊佐の鋼鉄三国志~らじお伝~
 (宮野真守・遊佐浩二 )
26:45~27:00 禁断のジューンブライド~ぼくたち6月30日に結婚します~
 (川本成・近藤孝行)

27:00~28:00 A&G Music Gallery
 (今俊郎)
28:00~29:00 桃井はるこの 超!モモーイ!
 (桃井はるこ)

ここに挙げた11本の中で、明らかに女性向けと思われる番組(要するに出演者が男性だけのもの)が4本ある。中でもご注目いただきたいのが、午前2時45分から3時までやってる「禁断のジューンブライド~ぼくたち6月30日に結婚します~」。3月の番組表が手元にないので確信はないが、たぶんこの番組は4月から始まったものだと思う。出演は川本成・近藤孝行の2人で、この2人が「結婚」するまでを即興劇で演じるという番組らしい。

…。

というわけで、こっち方向の市場への注目が今後高まっていくのではないか、という話。腐女子が主人公のテレビドラマが放映される日も近い、かも。なにをいまさらそんなのあったりまえじゃんという方、面白い話などあれば、ぜひご教示いただきたく。

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Tracked on August 19, 2007 at 10:51 PM

Comments

http://ja.wikipedia.org/wiki/7月24日通りのクリスマス
この映画なんかそうじゃないですか?興行的には成功と言えないですけど。

Posted by: buzz | May 05, 2007 at 09:46 AM

日本のマンガ・アニメの特徴の一つに、「大人への入り口」というのがあります。

アメリカなどでは子供の世界と大人の世界は断絶していて、「卒業」しないと大人になれないですが、日本では子供の頃の趣味をそのまま成長に従って持ち上がっていきます。これがもの凄く大きな消費者層を形成することになり、なおかつ納得すればお金を払う「買い支える」消費者層を作っています。

アニメを作る側では、情操教育を念頭に置いているところもありますからね。劇場版「ドラえもん」などが特にそうですね。

で、女性に関してもこれが当てはまってて大きくなっても雑誌、単行本を買うというひとがかなり多いわけですね。

同人誌は女性のほうが作り手が多かったのは資料の通りです。801をはじめとする文化も「腐女子彼女」とか「となりの801ちゃん」とかが10万部を超える大ヒットになったことから、「ここにいてもいいんだ」と表に出てきているのだと思います。

女性のほうが一つのジャンルに固定する傾向があるようです。

Posted by: まお | May 05, 2007 at 11:34 AM

古くは宝塚ファンなどもヲタク趣味の一つといえなくも無いでしょうか。40年通いつめている、と言うケースもあるような。

腐女子とまではいかないですが、あの世界も独特ですしね。

この手のフィクション世界に大人がはまり続けるというのは日本の伝統かも(源氏物語までさかのぼれるとは言いませんが)。

Posted by: skywolf | May 05, 2007 at 02:08 PM

コメントありがとうございます。

buzzさん
あ、ありましたね。あの映画見てないんですが、主人公はヲタなんですか?

まおさん
確かに出版界は一歩先を行っている感じですね。広告料に頼らないビジネスモデルのおかげだと思いますが、今後の動向に注目したいところです。

skywolfさん
ヅカファンとやおいとの関係についてはよくわかりませんが、どなたか調べてる方がいそうですね。似てるようにも見えるし、逆じゃんという発想もあるし。

Posted by: 山口 浩 | May 06, 2007 at 09:59 AM

どうもはじめまして。ちょうど腐女子に関するエントリーを書いたのでトラバさせて頂きました。

つい先日『水10!』という番組で「こんな女は超嫌われる2007」というスペシャル放送をしており、その中で「腐女子のふーちゃん」というコントがやってました。これも腐女子が表舞台に上がってきていることの1つの証明かなと思いました。

ただ危惧すべきは、腐女子を意識しすぎた作品作りがされてしまうことですね。良識ある腐女子の方々はそういう所に敏感で、逆に萌えられないという人も多いようですし。

Posted by: Rika Takahashi | May 07, 2007 at 01:02 AM

Rika Takahashiさん、コメントありがとうございます。

トラックバック先読ませていただきました。上記の本文で「おおきく振りかぶって」がわからないと書いていますが、女性的には「友情」萌えというわけですね。やっとわかりました。腐女子業界にはうといので今後ともご指導いただければと思います。さしあたっては、「良識ある腐女子」とそうでない腐女子とのちがいがどのへんにあるのかよくわからないんですがどうなんでしょうか。あまりやおい色全開のものはだめ、ということなんでしょうか。その観点からすると、今やってる「地球へ…」あたりはどう映るのでしょうか。すいません質問ばかりで。

Posted by: 山口 浩 | May 07, 2007 at 01:23 AM

Rika Takahashiさん
あっ!ひょっとして「良識のない腐女子」というのは「美形キャラだというだけで萌える腐女子」のことですか?

Posted by: 山口 浩 | May 07, 2007 at 01:25 AM

単に百合系が以前よりも脚光を浴びやすい状況になっただけで比率自体は、それほど変わらないような気もしますが。

Posted by: オズマ | May 07, 2007 at 01:01 PM

オズマさん、コメントありがとうございます。
本文に書いてあるのですが、女オタクが増えたといっているのではなく、女オタクに対する社会的認知や受容が上がってきたという趣旨ですので、ご指摘の事項と変わらないように思います。

Posted by: 山口 浩 | May 07, 2007 at 01:32 PM

あ、お返事ありがとうございます。わざわざ拙文を読んで頂いたようで何だか申し訳ないような。

御質問の件ですが、基本的には山口様の認識で間違っていないと思います。実際には複雑な事情が絡み合っているので一口に言うのは難しいのですけど。2ch同人コミケ板で生まれた『がっちゅん☆』という擬音語に関する腐女子の方々の会話を見ると、何となく雰囲気が掴めるかもしれません。
http://piza.2ch.net/doujin/kako/962/962873836.html の649以降です。

『地球へ…』は未見ですので、細かい点については分かりませんが、原作付作品にやおい的狙いを挟もうとする場合、そもそも原作を改変すること自体に抵抗を感じる人がいるという点と、更に狙いがあからさま過ぎて商業的ないやらしさを感じるという部分があると思います。うまい例が見つかりませんが、この辺りは私の方でももう少し考えてみたいですね。

Posted by: Rika Takahashi | May 07, 2007 at 06:57 PM

Rika Takahashiさん
2ちゃん読みました。印象としては、「良識ある腐女子」は自分たちの妄想を外部にさらしたり人に押し付けたりすることをよしとしない、という感じがするのですがいかがでしょうか。自分たちの妄想は自分たちの中だけにとどめておこう、みたいな。でも「がっちゅんがっちゅん」してやりたい連中は、身の程もわきまえずにそうした妄想を臆面もなく外部に出したり、対象となった当人たちに押し付けたりすると。そのうえ絵もヘタレだと。
もしそうだとすると、「良識ある腐女子」の皆さんは、「女ヲタの時代」なんてものが来ることを望んでないということになるんでしょうか。自分たちは「日陰の身」でいたいのに、と。

Posted by: 山口 浩 | May 07, 2007 at 10:26 PM

そうですね。私の考えも同様です。『萌えプレ』さんが5月6日にこのエントリーを紹介されていますが、それにつけているコメントが
>●「女ヲタ」の時代が来たのかもしれない
>来て欲しくなかったです…。
といったものだという点は、こういった心理が働いているのではないかと思っています。昔見た2chの腐女子の方の発言で今でも覚えているのが、『私たちは勝手に萌えて楽しむから、腐女子ウケを狙ったりしないで、いいものを作ってほしい』というものです。これは今の状態をうまく表現していていい指摘だと思いますね。そういう点で言えば、『日陰の身でいたい』というよりは、『きちんと住み分けていたい』という感じでしょうか。

Posted by: Rika Takahashi | May 08, 2007 at 05:34 AM

Rika Takahashiさん
なるほど「きちんと住み分けでいたい」ですか。きっと男のヲタの中にも、同じように感じている人はいるのかもしれません。昔クラリスだのラナだのに萌えていた人たちは、現在のベタな萌えキャラをあまり快く思っていないかも、と。だとするとこれから住みづらい世の中になるかもしれませんね。お気の毒ですが、一方で自分たちの趣味を社会に認めさせたいと思うタイプの人たち(「良識がない」と思われるかもしれませんが)にとってはいい時代でしょうから、いちがいに悪い方向と言い切ることもできないかなと思います。
「地球へ…」について補足しときます。もともと竹宮恵子原作であり、きっと当時からそちら方面で取り上げられていたにちがいないわけですが、原作マンガやかつて映画化されたものでは、作り自体にやおい志向は特段感じられませんでした。きっと皆さん「勝手に萌えて」いたのでしょう。しかし今やっているテレビアニメ版では、オープニング映像を見ただけでもやおい志向としか見えない部分が連発されています。で、時代の差だなぁ、と思ったのが、上記の本文を書いた動機の1つです。
ともあれありがとうございました。またいろいろ教えてください。

Posted by: 山口 浩 | May 09, 2007 at 04:21 AM

いえいえ。こちらこそ勉強になりました。ありがとうございましたー。

Posted by: Rika Takahashi | May 09, 2007 at 08:41 AM

はじめまして。通りすがりで失礼します。
最近の傾向をビジネスとしてみると、「女ヲタは良い消費者」という認識が業界にあるのではないかと思います。TVやP2Pで見るだけ見てDVDを買わない男オタよりも、好きなキャラのためにグッズを買いあさってくれる女ヲタの方が利益を回収できる見込みが高く、ガンダムSEED」「ハガレン」「Blood+」といった作品が収益を上げたことで2匹目のドジョウを狙った作品が増えた、と。アニメの現状がエロゲ原作、ラノベ原作といった手堅く消費者をつかめる作品に流れているのと同じですね。
金が流れる方に注目が集まるのが当然の帰結で、それが「女ヲタ」を取り上げる機会の増加に繋がったのではないかなーとか思ったりします。

Posted by: wickerman | May 09, 2007 at 10:35 PM

Rika Takahashiさん
ありがとうございました。

wickermanさん
男女ヲタの消費性向のちがいについては、ぜひデータがほしいところですね。誰か調べてくれないかなぁ。

Posted by: 山口 浩 | May 10, 2007 at 02:44 PM

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