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食肉偽装をめぐる不謹慎かつ「前向き」な素人考え

最近話題の食肉偽装事件なんだが、以前からつらつら思っていたことの「実例」がまた1つ、という不謹慎な思いがふつふつとわいてきてしまって。

人間の味覚ってこんな程度なんだねぇ。

今回の件、後の参照のために概要をニュースから引くとこんな感じ。

原料、産地、ブランド、賞味期限…。ウソの表示が相次ぎ発覚した食肉加工販売会社「ミートホープ」(北海道苫小牧市)の食肉偽装に二十四日、北海道警の捜査のメスが入った。(中略)
指摘されている主な疑惑は(1)ひき肉原料の偽装(2)産地偽装(3)ブランド偽装(4)賞味期限の偽装-。いずれも仕入れ費用を下げ、利益を増すのが目的だった。
記事

なんだか他にも、水を加えてかさを増やしたとか、雨水で解凍したとか、いろいろ。こんなに手口があったのかと思うぐらい。メディアでは連日「けしからん」の大合唱で、それはもちろんその通り。原料を偽装された肉をアレルギーの方なんかが知らずに食べてしまったらしゃれじゃすまないし、衛生面だってひどいもんだ。ニセモノに高い代金を払わされていたことへの怒りは誰しもが共有するだろう。

それらをすべて、ちょっとおいとくとするなら、だが。

味に関する苦情はもちろんあったんだろうが、これらの手口が今まで何年も生き延びてきたことを思えば、苦情が殺到という状況ではなかったんだろう。ミンチになってたり、調理段階でいろいろ加工されたりしてたからしかたないのかもしれないが、それにしたってかなり多くの人が、これまでそれとは気づかずに食べていたわけだ。それに、食べる側はともかく、納入された材料を使って調理をした食品メーカーの方々はプロではないか。その人たちがころっとだまされてしまったんだから(そうなんだよね?まさか、知ってて黙認したなんてことはないよね?)、それなりの出来ではあったわけだ。

世の中には、ちがった材料を使いながら、見た目や食感、味なんかを本物と似せて作った食品というのが存在する。カニかまみたいにすぐわかるものも多いが、いくらに似せた人工いくらなんかは、ちょっと目には見分けがつかないくらいだ。うろ覚えだが、確か精進料理にもそういう類のがあったんじゃなかったっけ。それに、「本物」の材料を一部だけ使って、残りは別の材料で補うタイプのものならもっとたくさんある。アイスクリームに対するアイスミルクとか、ビールに対する発泡酒とか。その種のものが作られる理由はいろいろあろうが、代表的なものは比較的高価な原料を節約する、ということだろう。それって今回の偽装事件とも少し似てるよねぇ?

とすると、今回の食肉偽装の中で、別の原料のみを使ったり牛肉に混ぜ込んだりして「ニセ牛肉」を作り出す製法は、今回のように「偽装」として行うのではなく、あらかじめ知らせたうえで使うのであれば、「牛肉味の代替品」として市場でそれなりの位置を占める可能性がなかったのだろうか。たとえば本物の牛肉は高いけどあの味が好きという人にはこれとか、牛肉アレルギーの人が牛肉味を食べたいときも豚肉のみで作った「擬似牛肉」なら安心、みたいな。素人考えだけどさ。

食肉偽装というと、数年前の産地偽装を思い出したりもする。あれはふつうの人の味覚では見分けがつかないといわれても納得したわけだが、今回のはそもそも材料がちがうわけで、ある意味目ウロコであると同時に、「やっぱり」という思いもある。人間の味覚がこの程度だということをあまり認めたくない人もたくさんいるだろうが、「前向き」にとらえれば、一種の「イノベーション」といえなくもない。もちろん、今回の偽装を仕組んだ人たちの責任を軽くするものではぜんぜんないけど。

要するに、自他ともに認める味覚オンチの私としては、「ひどい話だよね」と同時に、「なんだ人間の味覚ってやっぱりこんなものなのかぁ」みたいな部分があって、ちょっと複雑な心境なわけだ。少なくとも私は、偽装牛肉を口にしてもたぶんわからなかっただろうと思う。世にあまたいるであろうグルメの皆さんは、「自分はだまされないね」という自信があるんだろうか?ちょっと聞いてみたい気がする。

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Comments

まったくその通りですね。と思って周りを見ると、私ってまがい物の中で生活してますよね、着てる服は化繊、飲みものの容器はプラスチック、食べてるものには食品添加物、提げてるバッグはブランドまがい物。
だったら食肉偽装だってOK、なんだけど問題点は表示を偽り、不正に利益を上げていた、と言うところですね。

Posted by: 井筒@3匹の猫と暮らす | June 30, 2007 at 08:42 AM

井筒@3匹の猫と暮らすさん、コメントありがとうございます。
食べ物のまがいものって、なかなか受け入れにくい部分もありますよね。特に「食べちゃったけど気づかなかった人たち」にとっては。許せないんだろうなぁ。

Posted by: 山口 浩 | July 01, 2007 at 01:52 AM

初めまして。「あわせて読みたい」でたどり着きました。
 食肉加工関係の友人に言わせれば,肉の風味というのは基本的に脂の味なので,そいつを混ぜれば騙されてしまうというのは当たり前なんだそうです。自然食品では,牛の脂を注入された豚肉なんてのは存在しませんから。今時,海外牛肉に日本人が好きな霜降り用の脂を注射器で注入するなんてのもやられてますから,食肉業者さんとしては騙せるであろうことは基本的な知識の範囲だと思います。新鮮な材料を使って誰も騙さないとしたら,一種の裏技料理の下ごしらえですよね。そういう商品にすれば・・・価格はもっと落とさなければならないでしょうけど,堂々と売れたかも知れません。
 あそこまで「研究」を重ねて数十年前の感覚のまま非合法路線を突っ走るというのは,一種の犯罪者的才能だと思いますが。

Posted by: complex_cat | July 04, 2007 at 11:52 PM

complex_catさん、コメントありがとうございます。
なるほど業界の人にとっては「常識」なんですか。
かねがね思ってるんですが、どうも一般に人は、「実際には味なんかよくわからない」という現実を認めたがらない傾向にあるのではないかと思います。いや本当にわかる人もいるんでしょうけど。ひょっとしたら、そういう人にとっては、豚肉を混ぜた「擬似牛肉」というのはなかなか受け入れにくいのかもしれません。ただ、発泡酒とか第三のビールとかが受け入れられている現状からすれば、やり方はあったのではないかと。

Posted by: 山口 浩 | July 09, 2007 at 04:25 AM

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