街角でパンをくわえた人に出会った話
小ネタ。急いでいるので朝食のパンをくわえて家を出る、というのがある。アニメやらゲームやらでよくあるパターンだ。典型的には曲がり角で誰かにぶつかって、その人に後でまた出会うという例の流れになるわけだが、実際にはありえねーよ、と考えるのが一般的だろうと思う。
ところが出会っちゃったのだな。パンをくわえた人に、街角で。
朝歩いていて、とある交差点を渡り終えたとき、その人は現れた。角ではなく、前から。ただ、道路がやや曲がりぎみになっていたので、近くにきて初めて見えるようになったわけだ。くわえていたのはトースト。これは「セオリー」通りだな。ただ、走ってはいなかった。メールでもチェックしていたのか、携帯電話を手にして歩いていた(追記。「食べながら歩いていた」のではない。そんな人はいくらでもいる。「パンをくわえて」いたのだ。つまり、パンから手を離している。やってみればわかるだろうが、この状態で食べ進むことはできないから、口は動いていない。こういう人は珍しいと思うぞ)。歩くぐらい余裕があるんだったら食べてから出ろよ、という気がしなくもないが。当然、勢い余ってぶつかることもなく、すれちがった。私は、あまりの驚愕に思わず立ち止まってまじまじと見てしまったのだが、その人は気づくこともなく。
「運命の出会い」かもしれなかったのに、という状況と思われるかもしれないが、それはない。相手がどう思ったかはさておくとしても(そもそも気づいてもいなかったろう)、そもそも視線がパンに集中していたために、私自身がその人の顔をまったく見ていなかったのだ。女性だった、ことは覚えているが、どんな背格好で、どんな服装をしていてなど、外見についてはほとんど記憶がない。当然、仮にもう一度すれちがったとしても、その人とはわからないだろう。
人間、なにごとも経験だと思う。今回わかったことは、アニメやらゲームやらでよくある「あの状況」が現実にあったとしたら、「人がパンをくわえて走っている」という状況そのものの異常さのほうが気になって、くわえていたのがどんな人かということにまで関心が及ばない可能性がある、ということだ。とすると、そういう「奇跡の体験」をするための障害は、「パンをくわえて家を出る」「曲がり角でぶつかる」「その人と後で出会う」という偶然だけじゃないわけだな。
こんなこと発見して何の役に立つんだといわれれば、何の役にも立たないけどさ。こういうのって誰かに伝えたくなるじゃん?
というわけで、小ネタ、終了。
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Comments
やまちゃんの驚いた顔が目に浮かびますよ。
手は携帯してたから、パンはくわえた状態・・なるほど。
しかも女性だったんですね、顔見る余裕もない一瞬だったんですか。
パンくわえながら化粧なんてのもそのうちにあるかも。
Posted by: west side | June 04, 2007 09:55 AM
やまちゃんの驚いた様子を想像しちゃいましたよ。
女性だったんですね、そのうちパンをくわえながら化粧中の女性に出会うかも・・・・。
Posted by: west side | June 04, 2007 09:59 AM
女性かぁー。私の”セオリー”だと男性でないと、しっくりこないなー
Posted by: のひ | June 06, 2007 10:48 AM
コメントありがとうございます。
west sideさん
歩きながら化粧、の人は何度か見たことがあります。
ただ、歩きながらパンをくわえて化粧というのは、常人にはかなり高度な技ではなかろうかと思います。
のひさん
あ、そうか。男性のほうがしっくりくる、という人もいるんでしょうね。そのスジの専門家の皆さんでぜひ議論していただきたいものです。パンをくわえて走るのは女であるべきか男であるべきか。アニメ史からの視点、物語論からのアプローチ、日本文化との整合性、ジェンダー論的な議論、走りながら食べたパンの消化特性からみた論点、いろいろな考え方があろうかと。
Posted by: 山口 浩 | June 06, 2007 04:19 PM