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暴論:官僚システムを選べないことが問題なのではないか

日経BPのサイトにある「田原総一朗の政財界「ここだけの話」」に、「争点なき参院選に絶望した財務省若手官僚からの電話」という文章が出ている。

この領域は詳しい方がたくさんいらっしゃるので、あくまで私的な暴論ということでつらつらと。

なんでも、

先週、財務省の官僚だという27歳の青年から、田原さんに聞きたいことがあると僕の事務所に何度も電話があった。

のだそうだ。で、何なのかというと、

彼はいきなり「選挙というのはいったい何なんですか?」という。どういうことか聞くと、「今度の参議院選挙では、日本国にとって、あるいは国民にとって、大事なことは何一つ争点になっていない。どうでもいい問題ばかりが争点になっている。これはなぜなんでしょう」ということだった。

という趣旨。「大事なこと」というのは、財政、少子化、地球環境、6カ国協議などを指している。一方「どうでもいい問題」は「政治とカネ」やら「年金を社保庁がむちゃくちゃにしたとかいう話」だそうだ。どういうふうにどうでもいいかというと、

年金の問題はすでにケリがついている。むちゃくちゃにしたのは明らかなので、国民が損をしないように処理することで、与野党が一致している。

で、事務所費のほとんどは「選挙区からやってきた有権者の飯代」であったと。

飯代はおいといて、この、年金問題の「すでにケリがついている」っていうのがなんだか新鮮。いいたいことはわかるんだけどさ。こういう認識なんだな。省がちがうとまるで他人事。怒ってる側はどの省かなんて関係なく、政治家も自治体も含めた「ものごとを決めてるえらい人たち」全体に怒ってるのにね。統治機構全体に対する「信用できない」「だまそうとしてるんじゃないか」みたいな不信感が問題の本質なのにね。

田原氏はこの若手官僚氏の意見に同意しつつ、

「あなたのいうことはもっともで、それは大事な問題だ。だが、残念ながら今の日本は大事な問題を論議するような状況にない。それは日本に二大政党がないことが原因だ」

と答えたそうな。二大政党制でないゆえに、野党は与党への批判しかできず、スキャンダル追及ばかりになるのだ、と。このあたりのロジックについてはいろいろな意見があるだろうが、もしこれが正しいのだとすると、二大政党制だけだと不充分なんじゃないかな。

本来、選挙で選ばれた政治家が官僚機構を指揮していくしくみなんだろうけど、実際には行政ってかなり専門的だから、政治家にはなかなか手が出せない。結局、どんな政府であろうと、実際にはその下にいる身分保証された同じ人たちが、同じようなやり方でものごとの大半を動かしていくしくみになってる。こういう「代替がきかないからしかたなく」ということに対するフラストレーションって、今の「空気」の中で重要な要素だろうと思う。

そういう点からすると、政治家だけでなくて、官僚機構も複数の選択肢から選べるようになっていたほうがいいんじゃないか、なんて思ったりする。そんなことできるわけないじゃんというのが正論なんだろうが、そのうちの少なくとも上のほうは、選挙のたびにごそっと入れ替わるぐらいの勢いでいいんじゃないか。最近は人材バンクとかいう話もあることだし、シンクタンクとか大学とか民間企業とかとの間で行き来するような流れができたら、ノウハウの逸失みたいな心配をする必要もあまりなかろう。そうなれば、競争原理が働いてガバナンスもモラルも向上するだろうし、政策論争もずっと有意義なものになるような気がする。

その意味からすると、「キャリア公務員が定年前に辞める慣行がいけない」とかいう話もあるけど(個人的にもそう考える部分があったりするけど)、むしろ自衛隊の2等陸・海・空士みたいな任期制とかにしてしまったほうがいいのかも。どうせほとんどみんな定年前に辞めるんでしょ?そうしないと人事運営に支障をきたすんでしょ?そうしないと人件費が上がっちゃうんでしょ?だったら任期制でいいじゃん。

※2007/7/31追記
bewaadさんのところでネタにされていて光栄なことである。「政権交代の度に大規模な幹部の首のすげ替えが行われていた」ことを知らないわけないじゃんというつまらない論点はさておき(「大規模」というとらえ方自体がいかに無風であるかの傍証かと)、つまりこれはキャリア公務員を任期制にするという案に対する支障はあまりないというお墨付きをいただいたことになるわけで、たいへん心強い限り。確か天下りに関連して、役所には体力のある若い人材が必要という話をされていたかと記憶している。その点自衛隊と似ているわけだから任期制との親和性は高いし、今計画中の新人材バンクとやらもさらに有効に活用できようというもの。「政府与党に対する信頼の喪失という大事なことが争点に」という巧みに身をかわす技はいつもながら見事だが、こういうのって社会保険庁の問題を他人事とみる姿勢と共通の根っこといえるのではないか。別に二大政党がソリューションであると信じているわけではないが、かといって現状を「改善の余地なし」とする気もない。暴論的な私論でいえば、問題の本質は「正しい方策は何か」ではなく「どうすれば納得するか」であり、そうなると「どう変えるか」より「変えること」自体のほうが大事だったりすることもあるのではないかなと。壮大なる無駄を主権者として目をつぶるなら(ほっといたって無駄遣いされてるんだし)、かなりのことができるんじゃないかと思う。

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Tracked on July 31, 2007 at 12:48 PM

Comments

「官僚機構をアウトソース+一定期間おきに国民の全員投票で成果を評価してアウトソース先を継続するか切替えるかを決定」みたいな仕組みを昔のSFで読んだときは、「そんなこと出来るわけないじゃん」と思ったものですが、いまのネットワークがこのまま成熟すればあながち不可能でもないかもと思ったり。

Posted by: 投票済 | July 29, 2007 at 11:14 PM

投票済さん、コメントありがとうございます。
結局、仕事についていない期間の官僚たちをどうやって養うかという問題なわけです。アメリカですと大学とかシンクタンクとかがやってるわけですね。社会全体のジョブモビリティが上がってくると、そのあたりは解消されていくのかもしれません。トップクラスの人たちこそ、雇用の流動化がメリットになりうる層ですから。

Posted by: 山口 浩 | July 30, 2007 at 10:58 AM

任期制いいねぇ。課長級以上のキャリア官僚は全員それでいってほしい。給料は国会議員ぐらい出して。

Posted by: き | July 30, 2007 at 06:54 PM

きさん、コメントありがとうございます。
あまり「お役人いじめ」みたいに見られるとちょっと心外なんですが、キャリアのあり方と給与システムの関係はもう少し考え直してもいいかも、と思ったりします。

Posted by: 山口 浩 | August 01, 2007 at 01:05 AM

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