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ボットはネット世論の夢を見るか?

先日出た「検証:ポピュリズムか集合知か ネット選挙の行く末」というイベントの際に、「ネット世論オプティマイゼーション」ということばを使ったらなんだか一部で受けたらしい(参照:ガ島通信)。あの場で話を聞きながら思いついたことばだが、それまでもやもやしてたのがあのときふっとことばになった感じがする。

そもそも、ちょっと前からネット世論に関して気になることがあった。私よりずっと前から気づいてた人も多いと思うけど。

前からブログをやってる人は皆感じていると思うが、トラックバックという機能の「価値」は、最近大きく変化している。電子メールがスパムメールの氾濫で通信手段としての価値を低下させたのと同じ理由で、スパムトラックバックがとんでもなく増えている。私の場合でいえば、どう低く見てもトラックバックの9割以上がスパムだ。

特に最近は、例の「在宅ビジネス」のための自動化ツールがどんどん出てきて、いくつもいくつもブログを立ち上げ、あちこちのブログなんかからフィードを集めて記事に仕立ててあちこちにトラックバックを飛ばしまくるところまで自動でやってしまう。こうなると、トラックバックがありがたいなんて思う度合いは大幅に下がってしまう。

もちろん、実際の記事をみれば自動化ツールだなとすぐわかるわけだが、記憶をたどれば、他の記事の抜粋とリンクからできてるウェブページなんてのは、ちょっと前までは人間様が嬉々として作ってたものなわけで(今でもそうやって作ってる情報系のサイトとかあるよねぇ)、せちがらくなったなとお嘆きの向きもあるかもしれない。この分だと、Googlezonじゃないけど、そのうちすぐにコメントやら感想やらまで自動生成するようになるね。

こういう状態というのは、ブログ界を仮想世界とみれば、人間の間にロボットが入り混じっているような感じといえようか。オンラインゲームでは、プレーヤーの間にRMTなど商業目的のボットが入り混じっているような状態がよくあるが、ブログ界にも晴れて進出、なわけだ。

最近はブログ記事を解析して世論の動向をみようなんて動きが学界でも産業界でもさかんなわけだが、こういう「ボットブログ」の存在というのをどのくらい考慮してるのか、気になる。ブログ検索エンジンは、人が書いてるブログとボットが書いてるブログを区別できるんだろうか。ボットブログって、ブログ界の中でどのくらいのプレゼンスがあるんだろうか。ボットブログを解析して得られた「消費者動向」とか「ネット世論」とかの価値ってどのくらいあるんだろうか。もちろん、ボットがネットの情報に対して「中立的」に行動してるとすれば、世論への影響に関しても中立といえるのかもしれないけど。

とはいえ、ボットブログが氾濫するのが現実であるとすると、それに対してさらに最適化を狙うのが当然の動きとなろう。もしボットブログがネット世論の重要な一部を形成するのであれば、ボットブログに取り上げられやすい情報発信をすることで、ネット世論を自らの有利に展開できる可能性がある。シンポジウムでの「ネット世論オプティマイゼーション」はこの意味で使ったことばだ。略して「NYO (Net Yoron Optimization)」と(なんかすげぇ適当)。「ボットブログ・オプティマイゼーション」(これは「BBO」か?)と言い換えてもいいかもしれない。こうなってくると、お気楽に中立とかいってはいられない。

ビジネス面では、NYOはもちろんSEOの延長線上にある。人が情報にたどりつくルートとして検索エンジンを使うということでSEOが重要とされてきたわけだが、もし人が、ブログに出ている論評とか口コミ情報とかを集約するネットツールを情報の入口として使うようになるなら、それにも対応するのは当然。基本的にネット世論は、情報発信者による恣意的な情報操作には向かないとは思うが、ネット世論で広まりやすいテーマや表現媒体、表現形式を工夫したり、いろいろやれることはあるだろう。実際、ボットブログではそのときどきのニュースを織り込んだり、あちこちに引っかかりやすそうなキーワードとかタグとかをつけまくったりしてるわけで。

ここでの問題は政治方面への活用で、これも今後出てくるかもしれない。シンポジウムのテーマだったネット選挙に関して言えば、ボットブログに党名や党首名をとりあげられやすい方策をとって、ブログ世論で話題になっているかのような印象を人に与えることができるかもしれないし、逆にスキャンダルに対するネガティブな書き込みをボットブログに広めさせて、「逆風」を演出することもできるかもしれない。法律との関係はもちろんあるだろうが、この種のものには必ず抜け道がある。まさに「情報戦」。かなり生々しいというかおどろおどろしいというか、そういう世界がありうるわけだ。

ただ、ネットにネガティブな情報が流れたとしても、必ずしもマイナスとは限らない。たとえば今回の参院選で話題になった、民主党小沢代表のニコニコ動画の件。運営側の「努力」にもかかわらずあちこちで思い切りいじられまくったわけだが、あれだってひょっとしたら、「度胸あるじゃん」とか「ネットへの理解があるじゃん」とプラスに評価した人がけっこういたかもしれない。ポジティブな情報をネガティブに受け取る人だってたくさんいる。逆だってあるはず。そこらあたりの加減が今後の政党の「ネット戦略」のカギになったりするかもしれない。

今回の参院選ではネットの影響があんまりなかったというのがシンポジウムでの皆さんのご意見だったけど、ひょっとしたらそれは、ネットの情報とメディアの情報が近づいて、あまり差がわからなくなったからかもしれない。それはマスメディアがネットの情報を拾うようになったせいもあるだろうし(これって最近多いよね)、逆にネットがマスメディア情報の拡散装置として機能したせいでもあるだろう(これは前から言われてる)。で、後者の中には、今でもボットブログみたいなものの影響力が多少なりとあるような気がする。今後はさらに大きくなるかもしれない。ネットによる選挙運動の解禁みたいな話があって、基本的に私は賛成なわけだが、その場合は各政党が本気でNYOをやるようになるということを前提として考えておく必要があると思う。


※参考
「ネット世論に信憑性はあるのか?」インターネット選挙の今後を議論
シンポ「ネット選挙の行く末」無事に終了しました

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