動画投稿サイトと画像検索
YouTubeに続けと動画投稿サイトがあちこちにできてきて、まあ少なくとも企業的には活況というべきなんだろう。たいへんけっこうなんだが、ぱらぱらとみていて、なんか妙な既視感がある。動画サイトそのものが、ではなく、なんというか、あたりに漂うのんきな感じが。
別に画期的な指摘をしようとかいうことではないのであらかじめ念のため。むしろ誰もが考えるはずのことだと思う。
動画投稿サイトの代名詞になりかかっているYouTubeとか、最近どんどん人気が高まってるニコニコ動画とか、動画投稿サイトというと、どうしても著作権が気になるコンテンツが少なくない、という印象がある。実際その通りなわけだが、とはいえそうでない動画もたくさんあるし、中の人が全部チェックしてから公開するなんてご苦労なことをやってるサイトもある。
で、権利関係がクリアな動画というと、どうしても自分やその仲間が録ったもので、しかもその当人たちが登場しているものが多くなるわけだ。こういう動画もたくさんあって、面白いやつなんかはものすごいアクセスが集まったりしてる。韓国あたりだとこれで小銭をかせいでる人なんかもいると聞く。これまたたいへんけっこう、なわけだが。
そういう動画の中では、登場人物も匿名だったりすることが多い。まあ当然といえば当然。特に、恥ずかしい系、面白い系の動画だと、実名を出す必要もないし、出したくもなかろう。で、名前が出てなければいいや、と安心して、おバカな姿までさらしてしまったりするわけだ(たとえばYouTubeで「おバカ」と入れて検索すると、こんな画像が見つかった。ご自分で「おバカ」とタイトルにつけておられる。失礼ながら、確かにおバカな映像としかいいようがない)。
ともあれ。
こういう状況をみると、思い出すものがある。「ホームページ作り」が流行りだした90年代の状況だ。インターネットが使われるようになって、個人が「ホームページ」(当時はこういう言い方をした)を立ち上げることが流行となったわけだが、当時は個人のプライバシーもなんのその、顔写真つきで自宅の住所と電話番号なんかを載せてるページだってめずらしくなかった。
似た状況はちょっと前のSNSにもあったのは記憶に新しい。そもそもSNSの当初のふれこみは、知り合いを登録するものだから、プライバシーの問題はあまり生じない、というようなことだったと思う。今でもその名残が残っていて、時折mixi日記でプライバシーがらみの炎上事件とかが起きたりもする。あと、最近だと携帯電話のプロフのサイトにも危なっかしくて見ていられないものがたくさん。
いってみれば、これはそれぞれのネットメディアにおける「古きよき時代」なわけだ。こうした「楽園」は、ほぼ例外なくやがて消滅する運命にある。人の数が増えてきて閉鎖性が失われるという要素もあるが、同時に、検索機能によって、あまたある情報の中から「目指す情報」を瞬時に拾い出すことができるようになったことも重要だ。最初は内輪だけだと思っていても、だんだん人数が増えてくると必ず悪意のある人の入り込む余地が生まれる。悪意をもって検索機能を使えば、ネットのあちこちにちらばった情報を集めてくるなんてことも簡単。別のところに置かれている情報だから安心だと思っていたのにあっという間に探し出されてしまったという類のトラブルは山ほどある。
動画投稿サイトでも同じようなことは生じるだろうか。
今のところまだ、有名人でもなければ、簡単にはそういう事態は起きそうにないように思う。たいていの場合、動画に映っている人たちの名前なんかは、見ていてもわからないことが多いし、それがどういう素性の人なのかはもっとわからない。とはいえ、だからまあ安心だよね、と片付けてしまうのは、これまで無数に発生した、他のネットメディアにおける情報暴露の被害者たちの教訓から学んでいないことになる。こういうのって、何年も残るんだよ?10年くらいたって偉くなった後で昔のやんちゃを暴露される、なんて事態は今でもあるんだろうけど、それが動画でより容易に、より「効果的」になるわけだ。
それに、このあたりのカギになる、顔による検索機能は実用化まであともう一歩のところまで来ている。たとえ名前その他の属性情報がわからなくても、「この顔は」と検索すれば、その顔が映ってる写真や動画を検索してくれるサービス。Riyaはすでにβテストを開始している
(参考)。現時点でどのくらい実用的なのか詳しくは知らないが、少なくともそれほど遠くない将来時点で、かなり実用的なツールになっている可能性がある。
となると、そうした機能を使って、おバカな動画を見つけるたびにその顔で検索をかける人が出てくるのも時間の問題ということになろう(いつの世にもひま人はいるもんだ)。「表の顔」では実名で活動している人も少なくないから、どこかで見つけた「裏の顔」とマッチングされると、困る人が必ず出てくるはず(そういえば、どこかの医大の「とっても楽しそうな」忘年会の画像というのを見たことがあったよなぁ)。
となると、動画投稿サイトに不用意に顔をさらす行為は、たとえ匿名であっても、「ホームページ」に名前や住所を載せる行為とさして変わらない無謀なふるまいとされる状況がくるのではないか、ということになる。
そういう動きに対応して、名前にハンドルネームがあるのと同じように、顔についても、「生身」の顔をさらさないですむようなツールが登場するかもしれない。プリミティブなやり方としては「お面」みたいなのということになるんだろうが、皆にお願いするわけにもいかないし、「笑い男」じゃないが、やはりここは電子的に処理するほうが望ましいか。画像から表情を読み取って、自動的にアバターの表情をそれにあわせて変化させていくなんてのも、近いうちにできるだろうし。これって、アバターの実用的な用途の可能性を示すものになるかも。仮想世界と強化現実(AR)技術を結びつけると面白いんじゃないか、と最近あちこちで言いまくってるんだけど。
このあたりは専門家の方々のご意見をぜひ伺いたいところ。ぜひご教示いただければ。
余談だが、「山口浩」でYouTubeを検索するとこんなのが出てくる。これは番組収録直後でややハイになってるとはいえまあそれほど「おバカ」ということもないし、同意してるわけだからいいんだけどね。
今のところ、自衛したければこの種の「リアル・アバター」で。
お子さまにはこのあたりで。というか、夜道でこれつけた人に会ったらこわい。
・・・しつこいんでこのへんでやめとく。
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