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August 28, 2007

アバターを何に使うか

アバターって何の役に立つのさ、という話がよくある。正直、自分でもよくわかってないところもある。でも、いろいろなところでいろいろな人の話を聞いたり話をしたりしてきた中で、こういうあたりかなと思うものがいくつかある。現時点の使われ方だけじゃなくて、今後の可能性なんかも含めて考えてみた。まだ途中だけどこの時点で一応メモしておく。いろいろお考えのある方はぜひコメントなど。

とりあえず5つぐらい挙げてみる。

(1)デジタル着せ替え人形
現時点で一番普及してるのはこれだろうか。よくブログにアバターがついてるのがある。調べたことはないが、自分に似せた姿にしている人が多いのだろうか。売ってる「服」を買ったり、自分がリアルで着てるものを着せたりといろいろやるわけだ。少なくとも、次々とアイテムを買ったりしている人というのは、リカちゃん人形のデジタル版、みたいな感じで使ってると理解すればいいのかな、と思ったりする。この種のアバターは、少なくとも今あるやつは基本的に意思に従って動かすことができないから、自分自身の投影というよりは遊ぶ客体みたいな感じなんじゃないかなと。

(2)別世界での分身
オンラインゲームなんかで遊ぶために必要な自分の分身。これも広く普及している。現実の自分と近いとは限らない。逆に、現実の自分とちがう(より望ましい)姿形をとる、ということも多かろう。セカンドライフみたいな仮想世界型というかコミュニティ型というかそういう手合いのものはRPGじゃない、とよくいうが、定義を広げればRPGの一種と考えていいと思う。自分がなりたい姿でやりたい「ロール」を演じて、自分が決めた「クエスト」を実行したりしなかったりするわけだ。いずれにせよ、自分を投影する対象ではあると思う。

ここらあたりまではすでにある。ここから下は、どちらかというと今後の方向性としてあるんじゃないかなと思うもの。もちろんもうどこかで研究されてるとか実用化されてるとかあるかもしれないけど、少なくともまだ「普及」はしてないよね。

(3)デジタル私書箱、または「身代わり防壁」
情報化が進む現代社会において(すっげぇ陳腐!)、インターネットにおける「匿名性」はいろいろな意味で議論の課題となりうる。一方では匿名性が無責任な行動や犯罪を誘発するから問題という主張があり、もう一方では匿名によって言論の自由やプライバシーを守れるから有意義という主張があるわけだ。いうまでもなくどちらにも論拠がある。トレードオフだからバランスが大事、というのが一般的な「落としどころ」ということになるんだろうが、ちょっと待て。なぜ両立しないと決めてしまうのか?これまではともかく、技術で解決できる部分もあるのではないか、ということがあるように思う。この問題は、ネット上のアイデンティティとリアルの人間を結び付けられるかどうかがキモなわけだが、その結びつきは、「みんな」が知っていなくても「誰か」が知っていればいいケースが多いと思う。典型的にいえばISPだのゲーム会社だのというわけだ。逆に、私たちが社会生活を営む中で、必ずしも実名でなければなくてもいい場合というのはけっこうあるし、できれば実名出したくないよなという場合も(レンタルビデオ店でやんごとなきビデオを借りる場合以外にも)けっこうあると思う。一部で、匿名でも顕名でもない「特名」と呼んでいたような記憶がある。テキストベースのネットなら、その役割はハンドルネームなんかが果たしてくれた。じゃあ今いろいろ試行錯誤が行われてる3Dインターネットみたいなのがどんどん普及してきたらその役割は何が果たすのか?となると、それはアバターではないか、ということになるかもしれない。

(4)着るアバター
最近、仮想世界とAR(Augumented Reality)技術を融合したら面白そう、とあちこちで言っているのだが、もし仮想世界がサーバの中にゼロから構築されるものではなく、現実世界の中に「貼り付けられる」ようなものであったとしたらどうだろう、というわけだ。「電脳コイル」をご存知の方はあああれね、と思うだろうあれ。現在のUIのレベルでは難しそうだが、今でもメガネ型ディスプレイは実際に存在する(もちろんみんなが持たないとあまり意味はない。このあたりは携帯電話と同じだな)。道路にはナビ、店舗には広告、観光名所には解説といったものが貼り付けられる(このあたりはけっこう研究が進んでる)わけだが、もしそうなってくると、人に貼り付けるアイテムとかだって充分ありうる(少なくともHIITで研究されてるのは知ってる。他にもきっといろいろなところでやってるはず)。肩に鳥を載せるとか、背中に羽根を生やすとか、高くて買えない服を着てみるとかエモーションマークを表示するとか(あっ「電脳ペット」も忘れちゃいけない)いろいろ使い道はあるわけだが、そこまできたら自分自身の上に画像を貼り付ける、つまり「着るアバター」を考えないわけがない。ファッション的にはすっごい可能性だと思うんだけど。ほら、髪を伸ばすのが間に合わないからロングヘアをつけちゃおうとか、実際に日焼けすると皮膚がんのリスクが高まるから日焼け色の「スキン」をつけようとか、このほくろ嫌いだから消しとこう、とかね。

(5)エージェント
アバターが自分の投影であるならば、基本は自分で操作するということなのかもしれないが、いつもいつもやってるわけにはいかない。簡単な仕事なんかは勝手にやっておいてくれればいいのに、なんて思うかもしれない。すでにオンラインゲームでそういう機能を備えたものがある。そんなの人の形してる必要ないじゃんと思うかもしれないが、3Dインターネットと「着るアバター」の存在を前提とすれば、これは身代わりのエージェントになる。「パーマン」のコピーロボット、なんていうと知らない人も多いかもしれない。「攻殻機動隊」のデコイ、ぐらいのほうがわかりやすいか。こういうこと書くとすぐチューリングテストとかいう人が出てくるけど、一部の業務に活動範囲を絞れば、かなりいい線いくんじゃないかな。

とりあえずこのへんでやめとく。現時点の姿からは想像できない部分も大きいので、ぜんぜんちがった使われ方が出てきてももちろんおかしくない。15年も前にさかのぼれば、電話機でメールを打つことが人々の習慣になる、なんて全然想像できなかった(昔見た未来予想図に携帯電話はあったけど、みんなが携帯電話でメールしてる図なんかなかったし)。アバターもそれに近いものがあるかもしれない、と思うんだけどどうだろうか。

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Comments

 こんにちは。始めてコメントをさせて頂きます。
「アバターを何に使うか?」
とても興味があります。関心を持って読ませていただき、HYamaguchiさんの考察から学ばせてもらう事が沢山ありました。
 私なりに考えたのは、今後アバターに現実世界に生きる人間の生活支援機能のようなものが求められる事はあるのだろうか、ということです。
 例えば、高齢者や障害者など普通に生活を送る事が困難な立場の方の為に利便性を高めたアバターを利用することで、友人を作る事が出来たり、広告や流行の情報などの世の中の流れに対して、双方向な関わりを持つ事が出来るといった役割を果たせるのではないかと考えました。
 飛躍し過ぎなのかもしれませんし、私自身が医療やIT技術を専門的に学んでいるわけでもないので、無責任な発想に過ぎないのでしょうが、実現されればアバターは社会的にも有意義な機能を持ったシステムになるのではないかと感じています。
 自分の考えばかりになってしまっていたらすいません
 
 

Posted by: とし | October 14, 2010 12:47 PM

としさん、コメントありがとうございます。
いろいろ考えられそうですね。
技術は進みます。しかしそれをどう使うかは、技術とは別に考えなければなりません。これからそれを考えていくのだと思っています。生活支援機能もいいですね。私はペット型を考えていましたが、アバター型でもいいのかもしれません。

Posted by: 山口 浩 | October 15, 2010 01:30 PM

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Tracked on August 30, 2007 02:55 AM

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