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東京の車はもっと不便でいいと思う

域内の公共交通機関、特に鉄道網が発達していない地域において、自家用車は交通手段として重要な意義を持っている。要するに、なければ通勤や買い物などの日常生活に大変不便なわけだ。そういった地域では、自動車を日常の足として利用することを妨げるような政策は、生活の質に大きな影響があるから、当然、慎重であるべきだろう。

しかしそうでない地域、域内の公共交通機関が発達している地域においてはどうか。もう少し考え方を変えていいのではないか。よくある類の話でなにをいまさら感はあるが。

要するに、大都市のことだ。大都市と呼べる場所は日本に少なくとも数箇所あるが、とりあえず、個人的に事情を一番知っている東京に話を絞る。東京は、日本の中でも公共交通機関が最も発達した場所といえるだろう。たとえば東京の中心部に近い地域では、早朝や深夜など特殊な場合を除き、公共交通機関を利用するのに時刻表をいちいち見たりしない。待ち時間はせいぜい数分とわかっているからだ(普通か急行かぐらいは見たりするだろうが、そもそも急行の設定があるのは中心部から外へ向かう交通機関の場合だ)。いくつか交通機関を乗り継げば、ほとんどの場所に徒歩10分以内くらいの場所まで行くことができる。自動車を使わなければ不便という場所ももちろんあるが、全体からみれば、そういう場所のほうがレアだと思う。そういうレベルであれば、交通手段として自家用車を使えることのメリットは、他の地域におけるよりかなり小さいはずだ。

一方、東京で自家用車を交通手段として使うことのデメリットのほうはどうか。道路の渋滞や路上駐車の問題は、必ずしも日本で一番ひどいとは限らないが、相当ひどいほうに入るだろう。最近は法律が変わって多少ましになったという話も聞くが、正直なところ違法駐車が目立って減ったという印象はあまりない。迷惑を受けているのは自動車に乗っている人だけではない。バスを利用する人にとっては、自家用車に乗る人が多ければ、道路が混雑するだけではなく、バス会社の経営が圧迫されて路線が廃止されたりするといった不便もある。加えて渋滞に起因する排ガスによる健康被害だとかなんだとかの外部性の部分もある。

メリットがより小さくてデメリットがより大きいとすると、もう少し不便でもいいんじゃないかという話が出てきてもおかしくない。もちろん自動車産業は日本の基幹産業でもあるから、自動車が今以上に売れなくなる事態というのはいやがる向きが多かろうと思う。法律で所有自体を規制したりするのはやりすぎだし、あまり効果的でもなかろう。だんだんETCも普及してきたことだし、それより経済的なインセンティブ付けをうまく考える方向が望ましいのではないか。

真っ先に来るのは自動車税に地域間格差をつけるといったところだろうか。ただこれをやると、隣の県で登録したりする人が増えるかもしれないし、どこの道府県で登録しようと東京を走ったら東京で渋滞が起きるのは変わらないし。というわけで、「どこで登録するか」よりもむしろ「どこを走っているか」に着目したほうがいいように思う。

渋滞については、ロードプライシングみたいなことをもっと大々的に適用できないか、本気で検討する課題として取り上げていい時期に入りつつあると思う(ETCを装着してない自動車の高速料金を大幅値上げとか、生活道路の部外者通行を有料化とかいうのもアリかと)。駐車違反についても、めりはりをつけた対処方法を考えたらいい。違法駐車の反則金を場所によって変えてもいいだろうし(反則金が高い地域では、駐車監視員を「常駐」させてもコストが合うかも)、すべての自動車に対して一律の規制(実態はともかく、少なくとも今の建前はそうだと思う)というのも見直していいのではないか。

結局、「何を問題と考えるか」に依存する部分が大きいわけだが、たとえば自動車の非効率な利用に伴う、都市部における「避けられたはずの」排ガスや渋滞なんかを主に考えるのであれば、自動車を保有すること自体を敵視する必要は必ずしもない。公共交通機関とか物流を担う自動車のような「必然性」のあるものは認め、そうでないものに負担を課する方向で考えたらよかろう。

個人が自家用車に乗らなくなると自動車の売れ行きが気になるかもしれないが、自動車は「実用の道具」であると同時に「嗜好品」でもあるわけだから、今後より後者の要素を高める方向にもっていって、「買うけど乗らない」みたいなライフスタイルを推進してみたらどうだろう。その昔、多くのペットはなんらか「実用」的な目的をもって飼われていた。犬なら防犯、猫ならネズミとりというように。でも今は、こうした目的で飼われるペットはそう多くなかろう。それとちょっと似ているかもしれない。だとしたら痛車みたいなのが「最先端」になる、かも?

しょうもない私案はさておき。自動車を使うことの社会的コストは、地域によって大きくちがう。それらはもちろん、各地域における交通規制のあり方なんかにいろいろ反映されてはいるだろう。ただ私たちは今後、今よりいっそうの「努力」を求められている。今のままではだめだとすれば、新しいやり方を考えるしかない。もう少し踏み込んで、都市における自動車のあり方を考えてみてはどうか。都市に住む私たちはもう少し、自家用車の利用において「不便」であっていいのではないか。そんなことを考えたりする。

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Comments

目立って減ってますよ>違法駐車。
タクシーもハイヤーもすごぶる快適です。

Posted by: arano | August 06, 2007 at 11:01 PM

aranoさん、コメントありがとうございます。
私は庶民なので、ハイヤーにはほとんど乗る機会がありませんが、タクシーにはたまに乗ります。私の印象ではほとんど変わらないんですが、それは私が徘徊してる地域とか時間とかのせいなんでしょうか。夜の銀座とかは目立って減ってるんですかね。

Posted by: 山口 浩 | August 07, 2007 at 01:20 AM

都内を自転車で移動する者ですが、大通りの路上駐車は確実に減っていますが、それ以外の道の路駐は相変わらずというのが印象です。
結局荷物の納品を行う商用車・トラックが荷さばきできる場所を用意できていない以上しかたないのかなぁと思います。

個人的には「環八より内側は自家用自動車進入禁止」とかやってもいいんじゃないかと思っていますが、都内を走り回っている商用車・トラックであるのことを考えると効果は期待薄じゃないかと思っています。

Posted by: mmasuda | August 07, 2007 at 12:40 PM

mmasudaさん、コメントありがとうございます。
私は体力がないので、自転車で移動する機会はあまりないのですが、自転車だと路上駐車の具合がよくわかるんでしょうね。幹線道路は減ってるんですか。私の印象だと、路上駐車が1台でも10台でも交通への影響ってあまり変わらなかったりしますね。私の印象はそういう理由なのかもしれません。
私は乗り入れ禁止よりロードプライシングのほうがいいのではないかと思ったりしますが、ともあれ日本全体として自動車の利用を抑えていかなければならないとすると、東京はその先頭を切るべき位置にあるのではないかと思ったまでです。

Posted by: 山口 浩 | August 08, 2007 at 01:55 AM

こんにちは。ご意見におおむね賛成です。高速道路も深夜割引・お盆割引などで機動的な価格設定をするようになってきましたね。将来、各ドライバーに臨時の割引情報がもれなく即時に伝わるようになって、ナビが最も早い行き方だけでなく最も安く済む行き方も指示するようになればいいと思いますが、既に実現を目指して研究されていることでしょうね。技術的には全く容易だろうと思います。

Posted by: bun | August 08, 2007 at 06:36 AM

bunさん、コメントありがとうございます。
その気になればできることはたくさんあるわけですが、問題はその気になるかどうかですよね。いろいろな意見の人がいるし、利害は一致してないし。

Posted by: 山口 浩 | August 10, 2007 at 03:01 AM

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