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September 12, 2007

「コピーワンス」パブコメを出してみた

「デジタル・コンテンツの流通の促進に向けて」と題した情報通信審議会の第4次答申に対するパブリックコメントが募集されてるので(締切は9月14日(金)17時)、コピーワンス問題について、意見を出してみた。

この件については、白田先生のところのロージナ茶会公式ブログで賛同者への呼びかけを行っている。ワードの書式や意見の例なんかも配布しておられて便利なので、書式を利用させていただいたほか、「EPN+補償金」案を一部借用している。

書いたのは以下の通り。

意見等
コピーワンスの改善の在り方について、安易な規制は違法コピーの流出への有益な対策とならないうえにユーザーの利便性を損なうという点で、便益より問題の方が大きい。基本的には、コピー制限によりユーザーの利便性を低下させるのではなく、むしろ利便性を高めることで対処することが望ましい。
ただし、もしどうしてもコピー制限を入れるのであれば、次善の策として、「⑤コピーはEPN方式とした上で、私的録音録画補償金制度で解決する」という選択肢を追加し、これを採択すべきであると考える。

理由
あらゆるコピー制限技術はそれを解除する技術の開発を引き起こすものであり、結局いたちごっこにしかならない。禁酒法の歴史をひも解くまでもなく、有効な防止策もなしに安易な規制の強化を行えば、そうした対抗策をとる意志と能力を備えた闇の勢力や悪意あるユーザーにとっての収益機会を増やすだけとなる。一方、現代では1つのコンテンツを複数のプラットフォームで楽しんだり、あるいは機器を買い換えてもそのコンテンツを引き続き利用し続けたりしたいというユーザーのニーズが強くなっている。コピー回数について、3回であろうが10回であろうが限りがあるということ自体がきわめて強い権利制約であり、違法コピー製品へのニーズをかえって増大させるものと考えられる。
すなわち、こうした方策は、自らの利益のため確信犯的に権利侵害を行う一部の人々にとって有効な手立てとなるものではない一方で、正当な方法でコンテンツを利用して楽しみたい多数の善良なユーザーの利用上の自由を過剰に制約し、過剰なコスト負担を強いるものであって、便益より問題のほうが大きいといわざるを得ない。
無料で新たな番組がいつでも視聴できるテレビ放送におけるコンテンツ間の競争は激しく、利用を制限された過去のコンテンツのほとんどは新たなコンテンツに比べて不利な立場におかれ、あっという間に忘れ去られていく流れにある。コンテンツは死蔵されているだけでは意味がなく、人々に利用されて初めてその価値を発生させるものであるから、その権利保護のあり方も通常の財とはおのずからちがったものになるはずである。二次利用による収益機会を考えるならば、むしろ善良な一般ユーザーの利用を制限するような規制に対してこそ慎重であるべきと考える。
完全な防止策がない現状で権利を保護するための抜本的かつ最も有効な対策は、リーズナブルなコストで便利にコンテンツが利用できるようにして、ユーザーがわざわざ違法コピーを利用したいとは思わない状況を作り出すことである。もちろんこれは必ずしも容易とはいえないが、コンテンツの二次利用についても、課金モデルの開発・普及についても、これまで供給者側がそうした努力を充分に行ってきたとはいえない。こうした中で、コピー段階での制約によってユーザーにのみ負担を強いるアプローチをとるのは、健全な市場の育成の観点からも問題が大きい。
もし、抜本的な対策をとるまでの当面の間、どうしてもなんらかの制限が必要ということであれば、多数の善良な一般ユーザーの利便性および現状でのコンテンツ購入、利用の形態を考慮すれば、EPNのほうが望ましい。また、私的複製に対する対応策としては既に私的録音録画補償金制度があることから、EPNと組み合わせ、その拡充等をはかることによって対処できる部分も大きいものと考える。

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Comments

ジャスラックのような
既得権益団体の解体を伴わなければ
机上の空論になってしまうのではないでしょうか?

コンテンツを作る側の人間の中にも
ある程度(YOUTUBE等で)フリーに
楽しんでもらっても構わないと考える
人間がいる事も事実ですし。

Posted by: 夜遊び博多っ子 | September 28, 2008 05:27 PM

夜遊び博多っ子さん、コメントありがとうございます。
コピー制限に反対することと、「フリーに楽しんでもらって構わない」こととはちがいます。
コンテンツの創作者で、努力への正当な見返りを求める人に対してきちんと見返りがもたらされるしくみが必要であることは当然です。もちろんそのためには、有料のコンテンツは無料のコンテンツと競争して、選ばれなければなりませんが。
JASRACを目の敵にされているようですが、状況はJASRACの手が及ばない映像コンテンツなどでもさして変わりません。JASRACを解体すればユーザーは著作権料を取られなくてすむなどということは考えないほうがいいと思います。
JASRACで問題にすべき「既得権益」は、著作権管理業務に関する事実上の市場独占と分配の不透明性でしょう。いずれもこの市場に充分な競争がないことが大きな原因と思われますので、競争促進の観点から分割などを考えるのはアリかなと個人的には考えますが、いずれにせよ、これによってコピー問題がどうなるという性質のものではないと思います。

Posted by: 山口 浩 | September 29, 2008 02:03 PM

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