« 「コンテンツ学」 | Main | 「コピーワンス」パブコメを出してみた »

September 11, 2007

本物の執事さんはけっこう優雅、という話

ずっと前に「本物のメイドさんはけっこうたいへん」みたいな話を書いたことがある。シンガポールではけっこうたくさんいるメイドさんの人権侵害問題の話なんだが、「Courrier Japon」2007年9月号を見ていたら、英国で執事さんブーム、という記事が出ていた。

こっちはなんだかけっこう優雅な話なんだな。

「Courrier Japon」の記事は小さなもので、ドイツのFrankfurter Allgemeineの記事の紹介。好景気で富裕層が増え、執事の需要が増加してブームに、というもの。前にも聞いたことがあるような気がするので、それだけなら別に目新しくもないんだが。

気になるのはこのくだり。

執事になるには6週の研修が必要だが、年収は4万~10万ポンドと大卒者よりも高いこともある。

ふうんけっこういい暮らしなんだねぇ。もちろん「大卒者よりも高い」とかいっても、単なる大卒者とベテランの執事を比べるほうがおかしいといえばおかしい。

それにしても6週の研修ってのは、いったい誰が。と思って検索してみたら、あったあった。それもけっこういっぱいあるぞ、執事学校。それも英国だけじゃなくていろんな国に。日本にはないみたいだけど。期間も6週間だけじゃなくて、2週間~8週間までいろいろ。別に執事資格ってのがあるわけじゃなさそうなので、こういう学校に行かなきゃならんということでもないようだが、一方でここで学んだからといってただの素人がすぐに10万ポンド稼ぐ執事に、というものでもない、と。ま、当たり前といえば当たり前。ちなみに、執事を「butler」と称するのは英国風で、米国的には(要するに『政治的に正しい』呼び方ってわけね)「household manager」というらしい。

たとえばこのページはいくつかを紹介している。

中でもここは動画でご紹介。ベテランの執事さんが教えてくれる。6週間のコースで£7,800(US$15,000)とか。どっひゃーなお値段だが、考えてみれば、この豪華なお屋敷(の執事部屋だろうけど)で6週間滞在となればいたしかたなし、といったところか。ビデオを見ると、雇い主が使用人をブラッシュアップするために送り込む、という使い方も想定されてるみたい。

そんなお金はないという方、せめてこれあたりでお勉強するという手もある。まあ、考えてみれば、これってホスピタリティ産業なわけで、そっち関係の書籍だったらもっとたくさんあるはずなんだけどね。学校にしたって、ホテルスクールなら日本にもけっこうあるし。

二次元がいい、という方はこちらで。若いとあんまり執事っぽくないよね、と個人的には思うんだけど。

メイドさんがたいへんな話は、たとえばこちら。

ちなみに、Amazon.comで「maid」を検索するとたくさん本が出てくるんだが、あっち系とかそっち系とかばっかりで、あまりいい取り扱いのものは見つからない。「maid」なることばはそもそもそういうニュアンスを含んでいるからだ。「政治的に正しい」言い方としては「household staff」ということになるらしい。待遇面でも、英国のメイドさんがどのくらい稼いでるのか知らないが、4万ポンドってのはなさそうな気がする(シンガポールだと月200ドルが相場っていうのは前に書いたとおり)。「Maid school」ってのも聞かないし。もちろん、そもそも「butler」ってのは使用人の中で一番えらい人(Wikipedia)なんだから、直接比較するのはおかしいんだけどね。でも、「butler」のほうには「あっち系」のニュアンスはあんまりないってことも考え合わせると、なんだかなぁ、という感じは否めない。

|

« 「コンテンツ学」 | Main | 「コピーワンス」パブコメを出してみた »

Comments

執事と言えるのかどうかわかりませんが、Household Managerというくくりであれば、チャップリンは日本人の使用人をいたく気に入って使っていたそうです。気遣いなどが日本人に向いていたのかもしれませんが、でも最後にはチェプリン夫人が嫉妬(多分チャーリーが彼に寄せる信頼に?)したとかで首にされたそうです。

Posted by: まお | September 11, 2007 05:42 AM

まおさん、コメントありがとうございます。
チャップリンの話、知りませんでした。そうなんですか。よく「妻にするなら日本人」という言い方がありますね。「日本的な配慮」みたいなものへの評価が高いということなんでしょうか。今の日本人もそうなのかどうかはわかりませんが。

Posted by: 山口 浩 | September 12, 2007 09:01 AM

執事というと、どうしても波瀾財閥のギャリソン時田
を思い浮かべてしまいます...

ところで、何の本に載っていたのかは失念してしまい
ましたが、本場?のイギリスでは、雇う方は、自分と
同じ体格の人を選ぶ、というのを読んだことがありま
す。理由は、卸したてのスーツを執事に着させて、
馴染んだ頃に、取り上げて自分で着るとか。

執事の歴史は詳しくありませんが、もしかしたら、
影武者的な意味合いもあったのではないでしょうか。

Posted by: ひろん | September 12, 2007 09:50 AM

ひろんさん、コメントありがとうございます。
スーツのために同じ体格の人を、ですか。へぇそれは聞いたことがありませんね。そうなんですか。ただ、影武者というのはちょっとどうかなという気がします。基本的に執事は年配の人が多いし、家を守る人だから主人についていったりしないですからね。ButlerじゃなくてValetのほうならありうるかもしれませんが、私も詳しくないのでわかりません。

Posted by: 山口 浩 | September 13, 2007 09:33 AM

The comments to this entry are closed.

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 本物の執事さんはけっこう優雅、という話:

« 「コンテンツ学」 | Main | 「コピーワンス」パブコメを出してみた »