« 「プリン直し」を知ってるかい? | Main | 2007年11月17日朝日新聞夕刊にコメントが出たらしい件 »

November 19, 2007

法曹の質を保つには

アルカイダのメンバーかもしれない人の友人の友人である鳩山邦夫法務大臣は、法律がきらいなのかどうか知らないが、少なくとも法律家の増加はお望みでないらしい(参考)。理由はというと、どうも訴訟社会化と質の低下への懸念、とのこと。ふうん。

報道によると、なんでも、こういう趣旨らしい。

「わが国の文明は世界に誇る和を成す文明で、何でも訴訟でやればいいというのは敵を作る文明だ」「そんな文明のまねをすれば、弁護士は多ければ多いほどいいという議論になるが、私はそれにくみさない」
(司法試験の合格者を年間3000人程度とする政府目標について)「多すぎる。質的低下を招く恐れがある」

よくわからん。そもそも裁判制度をきらいな人が法務大臣やってるってどうよ、というのはさておくとして。そもそも裁判以外のところでも法曹資格者が活躍していくような図式を狙ったんじゃなかったっけというあたりもさておくとして。そもそも何との比較で多すぎるといっているのかというあたりもさておくとして。そもそも何の根拠で「和を成す文明」と呼んでるのかというあたりもさておくとして。裁判以外のところでは人は争わないものだというお考えか?んなことはないよねぇ。ということは、裁判官以外の人に「裁定」してもらうほうがいいということか?んなこともないよねぇ。ということは、法曹の質が低下すれば訴訟社会化するということか?これはありそうだな。でも質の低い弁護士は訴訟をしたがるのか?それはちょっとわかんないなぁ。あるとすれば、弁護士の数が増えると競争が激化してambulance chaserみたいな奴がたくさん出てくる、なんて図式か?うーん。

よくわからないので、ほんの少しだけ調べてみた。司法統計の中に、訴訟その他の事件数の推移がある。そこから刑事事件等民事・行政事件の全裁判所の新受総件数の推移をとってみた。注にいろいろ書いてあるが、そのままの数字を使っているので、あくまでネタレベルでご覧いただきたい。で、これを、日弁連のサイトにあった弁護士数の推移と比べてみたらこんな感じになる。

まずは民事・行政事件。なんだか関係がありそげにもみえるが。
Lawyer01

こっちは刑事。これは関係なさそうだなぁ。
Lawyer02

これで何かいえるというものでもないだろうが、弁護士数と民事・行政事件の数がなんとなく似たパターンをたどってるみたいに見えるのを因果関係と考えたとすると(けっこう強引な仮説だけど)、法相の主張となにやら整合的であるような気もする。まあ、弁護士さんも食べなきゃいけないわけだしね。もしこれを信用するとすると、訴訟を増やしたくなければ弁護士の総数をあんまり増やさないほうがいいってことになるんだろうか。ま、これはあくまでネタなのでここまでにして。

それはいいとして、問題は「質」だ。これは正直よくわからん。そもそも弁護士の「質」なるものは、何によって決まるんだろうか。弁護士の能力ってのは、法律やその解釈、判例などの法律知識によって決まるのか?それとも、人をひきつける豊かな人間性によって決まるのか?はたまた重要な交渉を任せられる交渉力によって決まるのか?うーん、たぶんその全部、だよなぁ。でも、試験てのは基本的に知識を確かめるためのものだし、合格人数の増加が質の低下につながるとすると、やっぱりこれは知識不足の人が受かっちゃうってのことなのかな。

でも、人数増による競争の激化でambulance chaserみたいな人が増えることを質の低下と呼ぶのだとすると、それは全部「新人」たちのせいなんだろうか?何より、公平の問題がある。人数を制限すべきだとしても、そのデメリットを新たに法曹をめざす人だけに強いるのはどうにも不公平ではないか。それに、法律だってどんどん変わるわけだし、実務経験で質が向上する部分もあるだろうけど、逆に試験時の能力をずっと保っていられると決まった話でもないだろう。一度資格をとったらずっとそのままというのが最良のやり方であるかどうか。依頼者の立場からしたって、能力に劣るベテランと優れた新人とだったら、やっぱり後者のほうに頼みたいんじゃないか。

だとしたらさ、素人の無責任なアイデアとして、法曹の質を保つため一番有効そうなのは、やっぱりアレじゃないか?

法曹資格の更新制。

法曹資格ってものを一定期間経過ごとに更新するものにしてみたらどうかってこと。続けたければ更新試験を受けて合格してもらうと。試験の内容は、司法試験の択一式と論文式をそのまま使えばいいんじゃないかと思う。区別する必要ないよねぇ?ここで新人の皆さんと競争してもらうわけだ。資格者の中には、更新できない人もいるかもしれないが、それは法曹に必要な能力を備えていないんだからやむを得ない。もちろん能力と経験を備えたベテランの皆さんが不合格になるはずなどなかろう。

コストは気になるね。司法試験ってのは、最近は毎年3~4万人ぐらいが受けてる。一方、法曹資格者もだいたい3万人前後。10年で更新するとすれば、毎年平均してその1/10である約3千人が受けることになるだろうか。受験者数としてはそう大きくないかもしれないが、合格の可能性が高いとすると話はちがう。今の論文式試験の受験者は約7~8千人。最終合格者はだいたい1500人くらい。それにそれぞれ3千人ぐらいが上乗せされるとすると、試験の規模は確実に今よりかなり大きくなる。でも、絶対ありえないぐらいのコストではないような気がするなぁ。質を保つのが目的なら必要と割り切るってことか。ただ、更新者なら司法修習は省略してもいいだろうから、すべてコスト増になるというものでもなかろう。

ま、しょせん素人の暴論なんだが、「和を成す文明」論もそうちがわないレベルであるように思うので、まあ気にせず出しておこう。本来、社会における法律家のあり方自体の議論とか、法律家が備えるべき能力についての議論とかから入るべき話。資格者の既得権益保護に走ったりするのもどうかと思う。専門家の皆さんは、もう充分やってるだろうけど、さらにそういう冷静な議論を進めていただきたいね。素人同士がまぜっかえし合戦やってる間にさ。


なんか、こういうの思い出すな。こちらは大臣のお嫌いらしい「敵を作る文明」でのお話。

|

« 「プリン直し」を知ってるかい? | Main | 2007年11月17日朝日新聞夕刊にコメントが出たらしい件 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 法曹の質を保つには:

« 「プリン直し」を知ってるかい? | Main | 2007年11月17日朝日新聞夕刊にコメントが出たらしい件 »