立場ちがえば意見もちがう、らしい話
小ネタ。猪瀬直樹という人については、個人的に、なんだかとても鼻息の荒い人(レトリックね。念のため)という印象がある。理屈が通ってるんだか通ってないんだかよくわからないけど納得させられてしまう、という感じの。
そういうわけで、日経BPのサイトに連載してる「猪瀬直樹の「眼からウロコ」」の第21回「参議院の議員宿舎~あらためて民主党にははっきりしていただきたい」でも、また鼻息荒く怒っている。で、それを読んでて、立場がちがえば意見もちがうんだなぁ、と思ったのでその話を手短に。
そもそも議員宿舎建替問題そのものについての私の意見は、ちょっと前に書いたことがあるので、繰り返さない。「立場がちがえば」というのは猪瀬氏のことではなくて、民主党のこと。この文章の中で猪瀬氏は、もともと参議院議員宿舎建替問題について反対の立場であった民主党がなぜ今になって態度を変えるのか、と批判している。曰く、2007年6月20日の都議会本会議の一般質問で、民主党の松下玲子都議が都当局に対し、議員宿舎の建替計画に反対し、当該地区の環境を守るべきであると主張していたのだそうだ。なのに最近は、なんだかいろいろと理屈をつけて、建替容認に転じたと。
つまり、参議院の各党から超党派的に議員を集めて「参議院議員宿舎に関するプロジェクトチーム」なるものを作ったらしい。座長は西岡武夫議運委員長で、以下、民主党から池口修次議員・小川勝也議員・榛葉賀津也議員、自民党から岡田直樹議員・世耕弘成議員、公明党から山下栄一議員、共産党から井上哲士議員、社民党から渕上貞雄議員がメンバーとなっている。こういう動きを受けて、都議会民主党も動きを止めたってことらしい。各党とも自分たちのフリンジベネフィットについては簡単に合意できるわけだな。情けないくらいわかりやすいね。
中でも一番わかりやすいのが民主党。6月に松下都議が反対の主張をしたのは参院選前。当時は確かに自民党の苦戦が予想されてはいたが、民主党として、あそこまで勝つとは正直思っていなかったのだろう。もちろん一都議の質問が党全体の方針と100%同じであるとは限らないしその必要もないだろうが、少なくとも「責任ある立場」に立たされると思ってはいなかったんだろうな。だからこの質問を許容したわけだ。こういうときは合意できるから超党派のチームを作るのは当時から想像できたろう。そこに座長側ではなく委員側として参加して、「わが党は反対だがプロジェクトチームの意見を尊重する」みたいなかたちで「しぶしぶ」認める、というのが予定していた落としどころか。
そういうわけで、猪瀬氏が怒るまでもなく、民主党の立場はかなりはっきりしちゃってるわけだ。もちろん他の党も。
最後に、都議会の議事録検索システムをあさったら当該部分のやりとりがみつかったのでコピペ。
(質問) 現在、参議院宿舎が千代田区紀尾井町の風致地区内に移転し、新たに建設される計画があり、国から都に対して、協議を開始するよう依頼があったそうですが、協議開始を行わないようにと、移転反対住民が都知事を被告とした訴訟を起こしています。 国から都に対しての協議依頼や協議内容、訴訟について現在の状況はどのようになっているか伺います。 参議院宿舎の移転・建築計画は、約八十平米の広さの宿舎を八十戸つくり、高さは約五十六メートルになっています。風致地区の歴史ある緑地を破壊してまで、このような立派な宿舎を移転、建設する必要が本当にあるのでしょうか。建設是非については、本来参議院が再考すべき問題であることは承知していますが、残念ながら、これまで参議院の議会では議論も行われていないようです。 今回、私が現地に足を運び、調査を行った上で残念だと感じたことは、本来、参議院宿舎の是非や、移転、建てかえをせずに統廃合できないかなど、国の中、特に参議院で議論して解決すべき問題がすりかえられているように思えることです。つまり、風致地区を守りたい人たちと、紀尾井町のまちづくりを考えて旧宿舎の移転を望む人たちというような、同じ地域の住民を二分する形の議論のすりかえといえないでしょうか。 今後、風致地区を保全するためには、都として区域ごと保全方針を定めるなど、基本的な部分でしっかりと保全のための対策を講じる必要があると思います。緑豊かな歴史ある風致は、都民、国民共有の財産であり、未来へと守り、受け継いでいくべきものであることを強く要望して、次の質問に移ります。
ううむ。いかにも野党っぽい質問。で、これに対する回答はこれ。これまた見事な官僚答弁。
◯都市整備局長(只腰憲久君) 風致地区でございますが、風致地区は、水や緑など良好な自然的景観の保持を目的とした都市計画上の地域地区でありまして、その維持のため、建築物の建築や宅地の造成、土地の形質の変更などに一定の規制が課されております。 これまで、河川や水域、丘陵、崖線など、自然景観の特性に応じて地区が定められておりまして、都市環境の保全を図る役割を担っております。 次に、風致地区の指定でございますが、現在都内では二十八カ所、三千五百七十ヘクタールが指定されております。例えば武蔵野の豊かな田園景観を持った地区、あるいは都心部に残された自然地形と文化財的要素が一体となった地区など、それぞれの地区におきまして自然的景観に応じた特性が見られるものと考えています。
◯建設局長(道家孝行君) 初めに、風致地区条例の運用についてでありますが、風致地区内において建築物の建設、宅地の造成などを行うには、あらかじめ知事の許可が必要であります。許可に当たっては、東京都風致地区条例に基づく許可の審査基準を定め、許可の基準及びその取り扱いを明確にしております。 この審査基準では、風致地区内を地域の現況や特性に応じて五つに区分し、その区分ごとに、土地の面積、形状などの敷地条件や、建物の公共性、公益性の有無などに応じて、許可の基準をきめ細かく定めております。 さらに、この基準を受付窓口で公開し、その内容を説明するとともに、申請者からの相談に応じ指導に当たるなど、適切に条例を運用しております。 次に、参議院宿舎の建設についての現在の状況でありますが、風致地区条例では、国が建築物を建設する場合には、許可にかえて、あらかじめ知事に協議することとしております。国からは、千代田区の弁慶橋風致地区内の国有地に参議院宿舎を建設するとして、本年五月十六日に協議の申請があり、現在、建設計画の内容について国と協議中であります。 また、お尋ねの訴訟につきましては、現在訴状が届いておりませんので、その内容を把握しておりません。
なんつうか、「予定調和」ってことばが頭をぐるぐる回っちゃうのはなぜなんだろう。
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