« 「児童心理」2008年2月号「オンラインゲーム利用における子どもの安全―リアルマネートレード(RMT)の問題から考える」 | Main | 2008年のネット業界はこうなるらしい話 »

January 18, 2008

占いの「契約」を考えてみるテスト

○○を××と考えてみたら、というゲームはちょっとした時間つぶしにうってつけの素材の1つだ。類似点、相違点を列挙して、あれがああならこれはこう、と思考実験して。今回も、そうやってひとしきり考えた話。もちろんネタ。

いや別につぶすほどの時間なんてないんだけどさ(その点でいうならむしろ「火の車」だ)。 なんかつい面白くて。

とっかかりは、「占いと金融商品って、なんか似たところがあるよな」というあたり。どちらも不確実な将来についてなんらかの「安心」をもたらそうというサービス。提供者としては、確実であるような印象を与えたほうが販売上得策だが、当然ながら将来は不確実なので、「確実」といったらうそになる。さてどうするか。ここで両者の対応は分かれている。要するに占いってのは、どうもちゃんとしてないよね、ということだ。仮にそれを金融商品みたいにしてみたらどうなるかな、というわけ。

で、つらつら考えてみると、そういえばそもそも、と思い当たる。このあたり、知ってる人はちゃんと知ってる話なんだろうが、私は詳しくないので、正確なところは専門家の方とか経済産業省とかに聞いていただきたい。占いは、業として(「堅苦しくいうと「営利の意思をもって、反復継続して取引を行うこと」ね)行われた場合には、特定商取引法の規制対象になりうるはず。占いはそもそも政令で指定された「指定役務」にあたるし、路上販売は法第2条にいう「通常の店舗以外の場所で行う商品、権利の販売または役務の提供」にあたるらしいから、路上でやってる占いとかは特定商取引法にいう「訪問販売」の一種ということになる。

この場合、「事業者の氏名等の明示(法第3条) 」とか「書面の交付(法第4条、第5条)」とかの適用を受けるんじゃないかと思うのだが、実際書面を交付してるところなんか見たことがない(ご存知の方ぜひご教示を)。あと、第9条の「契約の申込みの撤回または契約の解除(いわゆる「クーリングオフ」)」もあるはずだが、この種のサービスはいったん受けてしまうと元には戻せない性質のものだから、まあクーリングオフは難しそうかな。それに、現金で対価3000円未満の場合はクーリングオフできないらしい。あと、よくあるネットの占いとかは訪問販売にはあたらないので、これもクーリングオフの対象外だとか。

ともあれ、金融商品だとすると、こういうあたりをしっかりしないとまずいだろうから、それをもし書面にしたらどうなるかな、と想像してみる。契約書と、説明文書とかが必要になるかな。しつこくことわっとくが、これはネタだ。すんげー適当なので、本気で考えてる方はぜひ専門家にご相談を。

仮に占い師の名前を「占部星男」(本当にこんな名前の人がいたら申し訳ない)とでもしておく。まずは契約書。

----------------------------------

指定役務提供契約書

事業者名 占部星男
住所 東京都××××
電話 xxx-xxxx-xxxx
E-Mail: xxxxx@xxx.xxx

______(以下「甲」とする)と占部星男(以下「乙」とする)は、乙が甲に対し、特定商取引に関する法律(以下「法」という)の規定に基づく指定役務(以下「役務」という)を以下の通り提供する旨合意し、ここに契約を締結するものとする。

1 役務の内容
 易断、及びその結果に基づく助言、指導その他の援助(甲の運気及び甲に関連する将来事実について予測、情報提供、及び意思決定支援を行うもの)
 易断の方法 秘教占星学に基づく運勢及び相性診断、及び西洋手相術に基づく手相診断

2 役務提供料金
  1回20分以内 金2,500円
  延長料金 20分あたり2,000円

3 役務提供の時期及び料金の支払方法
  役務の提供時間は、乙が甲の意思を確認し、役務開始を通知した時点から起算し、役務完了を通知するまでとする。ただし、法に基づく事項の説明を行っている時間は除く。
  甲は、役務完了後ただちに、乙に対して、役務提供料金の全額を現金で支払うものとする。

4 契約の解除
  乙が役務提供を開始した後は、契約の解除を行うことはできないものとする。

5 賠償責任
  乙は、役務提供として甲に告げた易断及び助言、指導等に起因して甲に損害が発生した場合でも、その責任を負わない。

6 確認事項
  甲は、本契約締結に先立って、本契約書に記載した法定事項、及び別添「占いのご利用にあたってご留意いただく点」の内容の説明を受け、自らの意思をもって契約を締結する意思があることをここに確認する。
  甲は、乙の助言、指導等に基づいて物品の購入等を行う場合、自らの意思で判断したものであることを確認する。

※ご契約にあたっては、契約内容を充分にご確認ください。


                           年    月    日
甲 (署名)
乙 (署名)

----------------------------------

占いの方法はやっぱり明示しないとだめだろうな。禍根を断つ意味もあるので、一応、料金はクーリングオフにかからないような水準にしてみた。でも延長すると超えちゃうね。水準として、ネットでぱらぱらとみた占いサービスの相場からいうと少し低めだろうか。開始後に解約できないってのはサービスの性質上まあしかたあるまい。5の免責条項と、6の確認事項は絶対必要だと思う。最後の赤字のところは特定商取引法の規定により入れたもの。

で、次は説明文書。

----------------------------------

占いサービスのご利用にあたってご留意いただく点

この占いサービス(特定商取引法に定める「易断」及びその結果に基づく助言、指導その他の援助サービス)は、人間の運命を支配するとされる恒星、惑星、準惑星、小惑星、彗星、流星等の諸天体の運行パターン及び位置関係等、及び、お客様の右手掌紋パターン等の分析に基づいて、お客様の運気や特定の他人との相性、将来事実に関する予測等を行うものです。この理論は長い歴史の中で成立したものであり、占い者が恣意をはさむ余地はありません。したがって占い者は、占いの理論的根拠の妥当性についての苦情は受け付けません。

占いは、その性質上、将来当該占いの結果に沿った事実が必ず発生することを保証するものではなく、下記のリスクを含みます。

運気変動リスク
お客様の運気及び将来は、お客様の日々の行動及び心がけに対応して変動します。占いは、占いを行った時点でのお客様の状態を元に判定されるものですので、占い後のお客様の行動及び心がけによっては、占い結果が実現しないおそれがあります。 たとえば、「将来よいことが起きる」との占い結果が出たとしても、その後お客様の行動や心がけが運気をつかさどる天体の意思に反していた場合、当該よい事実が発生しない場合があります。

時点リスク
占いは、将来どの時点でその結果が発生するかについて、必ずしも正確ではないおそれがあります。たとえば「来年いいことが起こる」という占い結果であったとしても、実際には前後する場合があります。前後の幅はときによって異なるため、いちがいにはいえません。

外部比較リスク
占いは、お客様自身の運気及び将来事実に関する予測等を行うものですが、占いが示すのはその「絶対水準」です。しかし、お客様が主観的に認知する将来の運気の水準及び事実についての評価は、実際にはお客様と周囲の方々との比較において決定されます。このため、お客様に関する占いそのものが正しい場合でも、お客様の周囲の方々の運気と比較して、相対的に見劣りする等の理由により、占いが実現しなかったように見えるおそれがあります。

信用リスク
占い者は、日々の鍛錬の下、契約に基づいて誠実に占い業務を執行しますが、その効力はお客様の占い者に対する信用度の絶対水準及びその変化によって日々変動します。このため、特定の占い結果についての信頼性は、その時点時点によって異なり、実際に将来実現する運気及び事実が占いと異なる結果となるおそれがあります。一般に、お客様が占い師を信用していない場合、その占いの信頼度は下がっていきます。

本占いサービスは情報の提供を行うものであり、占い者は、お客様に対し、他の特定の商品ないし役務の購入を義務付けたり、勧誘したり、積極的に推奨したり、販売者を斡旋、紹介したりすることはありません。占い者の助言、指導に基づいてこれらの購入を行う場合には、お客様ご自身の判断でされるようお願いします。

----------------------------------

リスクの説明は金融商品ぽく。これが目玉。これだけ書いとけば、まあどんないいかげんな占いでも言い訳ができるだろうと思ったがどうだろうか。あと、物品販売をくっつけると特定商取引法の規制がひっかかるので、ここではそういうのはやらない、ということにしてみた。「投資は自己判断で」というスタンスね。契約として考えるなら、リスク要因の開示と免責条項は必須だと思うんだが、占いにかかるお客さんたちは「寛容」なんだろうな。というか、もしこんなふうにリスク要因を開示されたら、占いを信じる人とかいるんだろうか。


ちなみに、占いに関してはこんなページもあるのでご参考まで。

全然関係ないが、「指定役務」の中には「結婚又は交際を希望する者への異性の紹介」というのもある。いわゆる結婚紹介サービスとか恋人紹介サービスみたいなのだな。「異性」に限るわけだ。「交際を希望する者への同性の紹介」は指定役務でないらしいので、クーリングオフはきかない、ということになるんだろうか。いや、どうでもいいんだけど。法律ってのは面白いね。

|

« 「児童心理」2008年2月号「オンラインゲーム利用における子どもの安全―リアルマネートレード(RMT)の問題から考える」 | Main | 2008年のネット業界はこうなるらしい話 »

Comments

The comments to this entry are closed.

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 占いの「契約」を考えてみるテスト:

« 「児童心理」2008年2月号「オンラインゲーム利用における子どもの安全―リアルマネートレード(RMT)の問題から考える」 | Main | 2008年のネット業界はこうなるらしい話 »