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February 23, 2008

"On the effects of stock spam e-mails"

Michael Hanke and Florian Hauser (2007). "On the effects of stock spam e-mails." Journal of Financial Markets Volume 11, Issue 1, February 2008, Pages 57-83.

JFMにEメールについての論文とは珍しい、と目に留まった。海外からのスパムメールというと、つい「ナイジェリア」関連を思い出すんだが、実際の件数でいえば、圧倒的に「例のあの薬」関連が多いだろうか。「Stock Alert」関連は、いっときさかんに来ていたが、最近はやや下火という印象。この論文はそういう株関連のスパムメールの株価収益率なんかへの影響を分析したもの。不勉強で、日本で同種の研究があるのかどうか知らないが(そもそも日本ではこういうスパムはほとんど見かけないし)、なかなか面白い。

要旨はこんな感じ。

Abstract
Over the past few years we have seen a rise in the number of unsolicited e-mails that recommend buying certain stocks. The senders of these mails claim to have private information indicating that strong increases in the prices of these stocks are imminent. We first describe the common characteristics of stocks being peddled by such e-mails. Next, we investigate the effects of stock spam e-mails on excess returns, turnover, and intra-day price range, and we find that spam e-mails have a significant impact on all of these variables. Unlike the information spread on discussion forums, the positive news contained in spam e-mails has no lasting positive effect on stock prices. We analyze whether spam effects depend on stock characteristics such as price level and average turnover, and we find that liquidity is a major factor in the success of spamming. Moreover, we show that repeated spamming on successive days sustains excess demand for target stocks, enlarging the time window for liquidation of the spammers’ positions.
Keywords: Stock spam; Market manipulation
JEL classification codes: G14; C23; G24

上のリンク先は全文読めるのでご興味のある方はぜひ。要するに、あの種のメールが実際に株価とかに影響してるのか、を分析したもの。どうなのよというと、まとめるとこう。

Stock prices react significantly and positively to spam e-mails, with a positive relationship between the intensity of spam mails (number of spam e-mails per day about the same stock) and the size of returns.

具体的には、こんな感じ。

Our results indicate that spam e-mails have marked effects on returns, turnover, and intra-day volatility. On the day before a spam e-mail is sent out, turnover and intra-day volatility are already higher than usual. On the spam day itself, we see significantly positive excess returns, high intra-day volatility and increased turnover. For several days after a spam event, excess returns are negative at high turnover, while intra-day volatility quickly returns to normal levels.

収益率、取引量、ボラティリティに正の影響。スパム送信の前日からすでに影響は出ていて、当日は強い正の影響。しかし数日後には収益率は負に転じて元通りと。要するに短期的な影響にとどまるわけね。で、このほか、なんどかスパム送信を繰り返すと効果が長続きするとか、月曜日に送られたスパムメールが一番効果が高い(当然、スパム送信も月曜が多い)とか、いろいろな結果が。

こういう「株価操作スパム」(日本だと「仕手筋」にあたるのかね)については、数年前からいろいろ情報を目にしていた。いくつか拾っておく。

株価操作のスパムメールに注意――Sophos」(2006年06月28日)
「Spamalot作戦」:株価操作スパムの終焉か?」(2007年3月12日)
株価操作スパム、1日で30%の激増 かつてない規模へ」(2007年08月09日)
株価操作スパム、今度はFDF形式を利用」(2007年8月13日)
MP3で企業宣伝――株価操作スパムの次なる手口」(2007年10月19日)
宣伝もビジュアル化 価格操作スパムが動画を採用」(2007年12月25日)

最近下火になったなという実感はたぶんそんなにはずれてないんだろう。「Spamalot作戦」というのは、SECが株価操作スパムの対象になった銘柄を取引停止にするというもので、短期売り抜けを狙うスパマーにはリスクの増大要因のはず。で、このところのニュースに出ているようにいろいろなファイル形式を使っているのは、スパムの送信を検知されないための「工夫」ということらしい。

とはいえ、学術研究の対象とするにはデータの問題がある。株価の動きとかはともかく、問題はスパムだ。この著者たちの場合、株価操作スパムのデータベースを作ってる「奇特」な御仁がいて、その人からデータ提供を受けたそうな。その人、大量の「trap accounts」を作って、そこに送られてくる株価操作スパムを自動的に集計し、銘柄と時点を記録するシステムを作っているらしい。「底引き網」で毎晩ぴちぴち大漁ってわけだ。なので、この研究結果の信頼性はそのデータベースの信頼性に依存してるわけだが、まあ事柄の性質上やむを得まい、ということか。

これは株式「市場」についてのものだが、当然こういう類の分析は他の「市場」、特にネット広告「市場」にも必要だろうし実際あるんだろうな。たとえば、SEO対策のROIとか、アフィリエイトにおけるふつうのブログとスパムブログのコンバージョンレートのちがいとか。そのあたりの話をご存知の方、ぜひご教示いただきたく。それとも、まねして自分でスパムブログのデータベースでも作ってみるかな。

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