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March 01, 2008

「朝生」でもちゃんと議論できるんだね

昨夜(というか今朝というか)のテレビ朝日系「朝まで生テレビ」は、「激論!ド~なる?!日本経済?!復活のカギは?!~」と題したものだった(うろ覚えだが、タイポ的には「?!」は本来「!?」であるべきなのではなかろうか?ま、どうでもいいけど)のだが、久々に罵詈雑言でない議論が展開されていて、なかなか面白かった。

以下、感想文。

こんなテーマ。

昨年春頃から顕在化してきたいわゆる「サブプライムローン問題」は更に深刻化し、世界の金融資本市場を深い混迷の渦に巻き込んでいます。
今年に入ってからも株価の低迷は続き世界同時株安の様相を呈しており、4月以降は更に悪化の傾向にあるとの悲観的な見方もなされています。
問題の発信源であるアメリカは、次期大統領選に沸き立つ一方で昨年9月以降累計2.25%の利下げを行い、16兆円の減税を表明するなど様々な手段を講じていますが、ブッシュ大統領は「景気の減速を示す深刻な兆候が出ている。」といわざるを得ない状況に至っています。
一方、日本政府は、来年度予算案可決を控えて具体的な対応策を打ち出すことなく、あたかも対岸の火事のような静観の構えを見せています。そんな中、欧米間の温度差はあるものの、日本だけがいわゆる『一人負け』状態にあり、これまで日本市場を支えてきた外国人投資家の「ジャパンパッシング」がこの景気後退に拍車をかけていると指摘されます。
また、原油の高騰などいくつかの要因が指摘される中でとりわけ政治の停滞による不況は国民生活を相次ぐ値上げ、年金問題、格差社会、ワーキングプアーといった形で圧迫しています。こうした着実に悪化してゆきつつある経済環境下にあって、不透明な景気の先行きに対する国民の不安と不安を解消する方策はあるのでしょうか。 「朝まで生テレビ」では、流動化する世界経済の現状を踏まえ、日本経済の現状と展望、その課題とは何か?そして解決策は何か?果たして日本はどうすれば景気回復の道を歩み、希望に満ちた社会を築けるのか?を徹底的に議論してみたいと思います。

まあ今っぽいテーマではある。というより、意見が割れそうなテーマ、だな。パネリストはこの面々。

司会: 田原 総一朗
進行: 渡辺 宜嗣(テレビ朝日アナウンサー)・長野智子
パネリスト: 片山 さつき(自民党・衆議院議員、党行政改革推進本部幹事)
中川 雅治(自民党・参議院議員、党環境部会長)
古川 元久(民主党・衆議院議員、党年金調査会長)
大塚 耕平(民主党・参議院議員、参党政審会長代理)
辻元 清美(社民党・衆議院議員、党女性・青年委員長)
荻原 博子(経済ジャーナリスト)
堀 紘一(ドリームインキュベータ会長)
本間 正明(近畿大学世界経済研究所、教授)
町田 徹(経済ジャーナリスト)
水野 和夫(三菱UFJ証券経済調査部チーフエコノミスト)
森永 卓郎(独協大学教授、経済アナリスト)
菊池 英博(日本金融財政研究所所長)…中継で参加

ふむふむ。この番組、出演者同士が口汚く罵りあうにとどまらず、司会者自身が半分キレてどなりちらすという印象が非常に強くて、今回もテーマがテーマだからそういう感じかなと思っていたのだが、意外や意外。もちろん深刻な意見の対立はあちこちにあった。たとえば「構造改革路線」についていえば、一方が「理論的にまちがい」と断じればもう一方は「ケインズの亡霊」と斬って捨てる。たとえば「日本の金融機関」については「担保主義で審査能力がない」という人もいれば「担保主義こそ優れた手法」という人もいて。たとえば「サブプライムローン問題」についても「もうしばらくは大変」から「もう山は越えた」まで、さまざまなテーマで正反対の主張が展開された。けっこうきつい表現もあったと思うのだが、最低限「他人の話は聞こう」という態度が守られたのはよかったと思う。

音声だけ聞きながらいろいろ思うところがあったのだが、ほとんど忘れちゃったし、書くと長くなるので少しだけ。構造改革路線についての議論で、「財政政策を出動すべき」という主張と「成長力を生み出す規制緩和が必要」という主張が出ていたのだが、思うに、「国民のエージェントとしての政治なり行政システムなりが『信用』できるのか」という視点を入れないとわかりにくいのではないか。つまり、構造改革路線は、市場主義そのもので効率化を促すというより、「信頼できないエージェントから資金と権限をひっぺがす」ことで効率化をはかろうという点に価値があったのではないかということだ。つきつめると同じことなんだが、市場に対する盲目的な信頼から出たものではなく、既存システムへの深刻な疑念から支持されたのではないかということ。成功したかどうかは別として。その視点は、構造改革路線の始まった後に生じた経済成長が「政策の成果」なのか「国民ががんばった結果」なのか(外的な要因はさておくとして)という議論につながる。おそらくこれは両方で、あのとき政府の果たした大きな役割は、「政府に期待するな」というメッセージを政策として発したことなんだと思う。もちろんその結果国民生活に生じたもろもろの影響については別途の議論があるはずで、ことはそんなに簡単じゃない。もっと他にやりようがあったろうと思うこともたくさんある。

いずれにせよ、意見が割れるのはこういうテーマではある程度しかたがないこと。この番組では、出演者たちがうそ臭いポジショントークではなく自らの信じるところを語るような部分が多かったような気がする。その点は好感が持てた。

あともう1つ気がついたのは、辻元清美氏が妙に柔らかい印象だったこと。なんか「ソーリ!ソーリ!」の印象が強くて、バリバリ社民路線の論陣を張るのではないかと思っていたら、これまた意外。本間正明氏に「そこんとこお聞きしたいんですよね」と意見を求めたりしてて。司会の田原総一朗氏もそんな雰囲気を感じとったのかどうか知らないが、ちょっと前に山崎拓氏や加藤紘一氏らが旗を振った超党派の議員グループに入って韓国を訪問した件(これかな?)について「何かあるの?」と聞いたりしてた。政界再編をにらんだ動きか、というわけだな。個人的には政局方向は基本的にあまり興味ないのだが、ともあれ国会質問のときなんかの「敵対的」っぽく見える態度が消えていたのは印象的。

あと最後に。いわゆるジャパン・パッシングの原因のひとつが「日本では英語が通じないこと」であるという点について、出演者の中でなんとなく合意するっぽい雰囲気があった。グローバルな競争をしている分野では、それにふさわしい人材を海外から導入する必要があるが、それがなかなかできない、それはなぜかというとというわけで、いろいろ他にもあるが、英語も原因のひとつだと。日本経済を背負って立ちたい方、ぜひ英語の勉強を。

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