他人の金を他人のために使う話
手短に。お金の使い方が最も無責任になるのは「他人の金を他人のために使うとき」だ、といったのはミルトン・フリードマンだった。「他人の金を他人のために使う」人の典型として挙げられたのが役人で、これはフリードマンが経済への政府の関与を批判する理由の1つとなっている。この人の経済政策に関する主張には反対の人も多いが、この点については反対しにくいのではないかと思う。少なくとも今は。
都民は直接の利害関係者なので、私にも発言する「権利」があると思う。
あの銀行の先行きを設立時から危ぶんでいた人は私を含めたくさんいたと思うが、過去をどうこういってもしかたがない。調査報告書なるものが公開されてて、一応ぱらぱらと見たが、何をいまさらという以外の感想はない。都議会では都知事の監督責任とかなんとかを追及してたみたいだが、それをやったところでお金が返ってくるわけでもない。当面の関心は、これから出そうとしているお金とその効果に集中すべきではないかと思う。
再建計画なるものも公開されている。ふうん。一般論的にはこういう泥縄的追加出資で成功するケースはあんまりないと思うが、よほど自信があるんだろう。「これまで蓄積した営業ノウハウや反省点を踏まえ、事業を重点化し、中小事業者支援を強力に推進」とある。ふうん。その割には、ディスクロージャー誌でみると貸出残高のうち中小企業向けは約半分程度しかないよねとか業種別貸出残高で最も高い「その他」(30.88%)や「金融・保険業」(18.34%)って何だろうとか思ったりするのだが、まあ中小企業支援に役立っているんだろう。で、平成23年度には単年度黒字化を達成する計画、となるわけだ。ふむふむ。事業規模を大幅に縮小しながら利益を大幅に増やそうというのはふつうは現実味がないといわれるんだが、なにしろ前経営者の乱脈経営が原因だそうだから、これで経営再建ができるらしい。いやめでたしめでたし。
しかし事業にはリスクを伴う。保証などないのは当然。本来、こういう資金ニーズに対して、「他人の金を他人のために使う」タイプの資金をもってこないのは、それが無責任になりがちだからだ。客観的にみれば、この銀行のケースもその経験則のひとつの例でしかない。ではどうするかというと、簡単。「自分のために自分の金を使う」タイプや「他人のために自分の金を使う」、それに「自分のために他人の金を使う」タイプの資金を導入することだ。
何しろ経営が回復する見込みなのだ。この状況で出してくるんだから、まさか民間から資金を引っ張れないほどのいいかげんな再建計画ではあるまい。「たったの」400億円だ。堂々と民間金融機関やらファンドやらに資金拠出を持ちかけたらいいではないか。東京都に頼ろうとなんかするから、経営が甘くなるのだ。民間で調達できるなら、わざわざ再び都民の血税を400億円「も」投入するまでもあるまい。なんなら、融資先に対してやるような審査を、自行に対してやってみるといいんじゃないかな。
それから、この銀行の実質的なトップである都知事や、この再建計画を支持した都幹部や都議会の方々も、ぜひこの「頼もしい」投資先に投資していただきたい。都知事は金持ちだから1億円や2億円ぐらいは楽勝だろう。他の方々も、退職金を担保に入れれば合計で10億円や20億円は出せるにちがいない。まさか、自分の金を出せるほどの自信が持てない計画で都民の金をむしり取ろうというのでははあるまいね。
※追記
この再建計画に賛同される都民の皆さん、その他国民の皆さんも、ぜひ出資に名乗りを上げていただきたい。もちろんリスクのあるものだから「保証」はしないだろうが、都知事はじめとする皆さんは相当「自信」をお持ちのようだし。なんなら、「救済基金」でも作ってそこにみんなで拠出したらどうかね。これなら都知事も心置きなく私財を提供できるのではないかな。私は丁重に辞退申し上げるが。
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