安心感のあるびっくり箱の話
これ、投資型年金保険「びっくり箱」のCM。この商品、どうもマニュライフ生命が三菱東京UFJ銀行向けに開発して、三菱東京UFJ銀行(いちいち銀行名書くのうざいね長くて。寿限無みたい)が募集代理店として売ってるものらしい(参考)。
気になったのは、このネーミングとCMのミスマッチ。このCMの中で、出演する船越英一郎さんのセリフは聞き取った限りでこう。
最近、貯蓄から投資といわれますが これかな?こっち!あれ?こっちかな? やっぱり安心感のある商品を選びたいですね。 おわっ! 私が見つけたのは、投資型年金保険。 その名も「びっくり箱」。 うれしい、びっくり。 詳しくは三菱東京UFJ銀行へ。
ええとさ。
商品名は「びっくり箱」なんだよね?「びっくり箱」ってのは、Wikipediaによると「箱の中に人形などを仕込み、開くとバネなどでの力で中身が外へ出てくる玩具」、「転じて想定しないものが飛び出してくる容器」とある。要するにびっくりさせるためのものだ。そういう名前がついた商品を売るのに、「やっぱり安心感のある商品を選びたいですね」って何だ?
「安心感」が欲しいなら「びっくり箱」なんか選ぶなよ!
ってことにならないのか?なんで「貯蓄から投資」が「安心感」の方向に行っちゃうわけ?船越さんも演じててさぞかし居心地が悪かったのではないかと推察。
逆にいっても同じ。マニュライフ的には、
商品名の「びっくり箱」は、だれにも親しみやすく、非常に多くの魅力が満載されていて、うれしい驚きをもたらしてくれる保険商品ということから命名した。
ということらしいのだが、投信ですら「安心」で売りたい銀行向けの商品に「びっくり箱」ってつけるセンスっていったい何よ?ということになる。もうどっちを責めていいんだかわかんない状況なんだが、とにかくミスマッチであることはなはだしいのだ。ま、すべて承知の上でやってるんだろうから外からぐじゃぐじゃ言ういわれはないんだけどね。別にこれ買ったわけでもないし。
ちなみに。ぱらぱら見てたら、なんだか、こちらには商品内容にびっくりされた方もいらっしゃるようで。それによると、販売時に契約初期費用(まあ販売手数料かね)5%を引かれて、保険料相当額が年間2.55%相当、信託報酬が約0.3%前後相当なんだそうだが、それらが高い、とある。
他の商品の状況を詳しく知らないんだが、信託報酬に限っていえば、別に高いってほどでもなさそうな気がするんだけどどうなんだろう?まあこの種の商品にはこういうコスト面の「なんじゃこれ」はつきものではある。とはいえ、保険商品なんだから保険料相当額が引かれるのはまあしかたない。販売手数料は、・・投信と考えると高いかもしれないけど(最近はゼロのものも多いしね)、保険としてはそうでもないような気もするな。
そのブログ記事には、
どういう人にこういう商品のニーズがあるのか、よくわからん、というか、まったくわかりません。
と書いてあるんだが、決まってるじゃないか。「安心感」が欲しい人だ。しかもこの安心感、おそらくは「ローリスク」と似た意味だろうと思う。でもリターンは高いほうがいい、と。もっとはっきりいえば、「この株下がりませんか?」とか聞きそうな人ってこと。世の中にはね、こういう人がけっこうたくさんいるんだよ、たぶん。合理性だけでは動かないってことなんだろうな。
下にあるアフィリエイトのリンクだが、一番右のやつ、こういうのはある意味まさに「安心感のあるびっくり箱」だな。小さいお子様にも安心、ってな方向で。
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Comments
とても魅力的な記事でした。
また遊びにきます。
ありがとうございます。
Posted by: あろえ | September 21, 2010 12:04 AM
あろえさん、コメントありがとうございます。
消費者のこうした「矛盾」のある態度は、ある意味で非合理性のあらわれでもありますが、同時にニーズの存在を示すものでもあります。だまさず、カモらず、おもねらずにここから収益を上げていく方法を考えていくことが必要なのかもしれませんね。
Posted by: 山口 浩 | September 21, 2010 07:40 AM