Ryann Connellの著書のレーティングがやけに高い件
最近ネットで話題騒然の毎日新聞英語サイト関連だが、まあ常識的に考えてこれはチェック漏れ以外の何者でもない。なんで誰もチェックしないのよとは思うが、少なくとも、もう記事は消えちゃったし、今毎日新聞を叩いたところで海外における日本人の評判がどうかなるわけじゃないし。
それより気になるのはこのページ。
アマゾンの米国サイト。一連の記事の著者であるらしいRyann Connellなる人物が著者に加わってる本だが、こっちはもちろんまだ堂々と売ってるし、続編も出てたりするわけで。名前もあまり知らないであろう日本の新聞社(実際知らないと思うんだよね。たとえばさ、アメリカで4番目に大きい新聞が何か知ってる人なんてほとんどいないでしょ?)のサイトに出てた情報より、こっちのほうがよほど影響力が大きいんじゃないかと思うんだがどうなのかね。ちなみに2冊ともKodansha International刊。
知ってる人は知ってるだろうが、「知られざる日本の内情」みたいな本はそれなりに人気があったりすることがけっこうある。日本が彼らにとって依然としてミステリアスであることの裏返しなんだろう。特にビジネスの場で出会う「まじめな日本人」しか知らない人たちは、「日本人も彼らと同種の人間である」ということを新鮮に感じるってことらしい。
で、この本もそうなのかどうかは知らないが、気になると書いたのは、平均で星4.5個と、なんだかやけに評価が高いなという点。レビューを見てみると、こうなってる。高く評価してる人の中でも真に受けてる人ばかりでないのは当然といえば当然だが、あんまりいい気分がしないのも事実。1人だけ評価の低い人がいて、3日前のレビューだからおそらく日本人か、日本人シンパの人なんだろうな。とりあえずそちらのほうで「helpful」だったよに1つ、ポチッとな、と。
ま、どの国についてもけなす本はあるわけで、その中には誰が信じるんだこんなもんといいたくなるようなでたらめもあるわけで。仮にある国で実際にあったケースだとしても、その国の人全員がそうだといわれればそれはちがうわけで。アメリカの政治家はみんな実習生とよろしくやるものだといわれたらアメリカ人は怒るだろうし、オーストラリア人はみんな児童虐待してるといわれたらオーストラリア人は怒るだろうし。とはいえ、仮にそういう情報が流れたとしても、全体からみればそう大きな影響力は持ちようもない。この本もそういう1つではあるわけで、あんまり目くじら立てるのもばからしいような気がするな。
「日本を侮辱する記事」と怒ってる人たちは、これらの記事の多くが日本の週刊誌からネタを拾ってることもお忘れなく。こういう週刊誌は総じて、「いまどきの母親は」とか「OLは」とか「女子大生は」みたいに一般論化して記事を書くことが多い。見比べたわけじゃないけど、これをそのまんま英語にしたらああいう記事になるんじゃないかな?この件で最も驚くべきは毎日新聞がああいうしょうもない記事をチェックせずに通しちゃったこと自体、ではあるんだが、それにしたって実際に週刊誌に掲載された情報ではあるわけで(日本在住ならガイジンさんだって週刊誌のクラス感ぐらいわかるだろうけどさ)、もし批判したいんならネタ元のほうも槍玉に挙げるべきじゃないの、と思ったりもする(自国の人ならともかく外国人に書かれるのはがまんならんというのはわからなくもないがね)。
というわけで、「週刊ポスト」2008年7月11日号のように「毎日新聞英語版で『変態日本人』大誤報をバラ撒いたコラムニストの正体」なんて記事をみると、ちょっとどうよと思っちゃうわけだ。だってさ、たとえばこの同じ号には、こんな記事も出てるんだよ?
「あなたの会社を瓦解させる「パラサイト・ミドル」への"特効薬"」 「うちの会社の40代社員がおかしい」―最近とみに、前後の世代からこんな嘆きや怒りの声が増えている。企業の中核を担うはずの世代が、会社の稼ぎにパラサイト(寄生)しているという。その実態を知り、早急に対策を施さないと・・・あなたの会社は瓦解するかもしれない。
「第2のアキバ殺人鬼を生み続ける『脳内汚染』11年目の発症爆発」 見逃せないのは、加藤容疑者も、"酒鬼薔薇"も、後述する西鉄バスジャック事件(00年)の犯人も、82年生まれだということだ。(中略) 列島は今、それまでの日本人が経験したことのない《脳内汚染》11年目の「発症爆発期」を迎えているのではないだろうか―。
「小5少女レイプの38歳教師『ロリコン性癖』と『猫撫で声』」 繰り返される教師のわいせつ犯罪。学校には女児を狙う獣がうろうろしているのか。
Ryann Connellなら、これらの記事から、日本の40代会社員は会社に寄生する能無しで、20代はゲームやケータイ、2ちゃんねるで脳内が汚染された殺人鬼予備軍、日本の教師はみんなロリコンの悪魔、なんて記事を簡単にひねり出すだろう。だって実際に日本語でそれっぽく書いてあるじゃん。日本語のできる外国人なんて今どき珍しくないんだからね。Ryann Connellみたいに週刊誌の記事を真に受けちゃうイタいガイジンが日本語で直接読んでそれを英語のブログに書くことだってあるかもよ?週刊誌の皆さんは、毎日新聞を叩くひまがあったら、自社の記事をもう百万回ぐらいチェックしたらどうかな。過去にさかのぼってさ。
関係ないが、件の「週刊ポスト」、50代は槍玉にあげてない。これで想定読者層がわかる、ってことなのかな。にしちゃ、あの連載マンガ、どうにも稚拙な印象が。あれは「大人」の鑑賞に耐えるのか?
くだらないとは思うんだが、どうしても溜飲を下げたい方向けにはこんなのもある。左側は18禁なのでご注意。
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Comments
"The American People - Naive or Plain Stupid?"
Nice. Now how about a book called, "The Japanese People - Naive or Plain Stupid?"
Oh, no, that would be considered insulting and racist, and the writer would come under the same censure as Ryann Connell, whose career is near ruined..
Kobayashi-san and other Japanese writers are free to write insulting, anti-foreign books, Yet if a foreigner writes or says anything not positive of Japan, they become targets of intense criticism, as Mr. Connell's case shows. Just another Japanese double standard.
Posted by: Koenji Gaijin | July 01, 2008 07:34 PM
Koenji Gaijin-san, thank you for comment.
Every people including Japanese, Americans, Australians and others possesses some degree of xenophobia and double standard.
If you do understand Japanese language a little, you will notice that these things are exactly what I intend to criticize in the above essay.
I am just writing that the things Ryann Connell wrote about Japan are exactly what Japanese writers write about Japan, and somewhat similar to what Japanese writers write about foreign peoples. I have not read Kobayashi's book, but I guess the content will be similar to what Michael Moore describes about the U.S.
Ryann Connell's articles and books are nothing more than yellow journalism based on Japanese yellow journalism that no Japanese believe to be true, and it seems to me a waste of time for so many Japanese people get mad about it.
Posted by: 山口 浩 | July 02, 2008 12:31 AM