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September 18, 2008

佐々木俊尚著「ブログ論壇の誕生」

佐々木俊尚著「ブログ論壇の誕生」文春文庫、2008年。

いただきもの。多謝。佐々木ファンの皆様には毎度おなじみの「月刊佐々木俊尚」、今月の新刊は「ブログ論壇の誕生」とな。ぶっとい帯に「新しく巨大な言論の波 マスコミを揺るがし政治を動かし旧弊な言説を一掃する」と大書きしてある。編集者の「ふんがっ」という荒い鼻息がいきいきと伝わってくるね。

今回取り上げているのは、ブログの言説が「世の中」を実際に動かし始めたという状況。「月刊」なだけに、毎日新聞問題、チベット問題、ウィキスキャナー事件、民主党小沢党首のニコニコ動画、共産党志位委員長の国会質問動画、秋葉原連続殺傷事件、光市「1.5人」発言問題、青少年ネット規制法問題等と「新鮮」なネタぞろい。4つの節に分かれていて、それぞれ「ブログ論壇」はマスコミを揺さぶる」「ブログ論壇は政治を動かす」「ブログ論壇は格差社会に苦悩する」「ブログ論壇はどこへ向かうのか」というタイトルでくくられている。

本書のキーワードはもちろんタイトルにもある「ブログ論壇」という概念。論壇がマスメディアの世界から急速にインターネットの世界に移行しはじめていると。担い手もちがっていて、かつて「知識人」たちが意見を戦わせた「公の場」としての論壇が消滅してしまったのに対し、ブログ論壇は匿名の人々が担っていると。曰く:

インターネットの世界には、いまや巨大な論壇が出現しようとしている。このブログ論壇の特徴は次のようなものだ。発言のほとんどはペンネームで行われ、したがってその社会的地位はほとんど問題にされない。そしてマスメディアがタブー視してきた社会問題に関しても積極的な言論活動が行われている。その発言が無視されることはあっても、発言内容を理由にネット空間から排除されることはない。その中心にはブログがあり、2ちゃんねるのような掲示板があり、ソーシャルブックマークがある。

2ちゃんねらーの皆さんもニコ厨の皆さんもブログ論壇の一翼を担う仲間、なのでご安心(?)いただきたい。佐々木さんは、この状況を、近代西欧のコーヒーハウスやカフェ、サロンといった場に似ていると指摘し、市民社会における新たな「公論の場」として位置づけている。で、最近起こったいろいろなできごとについて、その経過を追い、ブログ等の論調を伝えている。

少し前まで佐々木さんは、ネットの議論はほとんど現実に影響を及ぼしていないというご意見だったと記憶している。2005年の衆議院総選挙の際にみられた、ネット世論の盛り上がりがその後見られなくなったと。本書の出版は、それがまた変わってきたという認識なんだろう。その例として挙がっているのが、いわずと知れた毎日新聞の事件。いわゆる電凸の影響か、同紙のウェブサイトだけでなく、紙媒体の広告ビジネスにまで影響が出たわけだ。

でも、逆にいうと、本書の中で、明確に「ブログ論壇」(あのケースは「2ちゃん論壇」のほうが適切であるようにも思うが)が現実社会に直接影響を与えた事例は、毎日の件だけのようだ。そのほかいろいろ上がってる事例は、もちろんそれぞれ非常に興味深いが、ネットの中で起きたものがほとんどで、ふだんネットに触れていない人にはほとんど知る由もないことではなかろうか。

「ブログ論壇」が現実社会に影響を与えている最大の要因はおそらく、現実社会における情報の発信者、つまりマスメディアやそこで活躍する書き手たちが、「ブログ論壇」の影響を受けていたり、同時に「ブログ論壇」の情報発信者であったりすることだ。つまり「ブログ論壇」は、主にマスメディアを通じて社会に影響を与える存在になってきているということになる。となれば本書の帯の「ふんがっ」なことばはある意味「釣り」ってことになるかもしれない。まあ帯というのはえてしてそういうものだが。

その意味で、個人的にぜひ読んでみたいと思うのは、マスメディアの人々が、自分たちの情報発信の際、どのくらい「ブログ論壇」の影響を受けているかの分析だ。佐々木さんは

論考・分析の要素に限って言えば、いまやブログが新聞を凌駕してしまっている。新聞側が「しょせんブロガーなんて取材していないじゃないか。われわれの一次情報を再利用して持論を書いているだけだ」と批判するのは自由だが、新聞社の側がこの「持論」部分で劣化してしまっていることに気がつかないでいる。

と書いている。総じていえば「劣化」というほどひどいとは思わないが、自分の印象でも、「あ、この論調は前にどこかのブログで読んだぞ」というケースは珍しくない。記者の人たちが、ブログを読んで「あ、そういう見方があったか。いただきぃ」と取材して書く、なんていうことは実際けっこうあるんじゃないだろうか。そのあたりの細かいところを、実際に記事を書いた人たちにちゃんと取材していったら面白いんじゃないかと思うんだがなぁ。むずかしいかなぁ。

読みやすいので比較的短時間で読める。ネットの世界で何が起きているか知りたい方におすすめ。ただしネットの世界についてまったく知らない人にはややハイコンテクストかも。取り上げられた諸問題についてコンパクトに整理してあるので、資料としても役に立つ。「特別付録」として「佐々木俊尚が選んだ著名ブロガーリスト」なるものがついていて、これは「誰でも自由に参加」という「ブログ論壇」の拠って立つ価値観に照らしてどうなのかよく知らんが、まあ効率よく「ブログ論壇」に触れたいと思う人には有益なんだろう。べ、別に、このブログが入ってるからそう書いてるわけじゃないんだからねっ!

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