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September 06, 2008

雑誌目次をみる:「週刊東洋経済」

たまにやる「雑誌目次をみる」シリーズ。今回は「週刊東洋経済」。

有名雑誌だが、2008年9月6日増大号(2008年9月1日発売)にインタビューが載っているのでメモ代わりに。この号の特集は「あなたの常識をひっくり返す?「不確実性」の経済学入門」。この中に「テロは予測可能か」というくだりがあって、そこで予測市場が取り上げられている。先日インタビューを受けた際にお話しした内容をふまえた部分があって、名前も一応出てる。「内閣府も予測市場に関心を示しており」というくだりは、経済社会総合研究所の研究プロジェクトで私が参加しているもの。この件についてはまた別の機会に。

目次はこんな感じ。

COVER STORY
・「不確実性」の経済学入門

SUMMARY
・不確実性を増す世の中をどう読み解くか。
 20のテーマで学ぶ“反常識”の最新学説。

幸運・不運
Q01 | なぜあの人は大金持ちで、私は「その他大勢」なのか
Q02 | 主婦でもFXで大儲けできるのはなぜか
Q03 | 医者とロックスターはどちらが儲かる?
Q04 | 当選確率が50%と5%の宝くじはどっちを買うべき?

大惨事
Q05 | テロは予測可能か
Q06 | 地球温暖化対策はやりすぎか
Q07 | インフレはなぜ止まらない?
Q08 | 10万年に1回の金融大暴落がなぜ頻発するのか

起業・イノベーション
Q09 | 赤字ベンチャーに1.6兆円の評価が付く理由
Q10 | 日本でiPhoneが開発されないのは?
Q11 | 検索エンジンが日本にないのはなぜか

自然災害・健康
Q12 | 地震予知はなぜ当たらない?
Q13 | 医師不足はなぜ起きたのか
Q14 | 「200年住宅」はどうしたらできるか?

意思決定
Q15 | 人は勘定でなく感情で判断する
Q16 | 大学生はなぜベンチャーを作らないか
Q17 | 医者がガン告知しないのはなぜか
Q18 | 子どもが親の言うことを聞かないのはなぜか
Q18 | 政府の景気対策がうまくいかないのはなぜか
Q19 | 年金問題はなぜもめるのか
Q20 | 人はなぜ衰退産業にしがみつく?

図形クイズ
・5%の異常値が全体を決める!?
・偽物の株価チャートを見破れ!

・「不確実性」で読み解く経済思想
・「大きな政府」VS.「小さな政府」真の正体

・行動経済学の新たな可能性に着目せよ

■This week's data
・人は確率を正しく認識できない
・―人は低い確率は過大に、高い確率は過小に評価する―

コラム:経済を見る眼
・「財政出動」という亡霊現る/川本裕子 

ニュース最前線
(1)キヤノンに変調、デジタルカメラ国内商戦の熾烈
(2)食品値上げは好機? セブンが安売りに参入
(3)独り勝ち続くユニクロ、怒濤のパンツ600万本
(4)豪州乳製品市場を制覇、キリン巨額買収の狙い
(5)トラック業界が燃料高で決起大会
(6)「富裕層はいつの世でも旅行する」フォーシーズンズアジア太平洋地区総責任者/クリス・ハート
(7)ソフトバンクがアイフォーン値下げ
(8)セボンが倒産、“ラブホ”が重荷に

このひとに5つの質問
・宮原耕治/日本郵船社長
 「CO2排出ゼロを目指す太陽光発電は小さな一歩」

『会社四季報』【最新情報】
・東洋紡、アデランスホールディングス、新和内航海運、東急レクリエーション

マクロウォッチ【日本経済】
・問われる経済対策の中身とその効果

今週の気になる数字
・この先、生活は「悪くなっていく」と考える人の割合(2008年6月)

株式動向
・原油安・ドル高は両刃の剣、日本の位置づけ見直すとき

市場観測
・米国の金融・経済への不安、日本への再評価から円高方向

今週のキーワード

「ミスターWHO」の少数異見
・不可解なスワップ契約、アーバンに何が起きたのか?

Hot&Cool
・シャワーで洗えるスーツが好評、春夏の人気に続き秋冬向けも登場

読者の手紙、編集部から

スペシャルリポート
・北米市場を揺さぶるリース販売の爆弾
 中古車市場が急落。北米の販売不振に揺れる自動車業界で新たなリスクが浮き彫りに。
・不動産再編の黒衣、プロスペクトの素顔
 異色の外資系ファンドの動向が注目されている。


カンパニー&ビジネス
・世界的水不足で急浮上! 東洋紡の海水淡水化事業
 世界人口の3分の1が良質の水にアクセスできない現実。東洋紡の隠れた強みが世界トップ級の「膜」技術だ。

TOP INTERVIEW
・中村元彦/サークルKサンクス社長
 「捨てるものは捨て、コンビニの原点に戻る」

SPECIAL INTERVIEW
・押井 守/アニメーション・実写映画監督
 「経済全体が映画のようにバーチャル化しつつある」

告知板
・新製品&イベント

中国動態 China Watch
・引き締めへの反発が招く、五輪後の経済政策「逆流」

グローバル・アイ
・ハイテク時代に必要な国際的な金融規制とは/ケネス・ロゴフ

だから若者は幸せになれない 城 繁幸
・追い込まれた霞が関、改革は急務だ

知の技法 出世の作法 佐藤 優
・世論に影響を与えるテレビとどう付き合うか

The Compass
・アメリカがはまり込むグルジア紛争の危うさ/藤原帰一 

FOCUS政治
・米国政治の変化は日本にどう波及するか/星 浩

アウトルック
・「米国住宅公社」と世界経済、“魔法”がもたらした逆転のリカップリング 

Book&Trend
・『「歳出の無駄」の研究』を書いた、井堀利宏氏に聞く
 井堀利宏 東京大学大学院経済学研究科教授「埋蔵金で赤字国債を減らすのは、単なる会計上の移し替え」
・Review、新刊新書サミング・アップ、ブックス・オブ・アーツ、東洋経済の本、小社の新刊案内

アゴラ百景
・「ビジュアル系」の社交場が、世界レベルの観光名所

トレンドワード

ゴルフざんまい 小倉智昭

データウォッチ
・マーケット&マクロ主要指標 最新データ一覧

スティグリッツ夫人の世界を幸せにするレストラン
・エル・ブジ、世界最高の「不思議な」レストラン

長老の智慧 大塚 実
・「脱常識」で事業を拡大した大塚商会創業者
 PR (制作:広告局企画制作部)

ビジネスアスペクト
・保土谷化学工業/保土谷化学工業のパラダイムシフト

広告特集
・「自覚」からはじまる地域の活性化


自分の話はともかく。リスクに関する科目を後期から担当するので、その意味でも非常にタイムリーでありがたい企画。ただ全面的に賛成というわけでもない。たとえば「主婦でもFXで大儲けできるのはなぜか」という節があって、一応「たくさんの人が投資にチャレンジすれば、中には予測困難な大変動をうまく的中させる人も出てくるからだ」という標準的な説明も載っているのだが、一方で「専門家が使う理論には重要な落とし穴がある」「“ノーベル賞理論”では大勝負に勝てない」なんて見出しも躍ってる。おまけに最後の一文がとどめを。

「標準的な学説を教える講座が大学にできればできるほど、自分は大儲けできる。なぜなら、間違った考え方を身に付けたファンドマネージャーが増えるからだ」―。世界最強の投資家ウォーレン・バフェット氏の発言が、何をか言わんや、ではないか。

いくつかある。まず、「専門家」といっても、実際の取引の現場にいる人たちは、「標準的な理論」だけに基づいて取引をしているわけではない。むしろ「勘と経験」に頼る部分のほうが大きいのではないか。さらに、「標準的な理論」は主に均衡状態での価格付けについてのものであって、実際の取引の際のこまかな変動のパターンを予測することを目的としていない。つまりそもそも「“ノーベル賞理論”」は「大勝負」のためのものではないし、ごくまれに(想定されているよりもはるかに確率は高いが)起きる事象をすべて完璧にカバーすると主張されているわけでもない。買いかぶりすぎだ。

あと、このへんは不勉強なんでぜひ教えてもらいたいが、経済物理学というやつ。いいたいことはまあだいたいわかるし、別に否定はしないんだが、いまひとつ腑に落ちない。「標準的な理論」がいかにだめで物理学的なアプローチがいかにうまく経済現象を説明するかなんて威勢のいい話はよく聞くが、それを取り込んだ取引戦略って実際にはどんなものなんだ?現場で使ってるのか?みんなそれで儲けてるのか?何より、実績が検証可能なかたちで研究されているのか?そこらへんの話がとんと聞こえてこないのはなぜなんだろう?知ってる方、ぜひ教えていただきたい。マンデルブロの初期の研究から考えればもう50年以上たってるんじゃないか?とすれば「標準的な理論」より古いぐらいだ。もうそろそろいいかげんに「実際に儲けた」話や、「世界中の有力金融機関がこぞって採用」なんて話が出てきてもいいころじゃないか。「“ノーベル賞理論”」が「“ノーベル賞理論”」たりえたのは単に理論的に正しかったからというだけではない。実際に人々や企業の投資のあり方を変え、社会に大きな貢献をしたからだ。そして、実際の取引戦略に組み込み、実務家が運用できる程度のシンプルさ、柔軟性を備えていたことも重要だった。

バフェットについては、世界中にごまんといるはずのバフェット信奉者、「バフェット理論」の学習者の中から第2、第3のバフェットが続々と出てこないのはなぜだ?と問いたい。もちろん能力のある人だというのはわかるし、別に「ただラッキーだっただけ」と片付けるつもりはないが、「儲けた」ことが「正しい」ことの証明にはならないことも、儲けた人と全く同じようにやっても損する人がたくさんいることも事実。バフェット自身だって、もう一度人生をやり直したら、同じように有力投資家になれるかどうかはわからない。仮にバフェットが100人いたとしたら、その中には少数の「大儲けするバフェット」や「大損するバフェット」と、大多数の「たいして損も得もしないバフェット」がいるんじゃないかな。平均して一般投資家よりいいパフォーマンスかもしれないけど。

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